1927年、ベルリンで実際に起こった「シュテークリッツ校の悲劇」を元にした、2004年のドイツ映画です(また、こういう映画のご紹介です(^^;)

※シュテークリッツ校に在籍していたギュンター・シェラーがコック見習いのハンスという青年を射殺、自らも拳銃自殺した、という事件。ギュンターの親友、パウル・クランツが共犯として逮捕され裁判にかけられる。

同じギムナジウム(寄宿学校)に通う裕福な家庭の息子ギュンター(アウグスト・ディール)と、貧しい家庭に育ったが頭が良く、奨学金生であるパウル(ダニエル・ブリューデル)は、親友同士。
ある週末、パウルは両親が不在のギュンター家の湖畔の別荘に誘われます。
そこにはギュンターの妹ヒルデ(アンナ・マリア・ミューエ)も来るとのこと。パウルは密かにヒルデを愛していました。
拳銃を手にいれ、列車で「綺麗だろう」と自慢するギュンター。
別荘に到着すると、ヒルデは先に到着していました。彼女は性的にとても早熟な少女。ギュンターは、「ハンス(トゥーレ・リントハート)は何処だ?」「二ヶ月会ってないわ」「コックの匂いがするぞ」
じゃれ合う兄妹を見つめるパウル。
湖に遊びに行く二人。
詩作をしているパウルに朗読してみて、と言われヒルデに恋の詩を読むパウル。早熟なヒルデは、パウルの気持ちを知りながら、彼を誘うような仕草を見せる(小悪魔よ、この女)

次の日、街へ出るというヒルデ。
夜には戻るようギュンターに言われる。
「夜にはパーティーだ」
昼間、二人は銃の試し撃ちをしながら、秘密の契約を結ぶ。それは3つの約束を定めた「自殺クラブ」の結成でした。

夜、パーティーには沢山の若者が来ていました。ヒルデの同級生エリ(ヤナ・パラスケ)、そして遅れてハンスが…
ワイン庫へワインを取りに入ったギュンターの後にハンスが入って来ます。彼に気付き驚くギュンター。
「なんで来たんだ!何故ここに?!帰れ、今すぐ帰れ!」「俺にも妹にも2度と近付くな!」ハンスに殴りかかるギュンター。
実はハンスはギュンターの元恋人。何かの理由で別れてからはハンスはなんと、ヒルデと付き合っていました(ハンスも最低な男だ)
ハンスをまだ愛してるギュンター。激しく口付けを交わすのです。
一方ヒルデは、女友達と恋話で盛り上がってます。「両手一杯の男が欲しいわ」「束縛されるなんてごめんよ」と性に奔放な彼女。友達のエリは「一人の人を一筋に愛したい」と言う。正反対の二人。
そして、この頃禁酒になっていたアブサン、ここにも登場です。

パーティーを抜け出し湖に行くギュンター、ハンス、ヒルデ。ハンスを挟んだ兄と妹はそれぞれハンスにキスをするのですが、いつの間にかハンスとヒルデが抱き合う。それを切なそうに見つめその場を去るギュンター。
(この兄妹、ハンスを通して近親相姦的な気持ちを持っているのではないかと)
エリもパウルに、「ヒルデに夢中でも良いから貴方と寝たい」と直接誘います。二人は森の小屋で初めての行為に及ぶのです。

夜が明け、パーティーは夢の後。
小屋から帰ったパウルは、憔悴しきって涙を流すギュンターを見て、ハンスと何かがあったと察します。殴りかかるパウル。約束のひとつを実行しました。

シェラー家に戻ってきた4人。
食事をしたいと言うハンス。キッチンへ向かうギュンターとヒルデ。ギュンターは、「パウルにもっと優しくしろ、彼は良い奴だ。ちゃんと付き合え。俺はハンスとやり直す」と言いますが、「私に押し付けないで」と言い返し、寝ると言って部屋へ行ってしまいます。

夜、楽しそうにふざけ合うギュンターとハンス。パウルはそれを見ています。
トイレに行くと言って、その場から居なくなるハンスは、こっそりとヒルデの部屋へ入って行ったのです。
戻って来ないハンスに苛立つギュンター。
「幸せの絶頂は、今か」
人生の中で最高の時に、最高のものを求める。愛する人を失うのなら、愛している人と一緒に死ぬ…

次の日の朝、いよいよ契約が実行される時がきました。ギュンターとパウルは、嘘偽りない「遺書」を書きます。
しかし、パウルはその時になって、「自分は出来ない、家に帰る」と怯み言いますが、ギュンターは「もう遅い」

服装を整え、ヒルデの部屋へ銃を持っていくギュンター。
ヒルデは、ハンスは帰った、と言いますがギュンターは信じません。そう、ハンスはカーテンの影に隠れていました。
見つけたギュンター、躊躇なくハンスを撃つ。一発、また一発。
音に気付き部屋へ駆け寄るヒルデと彼女を迎えに来ていたエリを阻止し、ドアの鍵を閉めたのはパウルでした。
部屋にはギュンター、ハンス、そしてパウル…
崩れ落ち、息絶えるハンスを見て、ギュンターも自らこめかみを撃ち抜きました。

愛する者と、愛される者。
ギュンターが何故、それ程にハンスに執着していたのか分かりません。映画はたった3日間の出来事を描いて居るだけだからです。
 彼らは当時、18~19歳。ヒルデに至ってはまだ15歳です。
一番美しい瞬間に時間を止めたい、と思うのは解ります。デカダンス的な思想も。
ギュンターが、拳銃に執着していたように。
彼は、この鉄の道具が自分の分身のように思っていたのかもしれません。

「若さとは、ワインを飲まずに酔っているような状態なのだ」とゲーテは言いました。
確かに、早熟な知性と教養、哲学的な思考はこの時代の若者ならでは、と考えてしまいます。

その後のパウルは、この出来事をを本にしナチスから目を付けられアメリカへ亡命、ヒルデは魔女狩りにあい図書館司書としてひっそり暮らす事に、エリは一生結婚しませんでした。
それぞれ孤独な人生を送ることになったのです。
決して自殺や殺人を肯定している訳ではありませんが、一番幸せだったのはギュンターなのかも…と考えてしまいます。
愛する人を自分自身で手にかけ、そしてその人の側に永遠に居られる事となったから。

この事件、この映画で3度目の映画化になります。
その度に、高評化を受けているそうです。
たった3日間の出来事が、その後の一生を決めてしまう、尊く崇高な忘れられない日になったのです。
若さゆえの暴走、だけとは言えない奥深い作品です。