【小説家になろう】ディスタンス【全8話完結】
須々木です。
先日、「小説家になろう」で連載していた小説「ディスタンス」が完結しました。
ということで、制作の経緯や内容について思いつくままに書き残しておこうと思います。
まだ読んでない人は先に読んでもらえると嬉しいナー
http://ncode.syosetu.com/n8663cv/
全8話。1時間~1時間半程度で読めるはず。
まず、事の経緯ですが、これは以前ブログに書いたので、そちらを読んでもらえれば分かるはずです。
▼ 頑張ったんだよ。 (2015-03-25)
・・・という経緯で、「BL」という課題を賜ってしまったわけです。
クーリングオフすれば良かったね。。
結局、お題が出て10日後に提出しました。
このとき、作品は必ず公開するという条件があったのですが、この時点で、「小説家になろう」のアカウントをつくっていなかったので、その後、アカウントをつくり、他の作品を並べて濃度を薄めてから「ディスタンス」を更新していきました。
作品自体は、最初の提出時から変わったのは以下の2点です。
・話数を分割し、小見出しをつけた(もともと執筆時には小見出しついてたんですけどね)。
・1話だけ追加(第7話。短い)。
つまり、ほぼそのまんまですね。
ガッツリ改稿というのもちょっと考えたんですけれど、結局あまり手を加えないことにしました。
展開が急過ぎるという根本的問題点解決のためには、もっと丁寧にある程度の期間を描く必要があると思いますが、その手間をかけるテンションではなかったので。。
以下、執筆時の設定やプロットなどを掘り起し、内容について触れていきたいと思います。
※思いっきりネタバレ含みます。
□作品制作の意図(執筆の狙い)
・BLを好まない人間にとって、BLがある種の苦痛を与えるものとなる場合がある。それを無理に勧めることが暴力に等しい行為であるというニュアンスを込めたい。つまり、モノには適切な距離感というものがある。その距離を間違えれば、すべての歯車は狂って行く。
・自分の好まないジャンルに対し、いかに対処し、最低限のクオリティーを込めるかという実験的な意義を追求する。その意味で、ちゃんとBLと分類される作品になっていることも重要である。
・・・Wordを開いて、最初にこれを書きました。
まんまコピペです。
よって、タイトルが「ディスタンス」となりました。
なお、「ちゃんとBLと分類される作品になっている」については、かなり微妙ですね。
BLを嗜むうちのサークルの面々は、この点に関しては微妙な反応をしていました。
おおむね良い反応を貰えたものの、「これBLかな?」という意見は多かったです。
□執筆基本方針
・ストーリーは、9月から11月にかけて(一応、2014年)の話とする。舞台は、関東、もしくはその周辺エリアで、農業従事者の多い田舎。
・高校の新聞部のメンバーが主要登場人物。その他のキャラはあまり描かない。
・基本的に、笹賀谷と嵩間にフォーカスして進める(笹賀谷メイン)。
・基本的に神の視点で描写する(地の文で一人称は使用しない)が、フォーカスしているキャラの内面描写はあり。
・序盤で、可能な限りどの人物も魅力的に描く。そして、徐々にその中の醜いところ(人間的なところ)を浮かび上がらせていく。
・終盤までは、ぶつかりあいながらも最終的にはわかりあえる可能性(ハッピーエンド)を漂わせる。
・バッドエンドになったのは、それぞれのキャラクターが悪いのではなく、距離感が適切でなかったことによる。よって、各キャラクターに過度な悪印象を与えないように注意する。
・・・これは、プロットを考えながら固まっていきました。
神の視点にしたのは、BL風味の作品に登場するキャラの内面を描き出すのは、僕の手に余ると思ったので、そこを避けたという現実的理由が大きいです。
あとは、各キャラクターの真意が、その言動以外から一切推測できないようにしたかったというのもあります。
「想像する余地」というのは、この手の作品に必要な要素かとも思ったので。
あと、本編を書くときに一番注意したのが、一番最後に書いてあるやつです。
