まだまだ歩きたい。
さらに裏道の住宅街。
新築の家々と古い家屋が混在する。
お気に入りの古い家が姿を消すのは、なんとも忍びない。
自分はとあるアパートが特にお気に入り。
久々に行くとまだそれはそこに3棟建っている。
築64年の公団アパート。
家賃はここいらにしては、驚くほど安い。
ここに引っ越そうかな…真剣に考える。
ただ、風呂付きではない。
これはちっと厳しい。
せっかく味わい深い趣きなのだが。
更に
海側に歩き、臨海公園を抜け郷土資料館のある小高い山の遊歩道へ。
こんな時間に人気(ひとけ)もなく、ここは自殺の名所という事でもあるが、
今の心境ではむしろ引き込まれるように足が向く。
思ったよりライトアップされていて明るい。
蛍光色の冷たく幽玄な光。
鬱蒼とした木々とその向こうの暗闇が、
自分をとても優しく出迎えてくれる。
ここに来て始めて自分の顔に笑みが戻る。
こんな場所が自分の一番落ち着ける場所なんだ。
神秘的な、この世とは別個に存在する空間。
霊気をなんとはなしに絶えず感じつつも、恐怖感はまるでない。
刹那的な居場所を見つける瞬間。
ここから先この丘を急な階段を伝って降りれば、やがてまた我が家が見えてくる。
体は何処までも冷え切った。
家に戻っても、少しだけ穏やかになれそうだ…。