「1+1=〇」と「〇+〇=2」の世界
今月はサークルのブログを途絶えさせないことを勝手に目標にしている遊木です。
ここのところずっとAfter Effectsについてだったので、たまには漫画分析の話でもしようかと。
黒子のバスケ、アニメ2期始まりましたね~。
(TOKYO MXはまだですけど)

私はスポーツ漫画だとアイシールドが好きなのですが、黒バスとアイシは、なんか根本的に自分的な楽しみ方が違うなぁと最近気づきました。
アイシは、「最初は弱かった主人公が心強い仲間と共に敵を倒していき、最後はライバルやかつては敵だった者たちと世界に挑戦していく」という流れのまさに王道少年漫画で、主人公達の成長を、キャラクターと一体となってドキドキハラハラしながら読み進めるのが楽しみでした。
じゃあ黒バスはどうだろう…と考えたのですが、個人的に黒バスは所謂アイシのような王道少年漫画を読むときとは、ちょっと違う楽しみ方をしている気がします。
王道のものはだいたいが、主人公(とその仲間)が敵を倒していくことで成長し、ときに壁にぶつかり、過去に倒した敵とも徐々に仲間意識が芽生えていく…という流れだと思うのですが、黒子は違うんですよね。
黒バスの場合は、最初から主人公が腹に一物抱えている。(過去にすでに事件が起きている)
そして、少年漫画にありがちな「主人公が仲間に支えられながら…」というスタイルではなく、どちらかというと主人公がメインキャラを(経験や精神的に)支える立場にある。もちろん、だんだんと主人公も仲間に支えられていく流れになるのですが、最初のうちは圧倒的に支えられているのは火神くんや誠凛チームで、黒子はフォロー役です。
そして一番他の漫画と違うなぁと感じるところが、黒バスの場合「倒した敵を仲間にしていく」ではなく「かつては仲間だった人間を取り戻しに行く」という点です。もちろん物理的にではなく、精神的にですけど。
アイシやスラダン、だいたいの少年漫画は、スタート時点では主人公の世界は小さく狭い。それが物語が進むにつれて新しい経験や考え方を得ることで世界が広がっていきます。そして読者はその広がっていく世界観を主人公たちの目線で一緒に楽しむわけです。
でも黒バスの場合、最初の時点で主人公の世界はそれなりに大きい表現になっています。すでに中学の時点で全国制覇しているわけですし。
じゃあ黒バスの見所はどこなんだろうと考えると、それは多数派にありがちな「広がっていく世界観」ではなく、「最初から存在している世界の、中身を埋めていく作業」なんだと思います。
まぁわかりやすく(ないかもしれませんが)表現すると、
王道少年漫画は、「1+1=〇」
黒バスは、「〇+〇=2」
〇の部分がその漫画の見所ですね。
私はこのニュアンスが結構おもしろいと思っています。
確かに他の漫画と比べて世界が広がっていく感覚は薄いので、物語としての勢いは弱いかもしれません。しかし、最初にある程度の世界が固定されているおかげで、その中に存在する要素―――つまりキャラクターたちの細かい描写に、描き手も読み手も労力を使えるのかなと。
勢いが弱いからこそ「主人公の目線」という楽しみ方ではなく、「主人公たちの世界を神の視点から楽しむ」ことに適しているのではないでしょうか。
黒バスの物語をまとめると、ざっとこんな感じですかね。
・キセキの世代がいるバスケ界=固定された世界観
・主人公はキセキの世代と袂を分かっている=「〇+〇=2」の「2」の部分
・じゃあそうなった原因は?=見所=「〇+〇=2」の「〇+〇」の部分
まぁ正しくは、「〇+〇=2」っていう式は物語の途中までしか当て嵌まらないんですけど…。
黒バスの流れを正確に表現するなら、
「〇+〇=2」…物語の前提、および序盤
↓
「1+〇=2」…物語が進むにつれて〇(原因)が明らかになっていく
↓
「1+1=2」…物語の〇(原因)が明らかになる
↓
じゃあその上で、「2」を「3」に増やすためには何をすれば良いのだろう?
(過去と向き合うことが終わり、未来に目を向けるようになる=成長)
↓
……
って感じだと思います。
そして黒バスに女性ファンが多いと言われるのも、物語がこの形式「〇+〇=2」だからなのではないかと。
絶対ではないにしろ、女性は勢いで広がっていく世界観より、人間の複雑な感情や葛藤、トラウマなどに魅了される傾向にあります。そして黒バスが用いている世界観「〇+〇=2」は、まさに女性が好みそうな、複雑な人間模様を表現するのに適したスタイルなのではないでしょうか。
なんだか長々分析しましたが、言葉足らずでわかりにくい所はフィーリングで掴んで下さればと思います(ぇ)
たまにこういうことを考えると、自分の物語を作っているときにも「あれ?自分はどこを見所にしたいんだろう?」と立ち止まったりします。でも、この立ち止まって自分の物語を見つめ直す作業が、作品をブラッシュアップすることだと思うので、今後も分析する作業を続けながら、人を魅了する物語について勉強していきたいと思います。
黒子のバスケ、本誌もいよいよ決勝戦が始まりました。
誠凛vs洛山、黒子vs赤司の行く末が気になります!
