こんにちは。

文学の「ぶ」の字の断片に、作詞という手法で少し関わっているRAMIです。

文学者の足元にも及ばない、まだまだ「言葉」という花に出会えていないと心底感じています。


何故、そう思ったのか。

それは、この本に出会う前から思っていた事ではありますが、更にそう思わせてくれた作品を紹介させて下さい。



「あなたのための短歌集」 木下龍也先生の本です。


私は、本を読むのが本当に苦手です。

「読むことが出来ない」と言ってもいいくらい、文字を読み続けることが出来ません。

目が追いつかず、脳がシャットダウンさせてくる感覚です。


そんな私でも、ごく稀に、私の人生を変えるほどの本に出会うことがあります。

それは、ここまで生きてきた人生で2度、ありました。


1度目は、学生の頃に出会った「LOVE BOOK」廣瀬裕子先生の本。

読書感想文を原稿用紙17枚書いたほどです。

正直、もっと書けました。でも、やめました。何故か。

「感想文が終わらない」と実感したからです。


2度目は、先日出会った「あなたのための短歌集」。

今回も前回と同じ、「終わらない」と思うので、感想は程々にしようと思います。

程々になることを祈ります。



私が人生を変えるほどの本に出会う瞬間には「共通項」

があります。

1度目でも感じたことでしたが、それは


「人が本を選ぶのではなく、本が読む人を選ぶ」

ということ。


2度目もやはり、そうでありました。

私は、この本に吸い寄せられるように、惹かれるように手に取りました。

「本に呼ばれた」と言う方が正しいかもしれません。


私は探していました。

私の人生を変えるほどのものを。

ただ、見つかりませんでした。

もしかしたら近くにあったのかもしれない。

でも、私は見つけられなかった。

それは「出会わなかった」ということと同じです。


私は母を、自殺というあまりにも無慈悲な夜に亡くし、私の心は真っ黒に染まっていきました。

それまでの私はきっと、太陽みたいに明るかったはず。

でも、それは母が太陽のような存在で、私はその光を受けた月でしかない、だが満月であり、太陽のように煌めいていました。


その太陽を失った私は、その日から新月と成り果てました。

確かにそこに存在しているのに、暗くて見えない新月。

それが、今の私です。


幾重にも思いました。

太陽に近づき、光を浴び、また満月になりたいと。

それは、自らの命と引き換えに母を追い、母の元へ逝き、私自身も「星」になるということ。


でも、それはあまりにも大罪。

遺された人の気持ちは、私には痛いほど分かるのです。

哀しみを遺り人に思わせ続ける母は、永遠なる大罪人。

神様のご慈悲がなければ、許されざることでしょう。


そんな母が私に遺したのは、「重み」でした。

作詞にもしましたが、

「鈍く圧し掛かる 重みを一途に抱いて」

この重みが一体何なのか、でも確実に私の胸の中にある重み。

この正体を、私は知りたいと思っていました。


その答えが、この「あなたのための短歌集」084に記載されていました。



死者たちは重石をくれる

大切なあなたが追ってこないように、と



私はこの一文に出会うために、この本に呼ばれたのだと確信したと同時に、この胸の中にある重みは、母がくれた「重石」だったのだと知りました。

気付けば、私は溢れる程、涙を流していました。


この胸の中に重石がある限り、私は母を追ってはいけない。

そして、その重石を一途に抱きしめ、生き続けなければならない。

更に、私は日々感じる母への想いを歌い続けなければならない。


その内容は、愛溢れるものであろうと、怒りであろうと、哀しみであろうと、何だっていいのです。

そこに母への想いがあるなら、それを書き続け、歌うことが私の人生に課せられたことなのですから。


もし、私が母を追ってしまったのなら、私が自らその重石を捨てるということ。

軽くなる私は、ふわりと空へ還るのです。


でも、その重石には色々な記憶や景色、思い出が詰まっているのです。

素敵な経験でも、例え、嫌な経験でも。

捨ててはならないものだと自覚しています。


ただ、母に会いたい気持ちがあるのも事実。

私はこれからも、この重石を捨てないよう努力し、生き永らえなければなりません。

それは、とても辛いことです。

母に会うこと。

母の声を聞くこと。

母と触れること。

これらを、諦めるということなのです。


重石を捨てそうになる時もあります。

その都度、私は闘いをしています。

重石は、とても重い。

思い出の分だけ重いのです。

それを抱え、歩き、走り、歌うことは、とても体と心に負担をかけています。

生きるのを辞めたくなるのは、当然なのです。


でも、その当然を当然としてはならない。

なぜなら。

母から、私が追わないようにと重石を託されたからです。

だから、私は生きなければならない。

そのことを教えてくれた、そして私の人生を指し示してくれた「あなたのための短歌集」には、感謝の言葉しかありません。


この本は、裏表紙にも書いてありますが、


「あなたのための短歌1首」

依頼者から想い(お題)をもとに短歌をつくり、封書にして届けられ、

4年間で生まれた700首から、100首を収録されたもので、100人の100のお題とともに「あなたのための短歌」がまとめられた本となっています。


あらゆる人々の悩みを短歌で応え、あらゆる人々の心の拠り所となる短歌集になります。

他にも沢山の素敵な1首がありました。

たった1首でも誰かの心に刺さるのならば、この本が存在している価値がそこにあります。


悩みを抱えていない人は少ない。

悩みを抱えている人の方が圧倒的に多いです。


この感想文を読んでいるあなたも、もしかするとこの本に載せられている1首に救われるかもしれません。

人生観が変わるかもしれません。

価値観が変わるかもしれません。

知らなかった景色を知ることが出来るかもしれません。

知りたかった答えを見つけられるかもしれません。



私のように。


RAMI