その時突然、麻衣子は腕を捕まれた。
「そっちじゃないよ。」
と、優しい声がした。
突然の事に戸惑う麻衣子に、もう一度おなじ声
が聞こえた。
「大丈夫ここにいて、動かないで。」
と言って、ふっと腕をはなして、声の主はさって いった。 麻衣子は急いで振り返ったが、薄暗い廊下には誰の姿も見えなかった。
その頃実加は、
「はぐれるなんて…お願い無事でいて」
必死で麻衣子の姿を、探して歩いていた。そんな実加の前に青白い人影が現れ、奥へとゆっくり進みだした。
「まっ待って…」
実加は誘われるように、その影の後をついていっ た。 薄暗い廊下を進んでいくと、いつの間にか人影は消え、前の方に小さな明かりが見えてきた。それを、実加はライトで照らしてみた。
「まっ眩しい…」
不意に、麻衣子を一筋の光が照らし出した。
「麻衣子」
実加は、ホッとして麻衣子に駆け寄った。
「めっちゃ探したんだよ、ダメだよはぐれちゃ… わかってる!?」
と言う麻衣子の言葉に、実加は笑いだした。
迷子は自分の方じゃないの、麻衣子ったら。
実加は、優しく麻衣子に言った。
「はいはい、今度からは麻衣子を見失わないようにするね。」
「頼んだよ!」
そう言いながら震えている麻衣子の肩を、実加は優しくつつみ
「もう大丈夫だよ。」
と言った。そして、
「今日は、もう部屋に帰ろか。」
と実加が言った。麻衣子はうなずき、2人ははぐれないように、手を繋いで歩いた。 部屋につくと、奈月が心配して中で待っていた。
「お帰り、大丈夫だった?」
奈月の問いに、
「実加が迷子になってね…大変だったんだよ。」
と麻衣子が言うと、実加がすかさず、
「それは、麻衣子でしょ…」
と言った。麻衣子はバツが悪そうにてれ笑いをした。
「やっぱりね、実加さんが迷子ってのはありえな いよ。だって、実加さんはしっかりしてるもの。 」
と奈月が言うと、話を変えようと慌てて麻衣子が言った。
「それより、私が実加を探して迷っていたら、誰 かに引き留められたの。そっちじやないって…」
麻衣子の言葉に、実加が
「私も、誰かの影を追っていたら、麻衣子を見つけられたの。」
真剣な表情で言った。 奈月がふと思い付いて、
「それ、広人さんじゃないの?」
と言った。だが麻衣子は
「ちがう、広人さんの声じゃない…広人さんの声ならわかるし、あんなに急にいなくなるなんて無理だよ。」
と言った。 実加は、何かに気が付いたようで窓の外を見てい た。
「きっと、私たち以外にまだ誰かいるんだよ。」
そう麻衣子が言うと、実加が
「そうかもしれない…」
と呟いた。
ふと麻衣子が思い付いたように、
「もしかしたら、おじさんの事を知ってる人か もしれない…きっと知ってる。あぁ、もう一度 会えないかな。」
その麻衣子の言葉に、実加が言った。
「あまり、無茶はしないほうがいいかも…」
しり込みするような実加の言葉に、麻衣子が言 った。
「そんな無理だよ…手掛かりがそこにあるのに 、諦めるなんて無理。お願い、結さんに見付か らないようにするから、あの人を探そうよ。」
と麻衣子が言うと、奈月も
「実加さんたら心配しすぎだよ、私もついてい くいくから大丈夫。」
と奈月が言った。すると、
「わかった、でも無茶な事だけはしないで、お 願い。」
と実加が言った。