とにかく、決定的な悪役をつくらないよう、描写のバランスにかなり気を使いました。
最終的に、「どうしてこうなっちゃったんだ・・・」と思って欲しかったので。
「誰が悪いわけでもない、距離の取り方の問題なんだ」というメッセージを忍ばせたかったわけです。
悪役をつくると、凄くシンプルに理解できてエンターテインメント性はアップするかもしれませんが、現実にそんな分かりやすい悪役と出会う機会はそうそうないので、リアリティーという点では薄れていくのが一般の感覚じゃないかと思いますが、本作では、リアリティーを重視しました。
□キャラ設定
登場する五人について、それぞれある程度設定を固めた状態から書き始めました。
全部掲載すると多いので、各キャラを描写するときに注意すべき点を書き留めた部分を抜粋します。
○ 笹賀谷浩 (ささがやこう)/男。高校2年1組。
笹賀谷は、最終的に「生きるべきか死すべきか」という選択を提示され、死を選ぶことになる。完全な自殺ではないが、広い意味では緩やかな自殺とも言える。この場面が作品のクライマックスであり、象徴的シーンである。よって、この状況に説得力を持たせるため、作品全体を通して丁寧に心情の変遷を描いていく必要がある。
○ 嵩間広海 (かさまひろみ) /男。高校2年2組。
一つ一つを見れば、嵩間は何も責められるような言動はしていない。しかし、結果的に笹賀谷の死を誘引することになる。これは嵩間にとってこれ以上ないほどにショッキングな出来事であり、この感覚(なぜ笹賀谷が死んだのか理解できず呆然とする気持ち)を読者にも共有させることが作品の質に直接的に影響する。
○ 葵史人 (あおいふみと) /男。高校2年1組。
「何に対しても寛容な態度」と「何に対しても寛容であることを求める態度」というものは決定的に違う。「傷つかないこと」と「傷つかないことを求めること」も決定的に違う。そういった、ちょっとしたボタンの掛け違いを象徴するのが葵である。この違いを違和感として浮かび上がらせることができたら、それで良しとなる。
○ 田万川友里 (たまがわゆり) /女。高校2年2組。
ある意味で、“イマドキ”の感覚を持った女子である。理解があると言って、実際そんな感じに振る舞っている。しかし、それはどこか歪で、本当に大事な場面では地金を晒すこととなる。応援するとはなんなのか。理解するとはなんなのか。そして、あなたには、そんな歪な彼女を責める資格はあるのか。
○ 那須原朋美 (なすはらともみ) /女。高校1年3組。
他の4人よりも出番は少ないが、那須原がいる状況は、事態が好転する兆しを見せていく。彼女のバランス感覚は、このメンバーを現実的に可能なレベルの幸福に導く可能性があった(それが個々にとって究極的な理想であるわけではない。しかし、誰かに犠牲を強いる必要はなかった)。つまり、彼女は、悲劇的展開の中にも、実はそれを回避する鍵が存在していたことを象徴している。
・・・以上、ほとんど殴り書きのように勢いで書いたものですが、一応このようなことを意識していました。
名前の読みにくさは、もう少しどうにかした方が良かったですね。。
「あかさたな」で適当につけて(本当は葵が主人公の名前だった)、そのあと変えるのが面倒になったという流れですが。
本当は、各キャラクターの家庭の様子を描けると、ラストの流れに説得力が増したと思いますが、家庭環境を描くと、全体のバランス的に、彼ら彼女らの過去の流れも触れないわけにはいかず、どう考えても文章量が倍以上になってしまうので、断念してしまいました。
ごっそりとカット。
個人的に、葵と那須原が動かしやすかったです。
笹賀谷が一番厄介。
表面的に分かりにくい思考回路なので、神の視点からそれを描くのが難しすぎでした。
本作は、ラストまでの流れを考えてから書き始めたので、那須原の登場場面を書いているとき、気分的に何とも言えない気持ちでした。
作中で唯一の悲劇回避ルートのカギとして描いていたので。
□各話について
01 ツリフネホーム
・とりあえず主要キャラ5人を登場させ、読者に個別認識させる。
