ドラマ街の劇場。 | デュアンの夜更かし

デュアンの夜更かし

日記のようなことはあまり書かないつもり。

 9月22日(火)

 朝すこし早めに起床し、今日もまた旅行の支度に励んだ。何かにつけて目前、切羽詰まってからようやく取りかかるのは今回もまた然りで、直すには今回が良い機会だったのでは、と今さら思ったりもしてしまう。だけどひとつ自分に言い訳をするなら、こういうのは往々にして、いくら支度に余念なく取り組んだとしても心配というのは最後まで消えることはないものだと思うのだ。これは後に登場する旅慣れた友人をしてそう言わせるのだから、おそらくほんとうだ。ただ、明らかに準備に不備がある状態を置き去りにしても、ほどなくボクはあそびに出かけてしまうという体たらくだ。まったくいただけない。

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 友人と合流する前にまずは単身、街へ出て最後の必要物資の買い出しなどを済ませる。そして午後、およそ半年ぶりとなる貴重なとても気の合う友人との再会を果たした。昨日述べたが、名目は「観劇」だ。ボクの大好きな作家さんの、大好きな作品がこの度音楽劇として生まれ変わった。それだけでも十分に観るに値するのにも関わらず、演出家がこれまたお気に入りの人で(というか他にあまり知らないというのもある)、ヒロインを務める人もこれまた大好きな歌い手さんで、しかもこれが舞台デビューとなる記念公演に立ち会えたというテレビ・ショッピング顔負けのオマケ付きなのだ。もちろんヒロインだけではなく、演者陣は素敵な人ばかりだ。開演は17時半なのだけれどもボクらは早々と合流し、その間たくさん積もる話よもやま話に華を咲かせてげらげらと笑った。後にこれが今日の反省点となることをまだボクらは知らない。

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 友人はこの春から社会人として立派に働いている。それも、我が人脈の中ではなかなか専門的な業種、ボクが自慢できてしまえるような職種だ。それはボクの足りない頭でのイメージではかなりハードな仕事だと思っていたのだけれど、その友人がいろいろと聞かせてくれる話は、そんなイメージを再構築せねばならないようなたのしいもの。きっと、いや絶対にだ、そんな話の通りの仕事であるはずはないのだが、そんなふうに聞こえるような話し方、そここそがその友人の素晴らしいところだと思ってい、たのしいたのしいと思いながらもひそかに尊敬というのか、嫉妬というのか、刺激――コレだ、を受けている。確実に半年前から一皮も二皮もむけており、自分では「年老いたと感じる」と言っていたがとんでもない、魅力(適切な言葉が見当たらない)は格段に増しており、仮にそれが「年老いた」だとしたら、そのくらい年老いることは良いもの以外の何ものでもないと思った。

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 そうこうしているうちに間もなく開場の時間が近づき、ボクらは劇場に向かった。意外だったのが、老若男女、とにかく年齢層が幅広く、とりわけ「老」がこれまでの観劇の中では多く目につくものだった。開演するとなるほどそれは「音楽劇」で、要所要所で音楽は物語の展開を彩る。敬愛するものには容易く屈服するボクは、「たしかにこれは“ミュージカル”というよりは“音楽劇”だ!」とすっかりトリツカレてしまった。

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 原作を来るまでの電車内で再読し、しっかり把握しているボクはどうしてもお芝居と原作を比べてしまった。原作を舞台化するのは無理があるようで、多少の変更はなされていたものの、「敬愛するものには~」と述べた自分だ、当然こちらもまた愛すべきもので、音楽と共に大いにたのしんだ。しかし、だ。それまでの友人との長時間のおしゃべりで少々疲弊してしまっていたところに、心地よい音楽が合わさってしまうと、ついうとうととしてしまいそうになったのだ。それは友人とて同じ。途中の15分休憩で冷たい飲み物で目を覚ましたけれど、やはりそれは後半も拭えなかった。裏を返せば、それだけ音楽が、お芝居が素晴らしかったということ。ほんとうにプロの生歌生演奏は圧巻の一言だった。今日この回が千秋楽だったようで、いっそう華やかだったカーテンコールについても書きたいところだがそれは割愛させていただく。一言だけ書くとすれば、舞台のひとつ醍醐味はカーテンコールにある、ということだ。

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 最後の最後にオマケがもうひとつあったようで、ホールを出たところすぐで、その原作者、ボクの大好きな作家さんがぽつんと立っているのを発見したのだ。以前一度会いにいった際は緊張してほとんど何も言えなかったのだが、今回はあまりにも突然のこと、緊張などしている暇はなく気づけばその人の前に足を踏みだし、馴れ馴れしく「こんばんは」とあいさつしては、握手を求めてしまっていた。その人らしい素敵な振る舞いで応じてくれて、友人に笑顔で迎えられるとようやく緊張が追いついてきたのだった。

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 それから晩ごはんを食べに行き(とんかつ残してしまった! ごめんなさい!)、申し訳ないことに友人を、ばたばたとした帰宅につき合わせてしまった。こちとら旅行の準備ができとらんのだ。そうして帰ってきたわけだが、準備も完成させないで今こうしてお風呂も入らずブログを書いている。日付けはもう出発の日。だけど、今日のぶんはやはりきちんと書いておきたかったのだ。間もなく書き終え次第、今日は読み直す前に更新して、すばやく入浴して、眠る、いやちがった、支度をしようと思う。どたばたしているわけです。