『漫画と小説の中間のメディア』論考
須々木です。
一つ前の記事で遊木が触れていたネタ関連。
僕も同じネタでつらつら書いておこうと思います。
ある種の思考ゲームみたいなノリの記事です。
* * *
お題: 『漫画と小説の中間のメディア』って、あるのでしょうか。
●前提
少し単純化するため、前提を2つだけ設定しておこうと思います。
前提①: 「中間のメディア」と「両方の特徴を持つメディア」は違う。
仮に「両方の特徴を持つメディア」が題意を満たすなら、なんでも詰め込めばOKになってしまう。
けれど、今回の論点とは何かズレる気がしたので、これをカットする方向でいきます。
前提②: ここで考える「漫画」は、一般的に紙媒体で流通しているストーリー漫画をベースとする。
一口に「漫画」と言っても、あまりに幅が広いので、多くの人が普通に触れる少年漫画、少女漫画などを含む、「紙媒体で流通しているストーリー漫画」に絞ろうと思います。
ただ、実際には「漫画」の範囲は物凄く広いし、その広さは「漫画」というジャンルを特徴づける大きな要素でもあるので、ここを勝手に単純化するのもいかがなものとは思いますが、しょうがない。
というか、ここを絞らないと、「中間のメディア」であっても「漫画」の範疇になってしまう気もします。
極端な話、ラノベより少ない絵であっても、コマわりしていれば「漫画」とも思えますし。
まさにその懐の深さが、「漫画」という媒体が廃れない理由だとも思えます。
極端な話、ラノベより少ない絵であっても、コマわりしていれば「漫画」とも思えますし。
まさにその懐の深さが、「漫画」という媒体が廃れない理由だとも思えます。
※「漫画」は、絵も文章も同時にシームレスに入ってくるのが特徴。そして、「ラノベ」と決定的に違う。「ラノベ」は基本的に、絵と文章はしっかり分けていて、同時に楽しむ構成にはなっていない。
●「中間のメディア」が満たすべき条件
さて、「中間のメディア」というものを考えていきたいわけですが、まず「漫画」「小説」両方が持っている特徴は、そのまま引き継ぐべきかと思います。
「漫画」「小説」両方にある特徴が「中間のメディア」で抜けているのは結構な違和感があります。
とすると・・・
・紙媒体で流通可能。
・中身はほぼモノクロ。
・聴覚的表現(BGM、SE)はない。
・動的演出はない。
・中身はほぼモノクロ。
・聴覚的表現(BGM、SE)はない。
・動的演出はない。
というあたりは、必須条件という気がしてきます。
このの条件により、一般的な「ノベルゲーム」は除外(「両方の特徴」は持つが、「中間」とは言い難い)。
ラノベは、上記の必須条件を満たし、「間」とは言えそうですが、極めて「小説」に寄っている印象があるので保留。
できれば、「間」よりさらに「中間」を攻めたい。
ところで、そもそも、「小説」とは何なのか。
厳密な定義はおいておくとして、感覚的には「文字主体のコンテンツ」という条件を満たしている必要がある思います(もちろん、これだけ満たせばOKではないが)。
そして、より詰めて考えれば、「文章と絵の割合」というより、「情報の主役をどちらが担っているのか」で区分けされる気がします。
ほとんど絵でも、残りのわずかな文章が「情報の主役」なら、それは「小説」の範疇。
絵本であっても、文字がメインでそれを絵が補うタイプなら、広い意味で「小説」という気はします。
絵本であっても、文字がメインでそれを絵が補うタイプなら、広い意味で「小説」という気はします。
一方、「漫画」において「情報の主役」は、「どちらかというと絵」という気がします。
ものによって違うと思いますが、「文字がなくても楽しめるか」「絵がなくても楽しめるか」であれば、後者の傾向の方が強いと思うので、漫画において「情報の主役」は絵だと考えます。
ただし、割合としては、
小説 ⇒ 文字:絵=10:0
漫画 ⇒ 文字:絵=2:8~4:6