・少なくとも主要キャラについては、基本的な行動パターンを明確にする。
・吊舟駅について自然な形でしっかりと情報を与える。特に、構造的な部分は描写しておきたい(当然、クライマックスのための準備)。
・高校や新聞部に関する情報は、必要以上に詰め込まなくて良い。
・とりあえず甘酸っぱい青春模様(ただしBLを含む)を演出。
・・・ラストから逆算しているので、吊舟駅のホームで始まっています。
ちなみに、「ツリフネ」は、「ツリフネソウ」から拝借。
花言葉は、「安楽」、「慕う心」、「詩的な愛」、「私に触れないで」など。
吊舟駅ホームの「花壇に咲く紫の花たち」は、一応、ツリフネソウのつもりです。
もちろん、同時に、五人のキャラたちの隠喩でもありますが。
花壇に程よく距離をあけて植わっていれば、悲劇は起きないんでしょうね。
ところで、駅のホームというのは、シナリオ組むのに物凄く便利なので、油断すると多用してしまいます。
02 シオミハイスクール
〈前半〉
・笹賀谷、葵のいる2年1組の様子、嵩間、田万川のいる2年2組の様子を描く。
・それぞれのクラス内のポジションを描く。そして、微妙な距離感を描く。
・笹賀谷が新聞部の発行する11月号について思いを巡らせたり準備している様子は描いておきたい。
・2組の方では、嵩間が視点者となる。嵩間について丁寧な描写を。
・次の新聞部の場面へのつなぎでもあるので、ある程度あっさりと行きたい。
※新聞部の楽しい雰囲気、一体感を引きたてるための前置きでもある。よって、どこかアウェイな雰囲気を表現したい。
〈後半〉
・那須原が登場する。
・5人全員揃っている状況を描写。5人の関係性を描写。
※この時点では、充実の高校生活を印象付けたい。楽しさや一体感、安心感など。必要以上に深層心理に切り込んでいく必要はない。非常にポジティブな印象を与える場面にしたい。
・新聞部についての情報を与える。新聞部の経緯や11月発行の校内新聞についても触れる。
・可能な範囲で、汐巳高校についての情報も入れておく。環境や校風など。
・・・五人全員登場して、新聞部も登場。
これはもう、単に必要な情報を並べた感じですね。
03 ジュードークラス
・1組、2組男子合同の体育の授業。
・笹賀谷、嵩間、葵が一堂に会する。
・明日からテスト一週間前期間。そろそろ中間テストのことを考え始める時期。
・中間テスト期間を挟む前のちょっとした挿話として。また、男3人だけの話が他にないので。
※距離感さえ適切であれば、普通に互いに楽しくやっていけることを暗に示している。
・普通にただ楽しい学生生活を描く。そして、ここで普通をしっかり描くことでクライマックスを引きたてたい。
※ただし、ストーリーとして特段重要なイベントでもないので、短めに行きたい。
・・・まんまです。
特に伏線を張ったりする必要もなかったので、完全に思い付きで書いていきました。
平和っていいですね。
もう次からは終盤に向けての流れに突入してしまうので、貴重な息抜きでした。
04 サンセット・サイクリング
05 ブレイクアウト
・中間テスト明け。文化祭の2週間前の週末。
・新聞部は、校内新聞発行のためという名目で、学校での合宿を敢行する。
・嵩間の過去について触れる。
・泊まり込みの序盤はなかなか楽しい雰囲気だった。しかし、最終的に、新聞部が険悪な雰囲気になる。笹賀谷は半ば意地となって、仕事を抱え込むことになる。
・・・当然、ラストに向けての伏線という要素もありますが、笹賀谷と嵩間だけの印象的な場面を描いておきたかったというのもあります。
気付いたらサイクリングしてました。
第4話で笹賀谷より前に田万川が部室に到着していますが、彼女がその前に云々という話は、面倒なのでカットしてしまいました。
あと、想定外に学生寮の奥さんが存在感を発揮してしまった。
第5話は、「あーあ」って思いながら書いていました。
那須原は良い子。
06 コンフェッション
・文化祭前々日の話を中心に。10月31日に印刷をかけて、文化祭の2日間を中心に配布。
・いろいろあった末の新聞部の和解。11月号の原稿が完成する(あとは印刷をかけるだけ)。
