2022年のレインボーリールで公開された、韓国映画。



ずっと見たいものリストに入れてたのですが、U-NEXTで見放題になりました。

韓国のLGBTQ映画はリアリティのあるものが多く、それだからこそ辛く苦しい作品が多いです。でも冬夢はそんな作風も好きだし何より、現実の彼らを描いてる点で見るべき作品だと思ってます。


注意いつものように、完全ネタバレしてます❗️これから見るよって方は、映画視聴後にまた来てくださいねウインク




【どこまで遠くに行けば、安住の地は見つかるのだろうか?】


主人公のジヌ(=カン・ギル)は幼い姪・ソルを連れてソウルからカンウォン(江原道)のファチョン郡(華川)に流れ着きました。

そこで心優しい牧場主に雇われ、その母とその娘と共に、羊や牛を飼いながら穏やかに暮らしていました。ソルは何故かジヌを「お母さん」と呼んでます。

ジヌには大学時代からの詩人で親友のヒョンミン(=ホン・ギョン)がいて、彼は時々牧場を訪れていたのですがある日、彼もソウルからジヌの居る牧場に移住してきます。



実はジヌはゲイで、ヒョンミンは大学からの恋人でした。

牧場主は親密な2人を見て彼らの秘密に気付いていたようでしたが、特別視もせず受け入れていました。ヒョンミンは詩の講座の職を得て、ソルからも懐かれ、本当の家族のように寄り添い助け合って生きていたんです。



この作品はLGBT映画ですが、ヒューマンドラマでもあるんですよね。


不思議な同居生活の中、ジヌとヒョンミンは人目を避けながらも、楽しい時間を過ごすようになりました。



このホン・ギョンさんが、めたんこ素敵でね❤️

朴訥な感じのイケてない(おい!)風貌のカン・ギルさんとのケミが凄く良いのですデレデレ




そんな平穏な日々を脅かす、ある訪問者が牧場にやって来ます。
それは5年前、幼いソルを叔父であるジヌに「1ヶ月だけ預かって欲しい」と言って置き去りにしたまま、連絡も無くなってしまったジヌの双子の妹・ウニョンでした。
彼女は結婚し生活が安定した為、ソルを引き取りたいと言うのです。誰にも居場所を告げずにひっそり生きてきたジヌとソル。ジヌは「ソルは渡さない」と言いますが、ウニョンは「引き渡してくれるまでソウルには帰らない」と牧場に居座ります。


ある日、認知症を患う牧場主の母が突然、亡くなってしまいます。

葬儀の日、ソルが一緒に遊んでいた子供のおもちゃを取り上げて泣かせてしまいました。叱ろうとするジヌを静止するウニョン。この時言い争いになるですが、ウニョンは思わずこう言ってしまいます。

「兄さんをお母さんと呼ばせて、男2人で子育てする家族は普通なの?」


この事で、ジヌ達の関係が村人達の中で噂になり、陰口や好奇の視線にさらされるようになりました。

講師の職もクビになるヒョンミン。しかしジヌは彼より精神的に追い詰められます。そして、ヒョンミンにこう叫んでしまうんです。

「全部お前のせいだ。お前が来てからおかしくなった。ウニョンに俺たちの居場所を教えたのもお前だな⁉️全てお前のせいでこうなった❗️」


ジヌがどんな思いでソウルから出て来たのか、幼いソルを抱えてどれ程苦労してきたかは想像出来ます。やっと見つけた安住の地だと思っていたけど、やはり世間の目はどこでも同じ。

ヒョンミンは言います。

「ヒョンがソルを手放さないのも村人達の目を気にするのも、全て自分の為だ」

ジヌが守りたいもの、大切にしたいものは彼自身をがんじがらめにしている、ヒョンミンはそう思ったんですね。


2人がどこか遠くへ行こう、とベッドで話すシーンがあります。

「どこか遠くへ行こう。牧場で働いてお金を貯めて自分たちの牧場を持つのもいい…」

こんな話をしながらも、2人の表情は暗くて辛い…切なすぎる…泣


そんなヒョンミンが何も言わず突然、ジヌの元を去ってしまいます。

悲しみに暮れるジヌは、ソルから目を離してしまい、彼女は行方不明になってしまいます。無事に見つかりますが、この事でジヌはソルを母である妹に返す決心をしました。


ジヌは最後、牧場も去る事にするのですが牧場主がとっても良い人でね。ソルを自分の孫のように思ってくれていたし、ジヌの事も心配してくれるんです。彼みたいな人がひとりでもジヌの側にいてくれた事は、この先の彼の心の支えにもなるだろうと思いました。

「恋人を探しに行くのか?」



そんな牧場主の言葉に、ジヌが答えるシーンはありませんでしたが、きっと探すに違いない❗️って思わせてくれる最後でした。


美しい自然の描写と、淡々と進むストーリーですがじんわりと心に迫ってくるものがあります。

都会での生きづらさを感じてソウルを出たジヌと、同じ気持ちのヒョンミンが愛するジヌとどんなに遠くへ行ったとしても、何処かで安住の地が見つかると信じたい。


静かで深い余韻を残す映画です。



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