くらいのイメージです。
極論、小説に絵はなくて成立します。
たとえラノベであっても、挿絵付きで投稿する新人賞は見たことがないので、結局は文章が明確に優位なコンテンツです。
対して漫画は、ある種の妥協がない限り、絵と文字情報が渾然一体となった状態で募集されます。
よって、その両者において文字と絵が、情報の担い手としてどの程度存在感があるのかと考えれば、上記のような割合になると考えました(もちろん具体的な数値は僕の感覚によるもの)。
これらを踏まえ、「中間のメディア」を考えると・・・
「中間のメディア」 ⇒ 文字:絵=6:4~7:3
つまり、「両方を含むけれど、やや文字情報に比重高め」というのが求められる条件のように思います。
※これはこれで「漫画」の特殊形と思わなくもないが。
●考えるヒントになりそうなもの
これ以上掘り下げて中間地点を厳密に求めだすと、亀を追いかけるアキレスみたいなことになりそうなので、そろそろ締めの方向に。
個人的に、思考のヒントになる気がしなくもないものを挙げておきます。
▽「テキストサイト」のフォントいじり
かつて一世を風靡した「テキストサイト」のフォントいじりは、ちょっと考えるヒントになるかもしれないと思いました。
つまり、ただの文字に追加情報を持たせるわけですが(漫画の中における効果音表現みたいに)、ただの平坦な文字とは明らかに異なる印象を与えます。
つまり、ただの文字に追加情報を持たせるわけですが(漫画の中における効果音表現みたいに)、ただの平坦な文字とは明らかに異なる印象を与えます。
その結果生まれる面白さ、インパクトこそが、これらのコンテンツの肝だったので、その意味で、単純に文字だけでなく、追加された視覚情報も、十分情報を担っていると思います。
顔文字、絵文字も含め、デジタルが普及し情報伝達の様式が変化していく中で、より砕けたシーンにおいて試行された手法のうちいくつかは、今回考えている「中間のメディア」へと繋がる足がかりのようにも思えます。
共通するのは、「少ない手数で直感的に理解させる」という点であり、これは非常に漫画的な発想でもあります。
つまり、「テキストサイト」のフォントいじりなどは、文字情報の塊でありながら、同時に漫画的発想を含む視覚効果を内包しているわけです。
これで、メディアとしての地位を確立するための一押しがあれば、良い線いけそうです。
▽学習漫画
形式的には漫画だけど、意外と文字情報が主役と言えそうなのが「学習漫画」。
「マンガ 日本の歴史」みたいなやつは、少なくとも制作している側は、文字情報がメインと考えている気がするけれど、同時に漫画でもあります。
「マンガ 日本の歴史」みたいなやつは、少なくとも制作している側は、文字情報がメインと考えている気がするけれど、同時に漫画でもあります。
文字情報成分は「中間」より低めだと思いますが、逆に言えば、もっと文字情報の存在感を増幅させれば、内容次第で「中間のメディア」に化ける気もします。
●とは言うものの
随分いろいろ書いてきましたが、原点に立ち返って忘れてはならないのが、「小説」「漫画」ともに、「読者にエンターテインメントを提供するコンテンツ」であるということです。
故に、「中間のメディア」も楽しめるものでなくてはいけない。
これだけ「中間」と言っておいてなんですが、良いとこどりした最高のコンテンツが生まれるならそれでOKです。
変化の激しいご時世なので、突然変異と自然淘汰を繰り返し、しかるべきコンテンツが世に出てくるでしょう。
「漫画」も「小説」もまだまだ絶滅する気配はないので、もしそこに「中間」というものがあるのであれば、遠くない将来、お目にかかれるのではないかと思います。
・・・などと、まったくオチのないエントリーになってしまいました。
ただ、いろいろ考えるための入り口として、なかなか面白いネタだったと思います。
sho