パトリシア・ハイスミス原作の、1999年の映画。
主人公「トム・リプリー」をマット・デイモンが演じています。
有名なアラン・ドロンの『太陽がいっぱい』は、原作に忠実という点では違います。
(あーもう、何て美しいのアランキラキラ
かの名映画解説者、淀川長治さんは「これは最初のホモの映画ですよ」と仰っていたらしい…流石です❗
また、長くなりそうなので、二回に分けて書かせてくださいね照れ


時間を戻せるなら…
あの、上着を借りた時に…
1950年代のニューヨーク。
トムは、指を怪我してしまった知り合いの代わりに、大企業グリーンリーフ船舶会社のパーティで、ピアノを弾きました。
その時、仲間に借りていたジャケットが、グリーンリーフの息子ディッキー(ジュード・ロウ)の母校であるプリンストン大学の物で、息子の学友かと間違われます。
何気無く嘘をつき、彼の事は知っています、と答えるトム。

後日、グリーンリーフはトムに、イタリアへ行って戻って来ない放蕩息子を、連れ戻しに行ってくれないか、と頼みます。謝礼は破格でした。
トムは貧しいただのピアノ調律師。ヨーロッパへ行けるなら、とこの依頼を引き受けます。
ディッキーの写真を見て、趣味のジャズを必死で覚えるトム。グリーンリーフの用意した豪華な客船でイタリアへ渡ります。

モンジベロへ到着した時、ある女性に出会います。富豪の娘メレディス(ケイト・ブランシェット)は、「R」と言う文字の荷物置場から一つだけ持った彼に、どうやったらそんなに荷物を少なく出来るの?と声をかけます。
グリーンリーフだ、と名乗るトムですが彼女に、Rから荷物を取ったわね?と言われます。家業が煩わしく、逃げてきたのだと、ここでも嘘を付きました。

トムは、海岸にいるディッキーと恋人のマージ(グヴィネス・パルトロー)を見ています。「彼の顔は僕の顔」
眩しいほど、美しいディッキー。
偶然を装い、ディッキーに接近します。色白で、メガネをかけた黄色い海水パンツの、何とも冴えない男。(でも、このダサさ加減が重要なんですよね)
「僕は君を知ってる、君も僕を知ってる」
何も覚えて居ないディッキーでしたが、ランチでも、と誘うマージ。

ランチに遅れて来たディッキー。
実はその前にトムは、彼が地元の女性と逢い引きしているのを見かけていました。
マージはトムと二人でランチを取った、と拗ねています。「愛してるよ」と機嫌をとるディッキー。お邪魔かな?とトムは言いますが、マージはマティーニを作りにキッチンへ行きます。二人になる、ディッキーとトム。
得意な事は何だ?ディッキーが尋ねると、
「サインの偽造」「他人に成り済ます事」そして、ディッキーの父グリーンリーフの口調を真似るトム。ディッキーは「親父と居るようだ」そっくりだとマージに話します。

ディッキーは、全く帰る気はなくトムに、お前の仕事は終わりだ、NYへ帰れと冷たく言います。
ここでトムは、ジャズが好きなディッキーに、レコードをわざと見せました。そして、ディッキーの船に付けた名前「バードは最高さ」といって、ディッキーの気を惹きます。
ジャズバーへトムを連れていき、盛り上がる二人。
次の朝、トムが目覚めるとディッキーはタイプライターで手紙を書いていました。彼の癖、サインを観察するトム。
トムを気に入り、部屋を与えるディッキー。
「付きまとって離れないと言っている」と父に手紙を書き「お前は俺と親父の二重スパイだ」

トムが貰った報酬で冷蔵庫を買ったディッキー達。
いつも同じ洋服のトムに、彼は自分の服を着ていいと言います。
バスタブに入るディッキーと、チェスをするトム。
「僕も寒い、入って良いかい?」と聞くトムに「ダメだ」と言うディッキー。ただならぬ空気が二人を包みます。舐めるような目でディッキーを見るトム。
(何ともドキドキする場面ですキョロキョロ)とても重要なシーン。
風呂を出たディッキーの鏡に映る裸の姿を、じっと見つめているトムに気付くディッキー。
ここから、トムのディッキーへの気持ちは加速していきます。