aki
ここのところずっとAfter Effectsについてだったので、たまには漫画分析の話でもしようかと。
黒子のバスケ、アニメ2期始まりましたね~。
(TOKYO MXはまだですけど)

私はスポーツ漫画だとアイシールドが好きなのですが、黒バスとアイシは、なんか根本的に自分的な楽しみ方が違うなぁと最近気づきました。
アイシは、「最初は弱かった主人公が心強い仲間と共に敵を倒していき、最後はライバルやかつては敵だった者たちと世界に挑戦していく」という流れのまさに王道少年漫画で、主人公達の成長を、キャラクターと一体となってドキドキハラハラしながら読み進めるのが楽しみでした。
じゃあ黒バスはどうだろう…と考えたのですが、個人的に黒バスは所謂アイシのような王道少年漫画を読むときとは、ちょっと違う楽しみ方をしている気がします。
王道のものはだいたいが、主人公(とその仲間)が敵を倒していくことで成長し、ときに壁にぶつかり、過去に倒した敵とも徐々に仲間意識が芽生えていく…という流れだと思うのですが、黒子は違うんですよね。
黒バスの場合は、最初から主人公が腹に一物抱えている。(過去にすでに事件が起きている)
そして、少年漫画にありがちな「主人公が仲間に支えられながら…」というスタイルではなく、どちらかというと主人公がメインキャラを(経験や精神的に)支える立場にある。もちろん、だんだんと主人公も仲間に支えられていく流れになるのですが、最初のうちは圧倒的に支えられているのは火神くんや誠凛チームで、黒子はフォロー役です。
そして一番他の漫画と違うなぁと感じるところが、黒バスの場合「倒した敵を仲間にしていく」ではなく「かつては仲間だった人間を取り戻しに行く」という点です。もちろん物理的にではなく、精神的にですけど。
アイシやスラダン、だいたいの少年漫画は、スタート時点では主人公の世界は小さく狭い。それが物語が進むにつれて新しい経験や考え方を得ることで世界が広がっていきます。そして読者はその広がっていく世界観を主人公たちの目線で一緒に楽しむわけです。
でも黒バスの場合、最初の時点で主人公の世界はそれなりに大きい表現になっています。すでに中学の時点で全国制覇しているわけですし。
じゃあ黒バスの見所はどこなんだろうと考えると、それは多数派にありがちな「広がっていく世界観」ではなく、「最初から存在している世界の、中身を埋めていく作業」なんだと思います。
まぁわかりやすく(ないかもしれませんが)表現すると、
王道少年漫画は、「1+1=〇」
黒バスは、「〇+〇=2」
〇の部分がその漫画の見所ですね。
私はこのニュアンスが結構おもしろいと思っています。
確かに他の漫画と比べて世界が広がっていく感覚は薄いので、物語としての勢いは弱いかもしれません。しかし、最初にある程度の世界が固定されているおかげで、その中に存在する要素―――つまりキャラクターたちの細かい描写に、描き手も読み手も労力を使えるのかなと。
勢いが弱いからこそ「主人公の目線」という楽しみ方ではなく、「主人公たちの世界を神の視点から楽しむ」ことに適しているのではないでしょうか。
黒バスの物語をまとめると、ざっとこんな感じですかね。
・キセキの世代がいるバスケ界=固定された世界観
・主人公はキセキの世代と袂を分かっている=「〇+〇=2」の「2」の部分
・じゃあそうなった原因は?=見所=「〇+〇=2」の「〇+〇」の部分
まぁ正しくは、「〇+〇=2」っていう式は物語の途中までしか当て嵌まらないんですけど…。
黒バスの流れを正確に表現するなら、
「〇+〇=2」…物語の前提、および序盤
↓
「1+〇=2」…物語が進むにつれて〇(原因)が明らかになっていく
↓
「1+1=2」…物語の〇(原因)が明らかになる
↓
じゃあその上で、「2」を「3」に増やすためには何をすれば良いのだろう?
(過去と向き合うことが終わり、未来に目を向けるようになる=成長)
↓
……
って感じだと思います。
そして黒バスに女性ファンが多いと言われるのも、物語がこの形式「〇+〇=2」だからなのではないかと。
絶対ではないにしろ、女性は勢いで広がっていく世界観より、人間の複雑な感情や葛藤、トラウマなどに魅了される傾向にあります。そして黒バスが用いている世界観「〇+〇=2」は、まさに女性が好みそうな、複雑な人間模様を表現するのに適したスタイルなのではないでしょうか。
なんだか長々分析しましたが、言葉足らずでわかりにくい所はフィーリングで掴んで下さればと思います(ぇ)
たまにこういうことを考えると、自分の物語を作っているときにも「あれ?自分はどこを見所にしたいんだろう?」と立ち止まったりします。でも、この立ち止まって自分の物語を見つめ直す作業が、作品をブラッシュアップすることだと思うので、今後も分析する作業を続けながら、人を魅了する物語について勉強していきたいと思います。
黒子のバスケ、本誌もいよいよ決勝戦が始まりました。
誠凛vs洛山、黒子vs赤司の行く末が気になります!
aki