真っ暗な空間(壮一と陽太の夢の中)
壮一「ここって」
お互いに気が付く。
壮一「陽太、お前何でここに」
陽太「壮一こそ」
隼人が出て来る。
壮一「お前も?」
陽太「壮一も?」
壮一「一週間前からだ、鮮明な隼人の夢を見るようになったのは。初めはなぜなのか気が付かなかった、でも今なら分かる。そうだよな隼人」
隼人が2人にちかよる。
隼人「ああ、二人に頼みがあるんだ。桜を、妹を助けてやってほしい」
陽太「桜ちゃんを」
隼人「そうだ、妹を助けてくれ」
土下座する壮一。
隼人「壮一」
気が付き同じく土下座する陽太。
壮一「すまない桜ちゃんがあんな風になってしまったのは、全部俺たちが悪いんだ」
陽太「すまない隼人、悪気がなかったとは言わないお前を困らせたかった。でも、あんな事になるなんて思ってなかったんだ」
2人を立ち上がらせる隼人
隼人「でも、俺は死んでしまった。後悔しているんだよな」
壮一「ああ、ずっと後悔している」
陽太「俺もずっと後悔して来た」
隼人「だったら、桜を助ける為に手伝ってくれないか。これが最後のチャンスなんだ」
陽太「最後って」
壮一「それは、お前にとって最後なのか?それとも、桜ちゃんにとって最後なのか」
隼人「どちらもだ」
壮一「どちらも、わかった何でも言ってくれ」
陽太「ああ、俺達で出来る事なら」
微笑む隼人
隼人「ありがとう、そう言ってくれると思っていた。頼んだぞ」
去って行く隼人。
壮一「隼人!」
立ち止まる隼人。
壮一「お前、今どこに居るんだ?まだあそこに居るのか?」
陽太「あそこって…まさか」
隼人「ああ、あの場所で待っている。俺はずっと待っているんだ」
去る隼人。
壮一「陽太、何があっても隼人の願いをかなえるぞ」
陽太「それが俺たちの出来る唯一の償いだな」
森の中に《わたし》がいる。
わたし「みんなに愛されてあなたは幸せね。私はいつもいつも一人だった」
桜が来る。
わたし「遅いじゃない、やっと来たのね」
桜「教えて、あなたはいったいなんなの?」
わたし「私はあなた、そう言ってるでしょ。それにもう分かっているはずよ」
桜「もう分かっている?そうなのかもしれない。でも思い出せなかった。何度カウンセリングを受けても、その間の事は忘れてしまう」
≪わたし≫は怪しく微笑み
わたし「いいわ、教えてあげる」
≪わたし≫は桜の耳元で
わたし「私はねこの世に産まれる事の出来なかった、もう一人のあなた」
桜「もう一人の私?」
驚く桜
わたし「どちらか一人しか生き残れないと言われて、二人はあなたを選んだ」
桜「一人しか生き残れない?選んだ?」
わたし「そう」
桜の首に手をかける《わたし》
わたし「お父さんとお母さんは、あなたを助ける為に消えかかっている私の命を捨てたの」
桜「捨てた、命を?」
わたし「そうよ」
笑いながら、桜の首から手をはなす。
わたし「それでも、二人はもう一人の私を忘れる事が出来なかった。そして、生き残ったあなたに完璧を求めた」
桜「……」
わたし「そりゃあそうよね、上の子が神童と呼ばれていたんですもの、あなたにも相当の期待をした。でも、あなたは」
暗い表情の桜
桜「私は神童じゃなかった。それどころかお父さんとお母さんの期待を、ことごとく破って来た」
わたし「そして七歳の誕生日のあの日、あなたはもう一人の私の話を立ち聞きした。そして愛されていない自分に気が付き、私を作り出したのよ」
桜「愛されていない愛されるはずがない私」
桜に冷ややかな微笑みを向ける≪わたし≫
わたし「本当は憎かったんでしょ?何でも出来て、誰からも愛されるお兄ちゃんが。だからすねて困らせた。大好きだけど大嫌いなお兄ちゃんを困らせたくて、わざと森の中に逃げ込んだ」
桜「森の中に」
わたし「そう、そこで私はサンダルを片方失くし、探しに来たお兄ちゃんは溺れて死んだ」
桜「探して探して、池の中にあったサンダルを取ろうとして、兄さんは足を滑らせた。私のせい」
わたし「そう私せいよ。そして、お父さんは私を憎んだ。あの言葉は忘れられないわ。あなたも聞いていたはずよ、なぜお前が生きている、お前が死ねばよかったんだ」
叫ぶ桜
桜「やめて、やめて」
わたし「だから完全に心を閉ざしたのよ、こんな奴らもっと苦しめばいいってね」
桜「そう、完全に心を閉ざした。この世から消えてなくなる為に」
ふと気づく桜。
桜「もしかして、あの時あなたはワザと私と入れ替わったの」
わたし「何の事?」
桜「だってあの時、あなたが入れ替わってくれなかったら私どうなってたか」
わたし「私はただ、乗っ取るなら今がチャンスだと思っただけよ」
桜「違う、そうじゃない」
わたし》の頬にそっと触れる桜に驚く《わたし》
わたし「なにをするの?」
桜「だって、あなた笑っていたのに悲しそうだった。今だって本当は」
思いっきり手を振りほどく《わたし》
わたし「私に気安く触らないで」
桜「そう、あの日もこんな事が」
わたし「思い出したの?」
桜「あの日、お父さん達の話を聞いてどうしようもなかった時、あなたは言ってくれた」
わたし「私が言った言葉」
桜「何があっても守ってあげる…私が代わりになってあげる大切な分身だから」
驚き離れる≪わたし≫
わたし「そんな事、何で思い出すのよ」
手を伸ばす桜。
桜「あなたも愛されたかったのよね。見付けてほしかったのよね」
わたし「やめて」
桜「寂しくて寂しくて」
わたし「やめて」
≪わたし≫に近寄る桜
桜「ねえ、どうすればいい?私は、どうやってあなたに償えばいい?」
わたし「償うですって?私は、そんな事を望んじゃいない。私はただ」
何かに気が付く《わたし》
わたし「ただ」
桜「あなたは本当はやさしい人。おじさんの家に行って、自分を取り戻してく私の邪魔をして来なかったもの」
わたし「二人は本当に愛してくれたから、どちらの私も、だから私」
明るくなっていく森