③から……
しかし、駅員3人に動く気配はない…それどころか
皆、訝しげ(いぶかしげ)な表情を浮かべ
顔を見合わせている
駅員B 「何があったんです…」
運転手A「何がって…車掌から聞いてませんか…
投身自殺ですよ」
駅員C 「投身自殺って……」
駅員D 「……どこでですか?」
運転手A「どこって…確かこの辺り…」
そう言って線路を見た…が
そこには何も無いのである……
いや…そんな筈は……
車両の前方…下…後方…
いくら見ても…『それ』は無いのだ
運転手A「皆も探してください…
どこかに飛んで行ったのかも知れません…」
駅員達は、仕方なさそうに線路に降り
捜索を始めた……だが
頭部、胴体は勿論
肉片の一欠けら…髪の毛一本…
見当たらないのである
それどころか…血痕もないのだ
運転手A「…おかしい…そんな筈は…」
確かに自分は人を撥ねた筈…
若い女性…ブルーのワンピース…
そして、長い髪…
見た…確かに見た…
動揺する中、ようやく警察が到着した
現場検証…しかし
物的証拠が何も無い…
警察官「…あなた、本当に引いたのですか?」
運転手A「…はい、間違いありません…
確かに引きました」
警察官「…しかしねえ」
線路を見やる警察官達…
警察官「誰か、目撃した方いませんか…
いたら話をお聞きしたいのですが…」
ホームにいる客に警察官が声をかける…
暫くすると…
若い男性E「…はい…あの…私…見ました」
中高年の女性F「…あの…私も…」
2人の客が手を挙げた…
運転手Aを含む3人が、それぞれ別に事情を聞かれた…
若い男性Eの証言
「私は今日、残業で遅くなり
この電車に乗ろうとしていました
ホームの最前部に立つ若い女性を見ました
ブルーのワンピースに長い黒髪…
風になびいていましたよ
何も持っていなかったので不思議に感じましたね
あっ!と思ったら飛び込んでました
止められませんよ、あれでは」
中高年の女性Fの証言
「私は仕事の帰りで電車を待ってました
あそこに女性がいましたね
若くて…青いワンピースでした…
髪は…長かったですね…
あんな所にいたら危ないなあ…と
思っていたら…
……びっくりしましたよ」
それぞれ別に事情を聞いたが
3人の話は、ピタリと一致した
⑤へ続く……