※実は、那須原が奮闘していた。
※作品として、ここでハッピーエンドを迎えそうな感じにする。
・合宿のときに撮られていた写真が発端となる同性愛疑惑から、新聞部の人間関係が急激に崩壊していく。
※もはやもとに戻る可能性など考えられないくらいの決定的な崩壊。
・・・執筆基本方針の「終盤までは、ぶつかりあいながらも最終的にはわかりあえる可能性(ハッピーエンド)を漂わせる」に該当する部分です。
一回突き落とすだけでは刺激が足りないので、良い方向に行きそうな雰囲気になってきたところでダメ押し。
基本的に、会話の流れは思い付きなので、ここも事前に具体的な内容は決めてなかったんですが、かなりロクでもない展開になりました。
07 ウォーキング
・現実的な描写が多少あっても構わないが、基本的には非現実描写であり、笹賀谷の主観的情景を客観的に描写する。
※他人の夢を覗くようなものであり、独特の異様さを表現したい。あまり激しい展開、派手な展開、際立ったドラマ性は必要ない。淡々と異様さを描き出したい。むしろ、嵐の前の不気味な静けさが求められる。
※現実には、睡眠中に見る夢より、白昼夢に近い。つまり、日常生活を侵食するだけの深刻な事態が現在進行形で発生しているということになる。
※笹賀谷によるモノローグはやむを得ない場合を除き避ける。読者による想像の余地を残し、解釈を固定しないように注意。あくまで「笹賀谷の思考を想像するためのヒントを与える」というスタンス。
※妙にリアルに描写されるが、心情描写のない世界。それは、この作品全体の雰囲気と似ている。
・笹賀谷の蓄積しているダメージが、外から見える以上に深刻なものであることを暗に示し、ラストの場面に自然とつながるようにする。
・笹賀谷の過去の情景、笹賀谷の家族の描写なども混ぜ込みたい。
※事実の描写ではないので、作中世界における事実と齟齬があっても構わない。むしろ、明確な誤謬を描くことによって、これが現実描写でないことを示すのもあり。
・・・サークル内で発表したのち、加筆された部分。
本編で結局触れなかった、笹賀谷の「家族」に対する彼独特のイメージを少しだけ含めています。
人間の価値観に決定的な影響を与えるのは、やはり「家族」であり、自分自身を見つめ直すような状況に置かれれば、それは自然と引き出されてくるもの。
とか言っても、メインはあくまで五人のストーリーなので、物凄くぼかした描写にしました。
08 ツリフネフォール
・・・これは、終わらせるだけだったので、なんと言っていいのやら。
個人的には、那須原が電車に乗った時点で、死亡フラグ確定というイメージでした。
ラストの状況だけは確定していたので、あとは淡々と書くだけ。
シナリオ的にその必要性があったのかと言えば微妙かもしれませんが、「作品制作の意図」により、こうなってもらう必要がありました。
これで「どうしてこうなってしまったんだ?」と思い、「でも、悪いやつは誰もいなかった」となり、「じゃあ、誰がどうすれば良かったんだ?」と考えてくれたら、そこまでが執筆者として想定していたことなので、ひとまず執筆を始めた時点で設定したノルマの達成となります。
カギは「距離」です。
重要です。
以上!!
長々とお付き合いありがとうございました。
今回みたいなやつは、今後書く機会もそうそうないと思うので、いろいろ貴重でした。
サークルメンバーの反応もなかなか興味深かったです。
今回は、感覚的に書いていける気がしなかったので、最終的な分量のわりに、しっかりキャラを固めてから書き始めましたが、作品(執筆方針)によってやり方は全然違います。
こうやって、ブログなどで振り返ってみると、自分でも気付くことがあったりするので、これまた面白いものですね。
「小説家になろう」では、今後も不定期に作品を更新していくので、気が向いたらのぞいてみてください~。
あと、もっとガチで語り合ったりしたいなら、「Random Walkのメンバーになる」という秘策もあります。
興味ありましたらご一報を!
▼他の小説作品に関連したブログもあります。宜しければどうぞ!
