本来、物質的な壁は部屋をわけるためのものであります。比喩で心とのかかわりの意味で使う壁という表現も日本語にはあります。

 

 最近、よく問題になる国を隔てる壁、これは自分の領地ですよとのしるしで壁を作るのはまだわかりますが、閉じ込めるための壁はよくありません。
 広い広い場所で自分の場所を守るために壁を作るというのはよいのです。しかし、狭い場所に壁を作るというのは、囲われているのと同様で、ましてそこから出さないための壁はよろしくありません。

 国境に関する壁は自分の場所を守るためといえば聞こえはよいでしょう。
 日本には人との関わりの意味で「壁がある」という表現がありますが、これが国同士で物質的な壁で隔てる場合、同様の意味も持てるのです。つまり、物質的に壁で隔てるというのは、「私たちはあなたとは距離を置きます」という宣言にもとれるのです。そして、行き場のない小さな場所に壁を作ると、物質的にも距離ができ、精神的にも距離ができます。

  日本でよく「壁にぶつかった」という言い回しがありますが、これは仕事で思わぬ困難に遭った時などに使われています。物質的にもぶつかれば痛い、精神的にも仕事での困難があれば辛い。
 「物質的な壁」という存在は、よいものでもありますが、いきすぎると悪い作用を起こし精神にも影響が出るのです。
 よって、壁は広い場所で使われるべきです。要するに狭い場所に人を入れているのは、人権違反を犯しているのと同じです。人間はある程度ひらけたところにいないと、気がつかない間に心がむしばまれていく存在であります。狭い場所に壁は必要ありません。