ローマに出掛けた二人は、フレディという遊び人の友達と会う予定でした。
ジャズのレコードを聞く二人と、観光するトムは帰りに駅で会おうと約束し、別行動しますが列車の時間にディッキーは現れません。
部屋に戻り、彼の服を着てディッキーに成りきるトム。
フレディに車で送ってもらったディッキーがそれを見て、気持ち悪がられ咎めます。
「洋服は着ていいといったから…」
「俺の靴まで」
「ごめんよ、すぐに脱ぐから」
「自分の部屋で脱げ」

次の朝、フレディは「良いご身分だな、ディッキーの金で遊んで、ディッキーの服を着て。俺が変わってやろう」とトムを見下します。

フレディとクルーズに出掛けた3人。
クリスマスにスキーに行く事を知らされていないトム。
マージは「ディッキーはいつも、新しい人と新鮮な関係を築くが、それに飽きたら途端に冷たくなるの」「いつも相手は男よ」と言って何名かの男性の名前を言います。その中には、この先キーパーソンとなるピーター(ジャック・ダヴェンポート)の名もありました。

ここ、ディッキーの「特別な男友達を作る」という事について、マージは何かを感じている言葉に聞こえませんか?
ディッキー本人は、トムの「そういう感じ」を嫌っていますが、自分では気付いていない、いつも一緒で恋人でもあるマージだからこそ、感じている特別な嗜好とでも言う様な。

ボートでセックスする二人を覗いているトム。
フレディは、「トミー、覗きは楽しいかい?」とからかいます。

ある日、ディッキーが浮気していた女性が水死体で上がってきます。その日はお祭りでした。バルコニーから、その場面を見る3人。
ディッキーは、女性は妊娠していて、お金が要るというのに拒否した、とトムに話します。
知っていた、これは「二人だけの秘密」だ、君の為なら何でもする、とディッキーを慰めるトム。これで二人には「特別な共有化」がされたとトムは思いました。

しかし、何ヵ月もディッキーを連れ戻せないトムに、とうとうディッキーの父から帰国する様に、と手紙がきます。ディッキーもまた、こんな事があった田舎街を出て、マージと北へ行くと言いました。
「俺に付きまとうのは止めろ、帰れ」
トムに出来ることは、もうありません。

最後の旅に、サンレモのジャズフェスへ行く二人。列車の中でディッキーは眠っていました。その胸元に、そっと顔を埋めるトム…
ディッキーは、気付いていました。
「列車に乗ると、いつもやるな。不気味だよ」
トムは、知らんぷりしながら、ガラスに映るディッキーの顔に自分の顔を合わせ、口付けするように写します。

本当は大学の知り合いではない事、ジャズが好きなのも自分に合わせたんだろ、と全てをそうだったのだろうと話すディッキー。でも今はジャズが好きだ「恋をしているように」と返すトム。

次の日、二人はボートを借り、海に出ます。
「ここに住むぞ!家を借りる」叫ぶディッキー。
トムは、新年には自分のお金でイタリアに戻る。ローマに部屋を借りることが出来たら仕事をする。
ローマに居るときは君が僕の部屋に、ここには僕が泊まりにくるよ。
「僕を愛しているだろう?」
「お前を愛していない、疲れたんだ。寄生虫の様に離れない。退屈なヤツだ!」
「素直に気持ちを言えよ、僕たちは`兄弟´だからか」
「小娘みたいに、ディッキー、ディッキー!俺に何て口をきくんだ!」
「素直になれよ、僕の気持ちは伝えた。あのチェスの夜に気付いたろ?」
「何をだ?マージを愛してる、結婚する。」
トムは、激昂します。
そして、掴みかかるディッキーに、ボートの櫂で殴るトム。
額が割れ、みるみる血が吹き出します。
「ディッキー!ディッキー!」
取り乱すトムですが、抵抗され更に難度も何度もディッキーを殴りました…

血まみれのディッキーを抱き締め、一緒に横たわるトム。
愛するディッキーを、みずからの手で殺害してしまいました。
海を漂うボートの、二人…
この映画の見所のひとつ、トムがディッキーを自分のものにできた、至福の時かもしれません。

トムは、ボートにたくさんの石を積み、ディッキーごと海に沈めます。

ホテルに戻り、部屋のキーをと言うと、濡れているトムを見てホテルマンが「グリーンリーフ様ですね、寒いでしょう」と言います。
言い澱むトムですが、ここから彼の「ディッキー・グリーンリーフ=トム・リプリー」の、二重生活が始まります。


その ② に続きます。