漫画と小説の中間について
どうも遊木です。
まだ生きています。
今回は、Mosaic Portのメンバー専用掲示板で『漫画と小説の中間のメディアとは』という議題(?)を出された方がいたので、この機会に、「漫画と小説の中間」について考えてみました。
以下、個人的な意見のまとめ。
まず、『漫画と小説の中間』という考えの第一印象について。
私が漫画を描く人間のせいか、この字面を見てまず初めに「漫画ってどういう漫画を指してるの?」という感想を持ちました。
個人的には「漫画」を一括りで考えるのはナンセンスな印象です。(漫画だけに限ったことではないと思いますが) 個人的に漫画の中には「小説寄り」「映画寄り」「舞台寄り」「紙芝居寄り」など、いくつものジャンルがあると思っています。
「~寄り」以外にも、例えばWEB漫画と紙漫画は、そもそも同一媒体とは思っていません。同じWEBor紙漫画でも四コマとそれ以外を同じだとは考えないし、フルカラー漫画と白黒漫画もしかり、です。
でも、現代ではぜ~んぶひっくるめて「漫画」と呼ばれています。(ちょっと解せない) もはや「絵と吹き出しがあれば全部漫画」という括りなのかもしれませんね…どうなんだろ。
なので、『漫画と小説の中間』という字面を見た時、「ここで指す漫画はどういう漫画のことなんだろう?」と考えました。
ところで、漫画は一見「絵」と「文字」がメインだと思われていますが、重要なのは「ネーム」という意見も多いです。
どういうキャラクターが、どういう世界でどう動くのか。どういうカメラアングルで、どういう効果音を入れるのか。台詞回しは?間の取り方は?背景はどのくらい描き込むか?コマの大きさは?吹き出しの形は?キャラの表情はあえて省略しよう。このコマは手の動きだけで感情を表現しよう……などなど。
ざっくり言って「演出」の部分ですね。
漫画家は「映画監督」と例えられたりしますが、私個人も漫画は「小説」や「イラスト」より「映画」に近いイメージを持っています。
しかしそう考えると、「小説」と「漫画」の中間とはなにを指すのか、ちょっとわからなくなります。単純に、状況に応じて文章シーンと漫画シーンを使い分けたものを言うのか。もしくはノベルゲームなどが当て嵌まるのか。そもそも「中間がある」という考えが見当違いなのか。
どちらも表現に「文字」を使っていますが、もっと根幹に大きな隔たりがある気がしないでもないです。
ところで私は制作時、媒体意識の前に表現したい「物語」や「コンセプト」が先にくるタイプなので、「このコンセプトは○○媒体で表現するのが一番しっくり来るな」という考え方をしています。
なので、実は漫画媒体に対する拘りをそこまで持っていません。(ただ表現したいものの多くが「漫画向け」という偏りはある) 音楽やアニメ、舞台など、表現の手段を他にも持っていたら、多分それらも使っていると思います。
しかし“媒体に対する拘り”を持っている人は数多く存在するので、(例えば天野喜孝は版画に強い拘りを持っている) 今回のように新しい表現媒体について考えるのは創作界においてひとつの楽しみだと感じました。
なので、ぜひそういうことの研究(?)をしている人には頑張って欲しいです。そして確立した暁にはその媒体を使わせてほしい…!←
次に小説についてですが、個人的に小説の一番大変なところは、文字にしないものは“ないもの”として扱われる点だと思います。
漫画や映画は「文字・言葉にするのは野暮だなぁ」という表現も、読者にその意図を伝えることが出来ますが、小説だと非常に難しい。
(ラノベの挿絵については、「文字・言葉にするのは野暮」の表現を補うものとは違う気がします。単純に「情報の補助」の印象)
逆に“正確に伝える”こと、そして“作業量に対する情報量の多さ”という点においては活字媒体は非常に優れていると思います。
仮に『漫画と小説の中間のメディア』を開拓するとなると、この辺りのニュアンスをどうやって処理するのかがひとつのネックになるのでしょうか。ある意味この二つは、長所が相反するものなわけですから。
漫画の話に戻りますが、漫画の一番の問題は「物語の進行スピード」ですよね。
例えば週刊連載の場合、一回に載せるページ数は大体20p弱ですが、私は個人的に休まず週刊連載できる漫画家は化け物クラスの人だと思ってます。特に女性作家の場合は、体力的に本当に大変そう。ちなみに荒川弘は化け物を超越してると思ってる。
「物語の進行スピード」について。当然内容にもよりますが、ひと月に50~60p描くとしたら、じゃあそのページ数でどのくらい物語が進むのか。
例えば「進撃の巨人」は約50pでようやく超大型巨人が壁を破壊します。
ようするに、漫画は殺人的な作業量に対して物語が進むのがとても遅い。
物語の進行スピードが関係ない日常系などは別として、ガンガン先を読ませたい物語にとっては漫画媒体は本来非合理なものです。日本人は「待つこと」が得意な気質なので、確かに漫画媒体と相性は良いと思いますが、昨今はネット普及の影響からか、明らかに昔より「待つこと」ができる人が減っている。そう考えると、新しい創作表現の開拓に漫画の手法を取り入れるのには、そこに何か理由が必要な気もしてきます。
つまり小説で表現できる情報量・物語スピードと、漫画のそれは天と地ほどの差があるということです。この問題をどう処理するのかも、『漫画と小説の中間のメディア』について考えるとき、大きなポイントになるでしょう。
ここまで『漫画と小説の中間』について考察した結果、私の場合は「祖母と私の中間を探しましょう=母」というよりは、「あなたと私の中間を探しましょう=定義が不明=よくわからん」というところに落ち着きました。(落ち着いていないとも言う)
前述の通り、そもそも『漫画と小説の中間』という考え方が見当違いなのか、それともノベルゲームなどが該当するのか、これは小説サイドの人の考察もぜひ聞きたいですね。
ただ仮に、『漫画と小説の中間のメディア』に該当するような新しい創作媒体が誕生したら、私はすごく相性が良さそうな気がします。
ではでは、作業に戻ります。
aki