その頃、薄暗い廊下を携帯の灯りを頼りに、歩 く人影があった。
「あの部屋は何処だろう!?」
広人の影だった。
ケイル…彼なら、みんなが俺を見て変な顔をす る理由を、教えてくれるかもしれない。
広人は暗闇の中、ケイルを探してさまよってい た。
ふと見ると、明らかに他とは違う、豪華な取手と装飾が施された扉が見えた。
広人はそっと入ってみた。中には誰もいないようで、奥の 方に美しい紺色に金糸で飾ってあるカーテンが見えた。
広人はそっと近より、すぐ側にある金色の房のついた紐を引いてみた。
「こっこれって…」
広人は息を飲んだ。目の前に、畳一畳以上もあ る絵画が2枚現れたからだ。
1枚は穏やかな表情の、夫婦らしき中年の2人 と、もう1枚は結さんとおそらくケイル… 広人 は食い入るように、その絵画に見入っていた。
「すごい…こんなに大きな画があるなんて、な んて綺麗なんだろう…まるで生きているみたい だ。」
広人は、美しい色彩に感動していた。
右隅に文字が書かれている事に気付き、広人は 近寄っていった。 しばらく見ていた広人は、次 の瞬間愕然とした。
「嘘だろ…60年以上前の日付じゃないか、こ の絵画は、60年以上も前に描かれたって言 う のかよ…。」
広人は信じられなかった。 この絵に描かれてい る結が、今と変わらない姿だという事が…。
「どう見たって、二十歳前後にしか見えないの に…まさか、本当に60年以上も前に描かれた んだとしたら、歳をとっていない…って事なの か、そんな事が現実にあるわけない…。」
現実にあり得ないことが、目の前で起きている 事に、広人は混乱していた。
確かに、昔話で人魚の肉を食べたり、胎児を食 べると長生きするとか、何処かのテレビ番組で 見たり聞いたことがあるけど…まさか。
「ケイル…彼も年をとらないのか、いったい2 人は何なんだ…」
あの部屋、あの部屋に彼はいる…ケイル、彼な らきっとこの絵の事を教えてくれる…
広人は、そっとカーテンをしめ、部屋を出てい った。
後には、青白い光が部屋を照らすだけだった。
翌朝、少し顔色の悪い結が朝食の席で言った。
「今日、食材の調達に料理長達と田所が村に行くんだけれど、広人さん手伝ってくださる?」
不意に話を振られて、
「すみません…聞いてなかったんで、もう一度言ってもらえますか。」
と広人が言った。結は、広人に向き直し言った。
「料理長達と一緒に、村に買い出しに行ってもらいたいの。構わないかしら?」
広人は少し戸惑った。昨日の絵の事を聞きたかったし、何より村人から怪訝な顔をされるのが嫌だったからだ。
だが、広人は考え直した。そこで、自分に似た人の情報が手に入るかもしれない。もしかしたら、あの絵の事も分かるかも知れないと考えたのだ。
「分かりました…手伝います。何時から行くんですか?」
「30分後に、玄関においでください。」
とばあやが言った。
「わかりました、じゃあ用意してきます。失礼します。」
広人は、部屋へ去っていった。そして、残った3人に結が言った。
「昼食の用意はしてあるらしいから、皆さんお願いね。」
3人はうなずいた。今日の結は少し疲れているらしく
「ごめんなさい、私はこれで失礼するわね。皆さんゆっくりしてね。」
と言い、部屋に去っていった。
「結さん顔色が悪いようでしたけど、大丈夫ですか?」
と実加が聞くと、ばあやは
「時折、体調が悪くなるのです。いつもの事ですので、心配なさらないでください、すぐ良くなります。」
と言い、部屋を出ていった。
奈月が、
「じゃあ、私達もそろそろ部屋に行こうか。」
と言い、3人は席を立ち部屋に向かった。