【小説家になろう】夢想喫茶にて -さめたコーヒーを寂しいと思う感覚- 【完結】 (2015-09-06)
【小説家になろう】秋焦ガレル旅人【短編読み切り】 (2015-10-23)
sho
先日、「小説家になろう」で連載していた小説「ディスタンス」が完結しました。
ということで、制作の経緯や内容について思いつくままに書き残しておこうと思います。
まだ読んでない人は先に読んでもらえると嬉しいナー
http://ncode.syosetu.com/n8663cv/
全8話。1時間~1時間半程度で読めるはず。
まず、事の経緯ですが、これは以前ブログに書いたので、そちらを読んでもらえれば分かるはずです。
▼ 頑張ったんだよ。 (2015-03-25)
・・・という経緯で、「BL」という課題を賜ってしまったわけです。
クーリングオフすれば良かったね。。
結局、お題が出て10日後に提出しました。
このとき、作品は必ず公開するという条件があったのですが、この時点で、「小説家になろう」のアカウントをつくっていなかったので、その後、アカウントをつくり、他の作品を並べて濃度を薄めてから「ディスタンス」を更新していきました。
作品自体は、最初の提出時から変わったのは以下の2点です。
・話数を分割し、小見出しをつけた(もともと執筆時には小見出しついてたんですけどね)。
・1話だけ追加(第7話。短い)。
つまり、ほぼそのまんまですね。
ガッツリ改稿というのもちょっと考えたんですけれど、結局あまり手を加えないことにしました。
展開が急過ぎるという根本的問題点解決のためには、もっと丁寧にある程度の期間を描く必要があると思いますが、その手間をかけるテンションではなかったので。。
以下、執筆時の設定やプロットなどを掘り起し、内容について触れていきたいと思います。
※思いっきりネタバレ含みます。
□作品制作の意図(執筆の狙い)
・BLを好まない人間にとって、BLがある種の苦痛を与えるものとなる場合がある。それを無理に勧めることが暴力に等しい行為であるというニュアンスを込めたい。つまり、モノには適切な距離感というものがある。その距離を間違えれば、すべての歯車は狂って行く。
・自分の好まないジャンルに対し、いかに対処し、最低限のクオリティーを込めるかという実験的な意義を追求する。その意味で、ちゃんとBLと分類される作品になっていることも重要である。
・・・Wordを開いて、最初にこれを書きました。
まんまコピペです。
よって、タイトルが「ディスタンス」となりました。
なお、「ちゃんとBLと分類される作品になっている」については、かなり微妙ですね。
BLを嗜むうちのサークルの面々は、この点に関しては微妙な反応をしていました。
おおむね良い反応を貰えたものの、「これBLかな?」という意見は多かったです。
□執筆基本方針
・ストーリーは、9月から11月にかけて(一応、2014年)の話とする。舞台は、関東、もしくはその周辺エリアで、農業従事者の多い田舎。
・高校の新聞部のメンバーが主要登場人物。その他のキャラはあまり描かない。
・基本的に、笹賀谷と嵩間にフォーカスして進める(笹賀谷メイン)。
・基本的に神の視点で描写する(地の文で一人称は使用しない)が、フォーカスしているキャラの内面描写はあり。
・序盤で、可能な限りどの人物も魅力的に描く。そして、徐々にその中の醜いところ(人間的なところ)を浮かび上がらせていく。
・終盤までは、ぶつかりあいながらも最終的にはわかりあえる可能性(ハッピーエンド)を漂わせる。
・バッドエンドになったのは、それぞれのキャラクターが悪いのではなく、距離感が適切でなかったことによる。よって、各キャラクターに過度な悪印象を与えないように注意する。
・・・これは、プロットを考えながら固まっていきました。
神の視点にしたのは、BL風味の作品に登場するキャラの内面を描き出すのは、僕の手に余ると思ったので、そこを避けたという現実的理由が大きいです。
あとは、各キャラクターの真意が、その言動以外から一切推測できないようにしたかったというのもあります。
「想像する余地」というのは、この手の作品に必要な要素かとも思ったので。
