劇場で観たかった映画『Firebird』を観てきました。
無名の俳優が綴った本が原作のこの作品。
ソビエト占領下のエストニアで、エリートパイロットと二等兵の許されぬ愛が書かれた本を、ペーテル・レバネ監督が映画化しました。
【この真実の物語を愛する人とシェアして下さい】
エンドロールの直前にこの一文が現れるんですが、冬夢はずっと心に刺さったままです。
公開されたばかりなので、完全ネタバレはしません。いつものように「ふんわりネタバレ」、セルゲイとローマン、2人の人生を賭けた愛の物語です。
※
もう少しで2年の兵役を修了する若き二等兵・セルゲイ(=トム・プライヤー)
ある日、新しいエリートパイロットのローマン大尉(=オレグ・ザゴロドニー)が赴任してきます。一目見て凛々しく美しいローマンに心惹かれるセルゲイ。そして大尉もまた、セルゲイに心奪われていたんです。
現在でもそうですがロシア(映画の中ではまだソビエト)は《同性愛宣言禁止法》なんて法律があるくらい、LGBTの人たちには冷酷な国ですが、この映画の1970年代、しかも軍隊の中でなんて存在が知られたら大罪でした。
しかし恋する心は誰にも止めまれませんよね。
セルゲイとローマンは人目を避けながら、2人きりになれる場所を探して気持ちを確かめ合います。写真を撮るセルゲイが「現像したい」とローマンの部屋に作った暗室で初めて2人きりになるシーンで冬夢は震えました
ちょっとミーハーな表現ですが、体格の小さいセルゲイと、エリートで凛々しいハンサムなローマンが並ぶだけでニンマリしちゃう。
軍の中だし、ソビエト占領下って事で彼らにとってどこも安全ではないから逢引きシーンもハラハラして見てました。
しかも、まだ世界が戦争という脅威に晒されていた時代。空軍パイロットであるローマンは、有事があればすぐに出陣する立場。常に死の危険がすぐ側にあったんです。
愛する人と過ごす毎日が2人に幸せをもたらしますが、そんな毎日は突然脅かされます。ローマンが卒兵と「不適切な関係にある」と彼の上官に密告書が届いたんです。
セルゲイとローマンはそれまで、セルゲイが兵役を修了した後の事を話してました。ここじゃない何処かに2人で行きたいと言うセルゲイ、しかし士官であるローマンは国を捨てられない、2人がこの先一緒に過ごす為にはどうしたらいいかを考えてた…
でもそんな夢も、上官からのローマンに対する執拗な監視で砕かれます。
ローマンは追い詰められ「これまでもこれからも君とは何もなかった」と冷たくセルゲイを遠ざけたのでした。
この後兵役を終えたセルゲイが、小さい頃の夢を叶える為に演劇学校に入学するんですが一年後、彼を訪ねてくる人がいました。
それが、軍で親友だったルイーザ(=ダイアナ・ポザルスカヤ)。彼女は軍にいる時からローマンを好きで、彼と結婚するとセルゲイに報告に来たのです。
この後、四年後その後とセルゲイとローマンの関係は続くんですが、あんまりにも自分勝手にセルゲイを翻弄するローマンに終始イライラしました。セルゲイは必死で愛したローマンを忘れようとしてるのに、その隙間に突然姿を表してはまた愛の渦にセルゲイを引き込むんです。
セルゲイはローマンの置かれている立場を理解してはいるけど、時々どうしようもなく辛い。でも離れられないのですよ。妻と可愛い息子からローマンを奪いたいなんて微塵も思っていないけど、ローマンの赤の他人である自分の立場を思うと、悲しくて堪らない。
とうとうセルゲイは、ローマンから今度こそ離れようと心に決めるのですが…
最後もうね、ローマンが残した手紙の内容で冬夢は号泣です(´༎ຶོρ༎ຶོ`)
ローマンが自分の事しか考えてないって最初の頃のセルゲイも言っていたんですが、冬夢も自身の保身の為の行動にしか思えなくて、セルゲイを弄んでるようなローマンに、終始イライラしてました。
しかし、彼の生きる意味は空を飛ぶ事にあったんですよね。セルゲイがゲイだって事は「子供の頃のある出来事」で語られるんですけど、ローマンの人物像はほとんど語られないんです。
だから結婚して子供を持ったローマンが、セルゲイに執着する意味をずっと考えてました。
それはもうね、やっぱり愛しかないんですよ。
ローマンが人生で一番愛した唯一の人がセルゲイでもちろん、それはセルゲイも同じで…
だからこそ、この時代の同性愛者が置かれた社会に怒りが込み上げました。
エストニア出身の監督がこの映画を母国で公開する事ができてその結果、様々な力が働いて自国が同性婚できる国になったって事実が素晴らしい。
この作品の原作となった本を書いたロシアの無名俳優セルゲイ・フェティソフさんは、映画の完成を見ずに亡くなられたそうです。とても残念で悲しい…
タイトルである【FIREBARD】は、バレエの『火の鳥』からきています。
ローマンが初めてセルゲイを誘い一緒に外出し、バレエを見た事なかったセルゲイに見せた演目でした。
映画館で是非、ご覧になって欲しい。そしてセルゲイとローマンの愛の奇跡に涙してください。
映画の紹介などを見ると『ブロークバッグマウンテン』や『アナザーカントリー』のタイトルが目につくのですが、冬夢はドイツの名作LGBT映画『FREE FALL』を思い出しました。
こちらは軍隊と似た警察官同士の激しい愛の物語です。残念ながら、日本で配信がないのですが
三連休の中日に観たのですが、劇場内はガラガラでした。そんな中、冬夢のすぐ斜め前に男子ペアが座ってたんですよ。時々寄り添いながら仲良くポップコーン食べてて、そっちも気になってソワソワしちゃった
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