前回からの続き

『受容』

人は落ちるとこ迄堕ちると、這い上がる他なくなり
私はまだ生きたい、という気持ちが強かったのでしょうか?
ようやくそこで標準治療を受ける決心ができたのです。
以前の私は自分の乳がんの進行状態を知るのが怖く、避けて
ました。自分の体だから何と無く進行しているのは分かって
いるけれど、事実を知ることを拒否してました。
それは自分が乳がんであることを受け入れられず、
『乳がんである私から逃げていた』だけで
私が代替治療へ走った理由の一つに、このことが大きく
影響していたと今では思ってます。

がんを受容することは、死を受容することと大きな違いが
あるかもしれません。その先に待っているのは、
生きる希望、かもしれないし、死でもあり、
私は乳がんを受容することにより、あんなに拒否していた
抗がん剤の治療を受ける覚悟ができました。
自分の病状の進行を知ることを恐れず、受け入れられる
ことができました。

右鎖骨、頸部、左腋下のリンパ節転移、左乳房転移
していたけれど、深刻な臓器転移はなく、その後の治療の
抗がん剤の副作用は軽く、治療効果は1年足らずだったけれど
私にはいい仕事をしてくれました。

抗がん剤の治療を受け入れることは、私にはその道しか選ぶ
ことはできず、ある意味ジタバタしても仕方が無い
そんな心境だったのでしょう。
治療を恐れず受け入れたことも、良い結果を導いたのかも
しれません。今はホルモン治療だけですが、がん細胞を
上手く抑えてくれてます。
いつかこの治療も効かなくなる時がくるかもしれません。
でもまだ次の手はあります。

完治は望めなくとも、お互いを生かさず殺さず、がんとの共存
長生きはできないと思ってますが、すぐ先に死があるわけでも
ありません。治療薬も研究も日進月歩で進んでいます。
『生きていれば何とかなるさ』今はそんな心境です。

訪れた病院でがんの告知を受けた時、患者側は自身ががんで
あることを受け入れ難いものです。
全ての患者がそうではないけれど、少なくとも否定したく
逃げたくなる、私はそういう患者でした。
そして乳がんは、同時に乳房を全摘しなければならない現実も
あるかもしれず、この受け入れ難い現実も重なり耳を塞ぎたく
なる。そんな時、これからの治療は、手術は、抗がん剤は
そう医師から言われても聞きたくない。

私が知っている病院から離れていった人達は、結果無治療に
なった人達は、そんな心境で、患者に向き合おうとせず
ひたすらモニターを見続ける医師、乳房の全摘を冷たく
言い渡す医師に出会ったと聞いてます。

世の中には標準治療がどんなに悪いのか、抗がん剤はと
多くの情報は飛び交っています。
代替治療は副作用がないからいい。私はこれでがんを
克服したと、そういう話に耳を傾けることもあります。

無治療を選択しても、代替治療でも、たとえ標準治療でも
逃避から選んだ選択は、後に大きな後悔を伴うかもしれず
もしあの時と、選択しなかった未来を思うのかも
しれません。だからこそ受容は大切だと思う。
受容は治療の一部、なのかもしれない。

全て医師の対応が悪いわけではなく、ただ治療を始める前に
がんを受け入れる時間があればいいと思う。
どんなに助言があったとしても、こればかりは人に
頼るわけにいかず、自分自身で解決するしかないけれど

そして
そういう患者もいるということを、目の前にいる患者は
そういう心境にいるかもしれないと
医師には理解して受け入れて欲しいと思う。





ぴょん『ガォォ~、じゃなくてアクビだにゃん』





ぴょん『安眠ちゅう~』