康成が憮然として
「徹のやつ何もあんなに驚かなくてもいいじゃないか、こっちの方がビックリしたぞ」
「仕方ないだろ」
天使が答えると不思議そうに
「何でだ」
「考えてもみろよ、死んだはずの父親が半分透けた状態で恨めしそうに見てたんだぞ、化け物って思っても仕方ないだろ」
「半分透けた状態だって」
「最初は湯呑も持てなかっただろ」
「確かに」
「その時はまったく見えてなかったんだ」
驚く康成に天使が
「今だって半分透けてるんだぞ」
「何だって❗️中途半端にもほどがあるだろ」
「だから結構インパクトがあったんだろ」
そうだな、それなら怖がられても仕方ない
「それに必死の形相してたし髪も振り乱してたから怖さ倍増だったんじゃないのか」
「そんなに酷かったのか」
「まあね」
康成は困って頭を抱えたがすぐに思い直し
「でも父親だぞ父親、酷くないか」
「どの面で言う?本当に酷かったんだぞ、こんな風に」
恨めしそうな顔で下からライトを当てる天使。その顔をみて怯んだ康成に天使が
「ほらみろビビってるし」
「ちっ違うぞ俺はそんな顔はしてないって思っただけだぞ」
「ふーん、じゃあどんな顔をしたんだよ」
天使にのせられた康成は
「こうだ」
難しそうな頑固親父丸出しの顔をしてみる
「なっおっさんブサイクだな」
「なにブサイクだと」
「ブサイク」
こっこいつ何様だ生意気なガキめって、こいつ天使だっだ
とうなだれているところに、美砂子の声が聞こえてきた。
「徹のせいで明け方じゃない、あーあ喉乾いた」
康成は美砂子が来るのにも気付かず
「それならこれはどうだ」
と鬼瓦の真似をして振り向くと、目の前に美砂子がいた。しばらくの間見つめあう康成と美砂子。美砂子はゆっくりと目線をはずし
「なんか見たような気がするけど、まあいいや水飲んでこようっと」
と台所へ向かう美砂子に康成が
「おい美砂子」
ビクッと立ち止まる美砂子。
「やだ幻聴まで聞こえ出したわ徹のせいよ」
と耳をふさいだ。康成はいてもたってもいられず美砂子の前にきてもう一度
「美砂子、父さんだぞ~」
美砂子は目を見開いて康成を見てギャーと叫びドタンッとぶっ倒れた。
「美砂子~」
「あ~あ失神してるよ」
「なんでなんだ、父さんは悲しいぞ美砂子」
泣き叫ぶ康成に天使は
「おっさんの家族って面白いな」
と笑った。そんな美砂子の叫び声に紀理子と徹がやって来た。
「ちょっと美砂子どうしたの」
「姉さん」
2人は倒れている美砂子に気が付き駆け寄った。気が付いた美砂子は
「でっでた」
「出たってなんなの」
「だから出たのよぉ」
「だからなにがよ」
「姉さんも」
「そうよ見たわよぉあれは父さんよ」
「だろー」
紀理子は寂しそうにうつむき
「何で私には見えないの」
「え?」
「ちょっと母さん」
「私だって父さんに会いたいわ、なのになんで私には見えないのかしら」
と泣き出した
やだ母さんたら結構辛いの我慢してたのね。私としたことが気付かなかったわ
母さん父さんのことやっぱり好きだったんだな
康成は嬉しくなり
「母さんここにいるぞ」
「あの薄情もの、もし会えたら十倍増しこめかみグリグリの刑だわね」
とニヤリと微笑んだ。目の前まで近寄っていた康成は驚き固まり、美砂子と徹と天使はそんな二人をひきつりながら見た。
「母さんそれは言い過ぎかと」
「そうだよ父さんが可哀想だよ」
キョトンとする記理子
「何で」
「だって父さんが辛そうな顔で見てるわよ」
「どこよ」
「母さんココだ!ココだぞ」
思いっきり目が合う記理子と康成
「あんた達ね親をからかうのもいい加減にしなさいよ」
「見えてないのかよ」
と顔を見合わす徹と美砂子
「見えてないなんて母さんが何気に一番ひどいぞ」
紀理子はふと思いだし
「そんな事より」
うわぁ、おっさんの事をバッサリ切り捨てた。
「おっさんの嫁さんすごいな」
「母さんひどいぞ」
隅っこでうずくまる康成を天使が慰めていた。それに全く気付かない紀理子は
「徹は何で父さんの書斎に行ってたの?」
今それを聞く?母さんは強者だな
「俺の部屋って書斎の隣だろガサガサ音がするし時々バサッて物の落ちる音がしたから、気になって覗きに行ったの」
「物音」
「向かいの猫が時々入って来てたから、もしかしてって」
「そういえば、しょっちゅう来て部屋を荒らすから父さんよく怒ってたわね」
「うん、だから又かなって思って見に行ったんだよ。まさか父さんの幽霊を見るとは思わなかったけど」
美砂子は頷きながら
「本当にビックリよね」
「だからそれは幻覚なの」
「え~」
紀理子の発言に康成は驚いて叫んだ
「それか隠し事があって父さんは私に会いたくないとか、どっちかしらね」
お父さん落ち込みすぎてコアラみたいに小さくなってる。でも母さんが見えないって言うなら
「そうね、これは幻覚よ幻覚なのよ」
ええそれでいいのか
徹、良いから話を合わせなさい
美砂子が徹に目配せをした。
「そうだよ、これは幻覚で幻聴なんだよ。疲れが溜まってるせいで錯覚を起こしてるんだ」
「そうよねっ母さん」
康成は美砂子と徹に詰め寄った。
「徹、みちゃダメよ分かったわね」
「なんかウザいけど気にしないようにする」
「ウザいって言葉は傷つくんだぞ美砂子~徹~」
目の前をうろうろする康成と目を会わせないように変な動きをする2人を不思議そうに記理子は見て
「美砂子も徹もさっきから何やってるのよ」
「えー何でもないわ」
「そう何でもない」
「お前らなぁ」
どんどん話がややこしくなるのを天使がクスクス笑いながら見ていると、康成は部屋の隅で膝を抱えてもっと小さくなった。
うっまた凹んでる、豆粒くらいの大きさだわ。このままじゃヤバいわね
「ねえ母さん今日のお昼は外で食べましょうよ、ねっ徹」
「えっああそうだな行こうよ」
「そうね片付けは後ですればいいし行きましょ」
「じゃあ10時集合ね、徹が車出してよね」
「あーハイハイ」
美砂子と徹は部屋に向かった。一人になった紀理子が
「父さん覚えてらっしゃい」
と言いながら部屋に向かった。びびったのは天使だ
これはおっさんがビビる訳だわ
「おっさん、そう落ち込むなって」
肩に手をおくと小刻みに震えている
「母さんに殺される」
「いやもう死んでるんだけど」
「母さんに八つ裂きにされる」
八つ裂きって、あり得るかも
「なんか悪さでもしたのかよ」
「悪さなんかしとらん清廉潔白だ」
「ならそんなにビビらなくても良いんじゃないのか」
「ちがーう母さんにだけ見えんのがいかんのだ、見えるようにしろ」
天使の首もとをつかむ康成
くっくるしい
「おっさん落ち着け」
「もう、おしまいだぁ」
ぐったりと落ち込む康成を天使は唖然とみていた。