あと、本編を書くときに一番注意したのが、一番最後に書いてあるやつです。
とにかく、決定的な悪役をつくらないよう、描写のバランスにかなり気を使いました。
最終的に、「どうしてこうなっちゃったんだ・・・」と思って欲しかったので。
「誰が悪いわけでもない、距離の取り方の問題なんだ」というメッセージを忍ばせたかったわけです。
悪役をつくると、凄くシンプルに理解できてエンターテインメント性はアップするかもしれませんが、現実にそんな分かりやすい悪役と出会う機会はそうそうないので、リアリティーという点では薄れていくのが一般の感覚じゃないかと思いますが、本作では、リアリティーを重視しました。
□キャラ設定
登場する五人について、それぞれある程度設定を固めた状態から書き始めました。
全部掲載すると多いので、各キャラを描写するときに注意すべき点を書き留めた部分を抜粋します。
○ 笹賀谷浩 (ささがやこう)/男。高校2年1組。
笹賀谷は、最終的に「生きるべきか死すべきか」という選択を提示され、死を選ぶことになる。完全な自殺ではないが、広い意味では緩やかな自殺とも言える。この場面が作品のクライマックスであり、象徴的シーンである。よって、この状況に説得力を持たせるため、作品全体を通して丁寧に心情の変遷を描いていく必要がある。
○ 嵩間広海 (かさまひろみ) /男。高校2年2組。
一つ一つを見れば、嵩間は何も責められるような言動はしていない。しかし、結果的に笹賀谷の死を誘引することになる。これは嵩間にとってこれ以上ないほどにショッキングな出来事であり、この感覚(なぜ笹賀谷が死んだのか理解できず呆然とする気持ち)を読者にも共有させることが作品の質に直接的に影響する。
○ 葵史人 (あおいふみと) /男。高校2年1組。
「何に対しても寛容な態度」と「何に対しても寛容であることを求める態度」というものは決定的に違う。「傷つかないこと」と「傷つかないことを求めること」も決定的に違う。そういった、ちょっとしたボタンの掛け違いを象徴するのが葵である。この違いを違和感として浮かび上がらせることができたら、それで良しとなる。
○ 田万川友里 (たまがわゆり) /女。高校2年2組。
ある意味で、“イマドキ”の感覚を持った女子である。理解があると言って、実際そんな感じに振る舞っている。しかし、それはどこか歪で、本当に大事な場面では地金を晒すこととなる。応援するとはなんなのか。理解するとはなんなのか。そして、あなたには、そんな歪な彼女を責める資格はあるのか。
○ 那須原朋美 (なすはらともみ) /女。高校1年3組。
他の4人よりも出番は少ないが、那須原がいる状況は、事態が好転する兆しを見せていく。彼女のバランス感覚は、このメンバーを現実的に可能なレベルの幸福に導く可能性があった(それが個々にとって究極的な理想であるわけではない。しかし、誰かに犠牲を強いる必要はなかった)。つまり、彼女は、悲劇的展開の中にも、実はそれを回避する鍵が存在していたことを象徴している。
・・・以上、ほとんど殴り書きのように勢いで書いたものですが、一応このようなことを意識していました。
名前の読みにくさは、もう少しどうにかした方が良かったですね。。
「あかさたな」で適当につけて(本当は葵が主人公の名前だった)、そのあと変えるのが面倒になったという流れですが。
本当は、各キャラクターの家庭の様子を描けると、ラストの流れに説得力が増したと思いますが、家庭環境を描くと、全体のバランス的に、彼ら彼女らの過去の流れも触れないわけにはいかず、どう考えても文章量が倍以上になってしまうので、断念してしまいました。
ごっそりとカット。
個人的に、葵と那須原が動かしやすかったです。
笹賀谷が一番厄介。
表面的に分かりにくい思考回路なので、神の視点からそれを描くのが難しすぎでした。
本作は、ラストまでの流れを考えてから書き始めたので、那須原の登場場面を書いているとき、気分的に何とも言えない気持ちでした。
作中で唯一の悲劇回避ルートのカギとして描いていたので。
□各話について
01 ツリフネホーム
