ケイルは穏やかな表情で、窓の外を見た。
やっと、終わる…。
ケイルはゆっくりと、部屋を後にした。そこに、実加とばあやがやって来た。
ケイルと実加の2人は、やっと本当の意味で出会った。
「あそこに…ケイルさまが。」
ばあやが実加に言った。
実加は、ケイルを見て驚いた。父親にソックリだったからだ。
「父さん…に、すごく似てる。」
実加は思わず呟いた。そんな実加に、ケイルが 言った。
「麻衣子さんたちは大丈夫だから、君も早くここから出るんだ。」
と言われて、実加はホッとした表情になった。
「よかった、麻衣子逃げたんですね。よかった…。」
そう言い、実加はポケットから、十字架のペンダントを取り出した。
「それは…。」
見つめるケイルに、実加はゆっくり近寄っていった。
「これは、父の形見です。父が心から信じた人、ただ一人父の苦しみを理解してくれた人から、貰ったそうです。」
そう言い、ペンダントをケイルに渡した。
少し重く感じる、大振りのペンダント…中から微かに音がした。
「これは…」
十字架がすこし外れ、中から銀の銃弾が出てきた。
驚き見ているケイルに、実加が言った。
「それには、父の想いが詰まっています。それを作るために、父は必死に力を注ぎ込んでいましたから。」
ケイルはその銃弾の中から、2つだけを取り出した。そして、残りを実加に差し出した。
「これは…君に持っていてもらおう。」
ケイルの言葉に、実加は驚いた。
「でも…。」
実加の言葉に、ケイルは
「そうだな、いつか…いつか、本当の故郷に帰る事があったら、その時に返してきてほしい、本来あるべき場所に…。」
と言った。実加は頷き、そして言った。
「…分かりました…必ず返しに行きます。
ケイルさん…私にはミドルネームがあるんです。父の愛した人の名前…私のミドルネームは、ユリアナです。」
ユリアナ、それはケイルと結の母親の名前だった。
「ユリアナなんだね…。」
そう言い、ケイルは実加を見た。そんなケイルに実加は
「はい…。ケイル…兄さん…兄さん、父さんは最後まで、兄さんに会いたがっていました。
兄さんを置いて家を出てしまった事、ずっとずっと後悔していたんです。」
それを聞いていた、ケイルの心の中が暖かくなっていった。
「俺は、捨てられたわけじゃなかった。愛されていたんだな…。」
ケイルは、銃弾を握り締めた。
その銃弾からは、父の想いが伝わってくるようだった。
ケイル、これはお前にしか出来ない。
永い悪夢の中にあった、我が一族の歴史を、全てを終わらせてくれ。
こんな残酷な役目を、お前に託さなければならない父を、許さなくていい、憎んでいい。
それでも、お前にしか出来ないんだ…。
すまな い…。
そう、聞こえたような気がした。
いや、聞こえたのだ…この銃弾から、父の声が。
ケイルは実加に
「ありがとう実加、産まれてきてくれて、生きていてくれて、ここに来てくれて…ありがとう。
さあ、もう行くんだ…君には帰る場所がる、麻衣子さん達が待っているだろ。」
と言った。実加は微笑み、
「はい、麻衣子の所に戻ります。麻衣子は、私の大切な居場所ですから。
兄さん、このペンダントはいつか必ず、約束は守りますから…必ず、さようなら。」
と言い、去っていった。
ケイルは、去っていく実加の後ろ姿を見ながら言った。
「生きろ…自分らしく、諦めずに俺達の分まで生き抜いてくれ…。」