親父と天使の探し物 1 小説 | 「山あり谷あり笑いあり」らんのblog

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「今日は主人の為に集まって頂き本当に有難うございました。皆さん疲れたでしょ、ゆっくりして行ってください」

 

祭壇には屈託のない笑顔の康成の遺影。夕暮れをあびた線香の煙が細くたなびく中、喪主の真行寺記理子が親族に挨拶をした。

 

「記理子さんこそ大変やったな、お疲れさん」

 「おじさんこそ、ありがとうございます」


この名倉のじいさんは康成の伯父で、親族では一番年寄りである。奥からお茶とお菓子を持って来た美砂子が机の上に置き配りながら

 

「大おじさんこそ92歳なのに元気でうらやましいわ

、見習わなくっちゃ」


と言うと康成の従兄弟の岡井成二(せいじ)が

 

「だっておっさんバケモンだから」

 

空気が一瞬固まった。空気を換えようと従兄弟の田代浅男の妻、伸江が

 

「そうそう紀理子さん、突然の事でビックリして疲れたでしょ、なにか手伝う事ない」

 「そうなのよ伸江さん、まさか私達の旅行中にこんな事になるなんて、笑っていいのか笑っちゃいけないのか困ったもんだわ」

 

と捲し立てるように言う紀理子に


こんなに楽しそうで良いのかしら?

旦那さん亡くなってすぐなのに


眉間にシワを寄せ見ている伸江。すると美砂子がうなずきながら

 

「本当よね、こんな事なら首根っこ捕まえて無理やりにでも連れて行けばよかったって後悔したわ」

 「そこがあいつらしい所じゃないか、従弟の俺が言うのもなんだが最後まで康成らしい逝き方だったよ」

 

パクパクとお菓子を食べながら成二が言うと美砂子が

 

「確かに変わり者の父さんらしいわね。もう文句のつけようがないってもんよ」

 

康成の姉の佐代が笑いながら


「ちょっと美砂子ちゃんそこまでいっちゃ可愛そう…でもないわね、康成は子供の頃から変わってたし」


伸江はいっそういぶかしげな顔をして


初めて顔を会わせたときから不思議だったけど、この人たちって変?


そんな伸江に浅男が


「気にするな、みんな変わってるのは昔からだから」

「…」


気付かれたと伸江は慌ててお茶を飲んだ。


俺が着替えてる間になんか楽しそうだな


喪服からスエットに着替えた徹がやって来た。


「ねえなんの話」


徹の声に振り向いた美砂子が


 「やだ徹あんたいつの間に来たの」

「えっ今だけど」

「ちょっと、なんで着替えちゃったのよカッコ良かったのに」

「さっき着替えるって言ったよね、あの父さんの喪服は袖丈やなんやかんや短くって窮屈だからって」

 

のびをする徹に紀理子が

 

「喪服忘れてくるあんたが悪いんでしょ、バカね」

 「まあ、そうなんだけどさぁ」

 

あくびをしながら答える徹。帰り支度を済ませた浅男が

 

「おい成二、俺達は先に帰るからな」

 

と声をかけた。

 

「あさ兄もう帰るのか?」

「ごめんなさいね記理子さん、ゆっくりしたいんだけど明日は孫の参観日でね、両親が行けないから代わりに行かないと」

「いいんですよ伸江さん早く帰ってあげて」


佐代も


「そうよ伸江さん家はここから3時間もかかるんだし、早く帰ってゆっくりして」


朝男と伸江は立ち上がり玄関へ向かった。

 

あっ忘れ物


紀理子は慌てて


「美砂子、奥から用意してある荷物の袋を持って来て」

「ああ、はいはい」

 

美砂子が名札のついた袋を取りに行くと、名倉のじいさんと美砂子の兄の鳥取が立ち上がった。


「じゃあ、ワシも帰るか」

「俺も帰るわ」

「えっ帰るの、母さん伯父さんと鳥取のおじさん帰るって」


と言うと


「あらあら、美砂子ほかの皆さんのも持ってきてね」

 「はいはい」

 

美砂子は白い袋に受け取る人の名前の書いた札がついてあり、バラ寿司やお供え物を分けていれてある親族用をもって玄関へ戻ってきた。

 

それぞれを皆さんにわたすと順番に帰っていった。

 

「有難うございました」

 

皆を見送り戻って来る記理子に美砂子が


 「大おじさん家隣だから泊まってけばいいのに」

「なに言ってんの、我が家が一番ゆっくり休みたいのよ」

「まあ分からんでもないけどね」


と言いながら居間に戻ってきた。


「ねえ成二おじさん、あの浅男おじさんが従兄弟の中で一番年上なの?」

 

何気なく徹が聞いた。

 

「ああ確か七十過ぎだ、俺と康成は六十代半ば…これからって時にあいつは」

 

それを聞いた沙夜が少しムッとして

 

「ちょっとセイちゃん、あんた何気にキツイわよ。七十歳代は終わりだって言うの?」

「え?沙夜さん七十」

 

驚く成二

 

「これだから男って気が利かないわね」

 

プリプリする沙夜に紀理子が

 

「そう言わずに、そうだお茶入れなおしましょうか」

 「ああいいわよ、こいつと私も帰るから」

「こいつって俺か?」

 

成二が聞き直すと

 

「当たり前でしょ!三女の千秋ちゃん、いつ子供が生まれるか分かんないんでしょ。あんたが今日1日お酒を飲んでないなんて変だから、むつみさんに電話して聞いたのよ、水臭いわね」

 

と言うと記理子と美砂子が顔を見合わせ

 

「あらあら、おめでたい話じゃないですか」

「おじさん、おめでとうございます」

 

照れる成二

 

「いやはやありがとう、でも葬式で言うもんじゃないよなと思ってな」

「いいんですよぉあの人は楽しい事が大好きだったから、産まれたらお祝いに行かなくちゃ」

 

と喜んだ。

 

「康成がこんな時にすまんな、で沙夜さんはどうやって帰るんだ?皆は先に帰ったぞ」

 

と言うと

 

「あんたに送ってもらうに決まってるでしょ、そう言ってあるし」

 

と当たり前のように言った。

 

「それでみんな帰ったのかぁやられたな。じゃあ一緒に帰るとするか」

 

立ち上がり玄関に向かう成二と沙夜。二人について記理子と美砂子がた立ち上がるとぼーっとしている徹に美砂子が

 

「徹!何してんのよあんたも来るの」

 「え~」

 

徹はしぶしぶ立ち上がった。

 

「じゃあまた来るわね」

「またな」

「有難うございました」

 

そして2人が帰っていった。