・とりあえず主要キャラ5人を登場させ、読者に個別認識させる。
・少なくとも主要キャラについては、基本的な行動パターンを明確にする。
・吊舟駅について自然な形でしっかりと情報を与える。特に、構造的な部分は描写しておきたい(当然、クライマックスのための準備)。
・高校や新聞部に関する情報は、必要以上に詰め込まなくて良い。
・とりあえず甘酸っぱい青春模様(ただしBLを含む)を演出。
・・・ラストから逆算しているので、吊舟駅のホームで始まっています。
ちなみに、「ツリフネ」は、「ツリフネソウ」から拝借。
花言葉は、「安楽」、「慕う心」、「詩的な愛」、「私に触れないで」など。
吊舟駅ホームの「花壇に咲く紫の花たち」は、一応、ツリフネソウのつもりです。
もちろん、同時に、五人のキャラたちの隠喩でもありますが。
花壇に程よく距離をあけて植わっていれば、悲劇は起きないんでしょうね。
ところで、駅のホームというのは、シナリオ組むのに物凄く便利なので、油断すると多用してしまいます。
02 シオミハイスクール
〈前半〉
・笹賀谷、葵のいる2年1組の様子、嵩間、田万川のいる2年2組の様子を描く。
・それぞれのクラス内のポジションを描く。そして、微妙な距離感を描く。
・笹賀谷が新聞部の発行する11月号について思いを巡らせたり準備している様子は描いておきたい。
・2組の方では、嵩間が視点者となる。嵩間について丁寧な描写を。
・次の新聞部の場面へのつなぎでもあるので、ある程度あっさりと行きたい。
※新聞部の楽しい雰囲気、一体感を引きたてるための前置きでもある。よって、どこかアウェイな雰囲気を表現したい。
〈後半〉
・那須原が登場する。
・5人全員揃っている状況を描写。5人の関係性を描写。
※この時点では、充実の高校生活を印象付けたい。楽しさや一体感、安心感など。必要以上に深層心理に切り込んでいく必要はない。非常にポジティブな印象を与える場面にしたい。
・新聞部についての情報を与える。新聞部の経緯や11月発行の校内新聞についても触れる。
・可能な範囲で、汐巳高校についての情報も入れておく。環境や校風など。
・・・五人全員登場して、新聞部も登場。
これはもう、単に必要な情報を並べた感じですね。
03 ジュードークラス
・1組、2組男子合同の体育の授業。
・笹賀谷、嵩間、葵が一堂に会する。
・明日からテスト一週間前期間。そろそろ中間テストのことを考え始める時期。
・中間テスト期間を挟む前のちょっとした挿話として。また、男3人だけの話が他にないので。
※距離感さえ適切であれば、普通に互いに楽しくやっていけることを暗に示している。
・普通にただ楽しい学生生活を描く。そして、ここで普通をしっかり描くことでクライマックスを引きたてたい。
※ただし、ストーリーとして特段重要なイベントでもないので、短めに行きたい。
・・・まんまです。
特に伏線を張ったりする必要もなかったので、完全に思い付きで書いていきました。
平和っていいですね。
もう次からは終盤に向けての流れに突入してしまうので、貴重な息抜きでした。
04 サンセット・サイクリング
05 ブレイクアウト
・中間テスト明け。文化祭の2週間前の週末。
・新聞部は、校内新聞発行のためという名目で、学校での合宿を敢行する。
・嵩間の過去について触れる。
・泊まり込みの序盤はなかなか楽しい雰囲気だった。しかし、最終的に、新聞部が険悪な雰囲気になる。笹賀谷は半ば意地となって、仕事を抱え込むことになる。
・・・当然、ラストに向けての伏線という要素もありますが、笹賀谷と嵩間だけの印象的な場面を描いておきたかったというのもあります。
気付いたらサイクリングしてました。
第4話で笹賀谷より前に田万川が部室に到着していますが、彼女がその前に云々という話は、面倒なのでカットしてしまいました。
あと、想定外に学生寮の奥さんが存在感を発揮してしまった。
第5話は、「あーあ」って思いながら書いていました。
那須原は良い子。
06 コンフェッション
・文化祭前々日の話を中心に。10月31日に印刷をかけて、文化祭の2日間を中心に配布。
・いろいろあった末の新聞部の和解。11月号の原稿が完成する(あとは印刷をかけるだけ)。
