「セイさん、こんなバカな子達だけど本当の兄弟だと思ってよろしく頼むわね」
翌日、戸の開く音がして女性が入ってきた
「ごめんくださ~い」
慌ててやって来た美砂子が
「は~い、今行きます」
玄関に向かった。
書斎では康成と天使が昨日の件についてもめていた。
「本当に母さんに惚れたのかって聞いているんだ」
「だから、さっきから言ってるけど嘘も方便だろってことだよ」
「いやいや結構本気と見た」
「だから違うって言ってるし焼きもちも大概にしろ」
「焼きもちとはなんだ!」
「今のあんたの事だよ、それより誰か来たみたいだぞ」
「話をそらすつもりなんだろ」
あまりのウザさに天使は疲れて
「あーもう俺はいくからな」
「あっおい待て、一人にしないでぇ」
天使は部屋から出ていった。紀理子が居間に行くと玄関から美砂子がやって来た。
「母さん良いところに、ちょっと大変なのよ」
「大変って何なの」
「綺麗な女性が来てる、父さんの愛人かも」
「なにを言ってるのよ」
紀理子が玄関に行くと美園が立っていた。
「初めまして富岡美園と申します。真行寺部長には在職中や退職後も大変お世話になりまして、お葬式に出たかったんですが間に合わず申し訳ありません」
紀理子は少し考えていたがフッと思いだし
「そう、あなたがお父さんの部下の美園さんなのね」
「えっなに、母さんこの人を知ってるの」
「アンタは黙ってなさい」
美砂子は黙った。そんな二人を見て苦笑いをした美園が
「あの、お焼香をさせていただいてもよろしいですか」
と言った。紀理子は優しく微笑み
「どうぞ、父さんも喜ぶわ」
「お邪魔します」
紀理子が祭壇に案内すると美園が手を合わせた。
そこに徹と天使と康成がやって来て、康成は祭壇の影に入った。そして徹が
「ねえ誰か来たの?」
シー‼️
紀理子と美砂子に静かにしろと合図をされ、美砂子に耳打ちをされた。
色々面白い事が続くもんだな
天使がニヤリと笑っていると徹が
「確か父さんは早期だったから2年前に退職したよな、その後も相談に乗るって本当にただの部下なのか?」
「そこなのよ気になるのは」
と美砂子が言った。焼香し終わった美園が振り返り
「ありがとうございました」
「いいのよぉ、そうだお茶入れるわね」
お決まりの流れで紀理子はお茶を用意しに台所に行った。徹が待っていましたと
「あの父とはどういう風なお付き合いをされてたんですか」
「どういう風なお付き合いって」
うっ…
突然吐き気を催す美園
え!
驚く美砂子と徹。
どっとうするのよ絶対に隠し子よ、母さんがブチキレるわよ
知るかよ父さんのせいだろ、ここは逃げるかイヤそれとも
そうねハッキリさせないと母さんが可哀想よね
美砂子は意を決して
「あなたもしかして妊娠してるの?」
「はい妊娠4か月です」
うわぁやっぱり、こんな若い子に手を出すなんて父さんたら何やってくれてるのよ
本当に開いた口が塞がらないってこの事だよ、バカ親父
そんな2人のボソボソ話を聞いていた天使は、祭壇の奥で右往左往している康成にだけ聞こえる声で
「おっさんどうする?なんか色々おかしな事になってるぞ」
「分かっとる、どうしてお前たちは父さんを信用してくれないんだ。お父さんは悲しいぞ」
「あんた本当に信用無いのな、俺の事も隠し子って信じて疑わないしある意味凄いな」
「そんな風に言うな、俺は清廉潔白なんだぞ、それなのにどうなってるんだ。神か神の試練なのか、こんな試練は要らんぞぉ神様の意地悪」
ズドンと落ち込む康成、天使が思わず
ププッ!
えっ?
笑うと、ぼそぼそと状況について話し合っていた2人が驚き見た。そこに記理子がやって来た。
「お待たせ美園さん、つわりの事だけど甘いものが良いのよね」
え?知ってるの
驚く美砂子と徹
「ごめんなさいね、話を聞いてたのに美園さんの事すぐに分からなくて」
「私の方こそご迷惑ばかりおかけして」
「いいのよ、ちょっとくらい苦労させれば」
おい言われてるぞ、おっさん
苦労って母さんのイケズ
あんた子供か
天使は呆れたように康成を見た。美砂子が恐る恐る
「母さんは父さんからその人の事聞いてたの?」
「ええ聞いてたわよ」
「父さんたら信じられない、自分の愛人のことを母さんに言うなんて」
「愛人?」
「そうよ愛人なんでしょ」
慌てて美園が
「とんでもない、この子を産もうか迷っているときに部長が親身に相談にのってもらって、だから産むことにしたんです」
「えっその子の父親って父さんじゃないの?」
徹がキョトンとして聞くと
「絶対に違います、無人島で二人っきりになったとしても、部長とはそんな事はあり得ません。タイプじゃないので」
うわぁなにもそんなに強く否定しなくても
と皆は思った。
「そうならそう言ってよ、父さんの隠し子かと思ったじゃない」
「うんうん、これ以上人が増えるとワケわかんなくなるし」
美砂子の言葉に徹は大きく頷き天使を見た。
えっ俺?
「あんた達ったら馬鹿ね、そんな事があったらお父さんはもっと早くに息の根がないわよ」
いやだから、あんたが一番怖いんだよ
皆はヒキツリ笑いをした。
「あのそろそろ話の続き良いですか」
と美園が言うと美砂子が
「はいどうぞ」
「その人は色々事情があって多分結婚は出来ないんです。子供も諦めようかと思いました。でも部長が何度も励ましてくれて…これから大変ですけど、それでも一人で育てようって決めたんです」
「母さんそれを聞いて安定期に入ったら色々協力するって言ってあったのよ」
「よろしくお願いします」
「任せてね」
これは、この家に住む人物がまた増えたって事よね
だな、こうなったらどこまで増えるか乞うご期待だ
「なっセイ」
突然、徹に目配せのうえに名前も呼ばれて
だからぁ
「主語をちゃんとしゃべれ、それで分かるかぁお前らエスパーか!」
と突っ込むと
やれやれと美砂子と徹が天使をみた。