タイトル「雪割草」

 

白(私があの子と初めて出会ったのは今から数年前の事だった)

SEドアをノックする音

白「はーい」

み「し、失礼いたします!」

SEドアが開く音

み「は、はじめまして!私、白雪みしろと申します!」

白「あら…貴女が今日から私の新しいメイドさん?」

み「はい!未熟者ですが、誠心誠意おちゅ…!お仕えさせて頂きます!」

白「フフッ…緊張しないで。これからよろしくね、みしろさん」

み「よ、よろしくお願いします!巴お嬢様!」

白「それじゃあ、早速で悪いんだけれど、紅茶を頂けないかしら?」

み「はい只今!ご用意してきま…キャッ!」

SE転ぶ音

み「いたた…」

白「あ、あらあら…大丈夫?みしろさん」

み「は、はい…なんとか…」

白「気を付けてね?慌てなくても大丈夫だから」

み「すみません、ありがとうございます…では、ご用意してきます」

SEドアが閉まる音

白(本当に大丈夫かしら…少し心配ね…)



み(これが私と巴お嬢様との出会い)

白(その後の彼女の働きはというと…)

み(お茶を運ぶ時にまた転んで床にこぼしたり、掃除中にお部屋の家具を壊してしまったり…
  巴お嬢様にこぼしたお茶がかかったこともありましたし…
  あまりいい働きは出来てませんでした…)

白(私の心配が当たる形になってしまって、失敗を重ねるみしろさんからは
  段々と元気が無くなっていくのが見て取れたわ…)

み(こんはずじゃなかったのに、と何度も心の中で思いました。
  何よりお仕えする巴お嬢様に粗相してしまうのがとても心苦しかったです)

白(そんなみしろさんを見かねた私は、ある日1つ提案をしたわ)

み「ピクニック…ですか?」

白「ええ。最近外に出ていないし天気も良い事だし。
  それに最近働きづめのみしろさんのリフレッシュも兼ねて…どうかしら?」

み「わ、私の!?そんな恐れ多いです…!」

白「えー…でも…」

み「お出かけでしたら、他の方に付き添うよう伝えてきますね!では、さっそく…」

白「待ちなさい」

み「巴、お嬢様…?急に私の手を…」

白「あなたは私のメイドよ?主の言う事が聞けないの?」

み「そ、そのようなことは…!ですが…」

白「ですが?」

み「私のような至らぬメイドに気をかけていただく事はありません。
  それよりも今は仕事をこなして、お嬢様のお役に…!」

白「私は!…私は貴女と出かけたいの、みしろさん。貴女が良いの」

み「っ…!………わ、私でよろしければ、お供、いたします」

白「ありがとう、みしろさん。ごめんなさいね、急に手を掴んだりして」

み「い、いえ!では、準備してきますので。一度失礼いたします」

白「ええ、お願いね」


白(それから数時間後)


白「さあ、着いたわ」

み「わぁ…お屋敷近くの野山にこんな場所が…」

み(私の目に飛び込んできたのは、様々な植物が生い茂り、花々が咲き誇る様子だった)

白「良い所でしょう?空気も澄んでいて、辺りには花が咲いていて」

み「はい…!とても良い所です…!!」

白「…ねぇ、みしろさん」

み「はい?」

白「最近のあなたは本当に頑張っているわ。それこそ十分なほどに」

み「で、ですが、失敗してばかりですし…」

白「失敗なんてあって当然だもの。完璧に物事をなす事は難しいわ」

み「…」

白「でも貴女は誠心誠意、私に尽くしてくれている。それだけでうれしいの。
  いつもありがとう、みしろさん」

み「っ!勿体ない、お言葉です…。ですが…ありがとう、ございます。
  巴お嬢様」

白「うん…。あ、見て、みしろさん」

み「はい?わぁ…小さくて真っ白で…すごく可愛い…」

白「これ、なんの花か分かる?」

み「え、えっとぉ……」

白「これはね、雪割草。冬を耐え、春に花を咲かすの」

み「雪割草…」

白「そしてこの雪割草の花言葉は''自信''
  今は厳しい冬かもしれないけど、この雪割草みたいにきっと綺麗な
  白い花を咲かす事が、あなたなら出来るわ、みしろさん。
  だから、自信を持って頂戴」

み「巴、お嬢様…ありがとう…ございます……」

白「あらあら…涙で可愛い顔が大変よ?」

み「お嬢様が泣かせたんじゃないですかぁ…!」

白「フフ…ごめんなさいね。よしよし…」


み(それからしばらく、私は涙が止まら無かった。
  その間巴お嬢様はずっと私を撫でてくれていた)

白(この時から、みしろさんは人が変わったようだった。仕事はテキパキと
  こなすようになったし、失敗することも大きく減り、見違えるほどに成長して…)


白「そして今に至る、と…」

み「何か仰いましたか?」

白「ちょっと昔の事を、ね。この雪割草を見てたら思い出したのよ」

み「ああ…懐かしいですね。あの時の私はすごく未熟でしたから…」

白「それが今は、超が付くほどの一流メイドだものね」

み「それは流石に言いすぎです…」

白「そうかしら?そんな事無いと思うけれど…」

み「言いすぎですよ…。ですが、あの時の事は本当に感謝しています。
  きっとあの時、巴お嬢様の言葉が無ければ、きっと私は…
  なので、本当にありがとうございます!巴お嬢様!」

白「め、面と向かって言われると流石に照れるわね…
  けど…」

み「お嬢様?急に私の手を握られて……お顔が、近い、です」

白「お礼を言うのは私の方よ。ずっと私に仕えてくれて、支えてくれて本当に
  ありがとうね。貴女は私にとって最高のメイドよ、みしろさん…」

み「お嬢様…。あ、ありがとうございます…!
  あ、あー、私しなきゃいけない事がありましたので、一度失礼します!
  何かありましたら、お呼びください!では!」

白「あ…あんなに早足で…フフッ、あの照れた顔…本当に可愛い子ね」

白(あの時、みしろさんには言わなかったけれど
  雪割草には花言葉がもう1つあるの。それは''はにかみ屋''
  初めて会った時から、お礼を伝える度に見せてくれた、とても可愛い
  照れた笑顔。それを曇らせたくは無かったから、あの場所に
  私は彼女を誘い、言葉を伝えた。その後の頑張りはとてもよく知っているわ。
  雪割草のように白く小さいけれど、はにかんだ笑顔が可愛くて、お仕事に
  確固たる自信を持った私の可愛い可愛いメイドさん。
  これからもよろしくね?)


  了