※実は、那須原が奮闘していた。
※作品として、ここでハッピーエンドを迎えそうな感じにする。
・合宿のときに撮られていた写真が発端となる同性愛疑惑から、新聞部の人間関係が急激に崩壊していく。
※もはやもとに戻る可能性など考えられないくらいの決定的な崩壊。
・・・執筆基本方針の「終盤までは、ぶつかりあいながらも最終的にはわかりあえる可能性(ハッピーエンド)を漂わせる」に該当する部分です。
一回突き落とすだけでは刺激が足りないので、良い方向に行きそうな雰囲気になってきたところでダメ押し。
基本的に、会話の流れは思い付きなので、ここも事前に具体的な内容は決めてなかったんですが、かなりロクでもない展開になりました。
07 ウォーキング
・現実的な描写が多少あっても構わないが、基本的には非現実描写であり、笹賀谷の主観的情景を客観的に描写する。
※他人の夢を覗くようなものであり、独特の異様さを表現したい。あまり激しい展開、派手な展開、際立ったドラマ性は必要ない。淡々と異様さを描き出したい。むしろ、嵐の前の不気味な静けさが求められる。
※現実には、睡眠中に見る夢より、白昼夢に近い。つまり、日常生活を侵食するだけの深刻な事態が現在進行形で発生しているということになる。
※笹賀谷によるモノローグはやむを得ない場合を除き避ける。読者による想像の余地を残し、解釈を固定しないように注意。あくまで「笹賀谷の思考を想像するためのヒントを与える」というスタンス。
※妙にリアルに描写されるが、心情描写のない世界。それは、この作品全体の雰囲気と似ている。
・笹賀谷の蓄積しているダメージが、外から見える以上に深刻なものであることを暗に示し、ラストの場面に自然とつながるようにする。
・笹賀谷の過去の情景、笹賀谷の家族の描写なども混ぜ込みたい。
※事実の描写ではないので、作中世界における事実と齟齬があっても構わない。むしろ、明確な誤謬を描くことによって、これが現実描写でないことを示すのもあり。
・・・サークル内で発表したのち、加筆された部分。
本編で結局触れなかった、笹賀谷の「家族」に対する彼独特のイメージを少しだけ含めています。
人間の価値観に決定的な影響を与えるのは、やはり「家族」であり、自分自身を見つめ直すような状況に置かれれば、それは自然と引き出されてくるもの。
とか言っても、メインはあくまで五人のストーリーなので、物凄くぼかした描写にしました。
08 ツリフネフォール
・・・これは、終わらせるだけだったので、なんと言っていいのやら。
個人的には、那須原が電車に乗った時点で、死亡フラグ確定というイメージでした。
ラストの状況だけは確定していたので、あとは淡々と書くだけ。
シナリオ的にその必要性があったのかと言えば微妙かもしれませんが、「作品制作の意図」により、こうなってもらう必要がありました。
これで「どうしてこうなってしまったんだ?」と思い、「でも、悪いやつは誰もいなかった」となり、「じゃあ、誰がどうすれば良かったんだ?」と考えてくれたら、そこまでが執筆者として想定していたことなので、ひとまず執筆を始めた時点で設定したノルマの達成となります。
カギは「距離」です。
重要です。
以上!!
長々とお付き合いありがとうございました。
今回みたいなやつは、今後書く機会もそうそうないと思うので、いろいろ貴重でした。
サークルメンバーの反応もなかなか興味深かったです。
今回は、感覚的に書いていける気がしなかったので、最終的な分量のわりに、しっかりキャラを固めてから書き始めましたが、作品(執筆方針)によってやり方は全然違います。
こうやって、ブログなどで振り返ってみると、自分でも気付くことがあったりするので、これまた面白いものですね。
「小説家になろう」では、今後も不定期に作品を更新していくので、気が向いたらのぞいてみてください~。
あと、もっとガチで語り合ったりしたいなら、「Random Walkのメンバーになる」という秘策もあります。
興味ありましたらご一報を!
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sho