臨戦状態で戦に出ます。 | デュアンの夜更かし

デュアンの夜更かし

日記のようなことはあまり書かないつもり。

 5月29日(金)

 どんな世界においてもプロはすごいと思う。どの面を挙げてすごいというのかはいくらでも言えるのだが、今日はある面に関して改めてすごいと思った。それは、「テンションの持っていき方」。来たる勝負の日に合わせて気持ちを高めていき、ちょうどその日にピークが来るようにする、できる。それがプロたる所以(ゆえん)のひとつだろう。そう考えると、今回の新型インフルエンザの影響で公演が急遽延期になった歌手の人は、さぞずっこける思いをしたことだろう。「当日に向けて気を張ってきたのに…」と。「またせなあかんのかい…」と。そんなニュースをワイドショーで見たときは大してなんとも思わなかったが、実は素人が思っているよりもずっとずっとデリケートな問題なのだろう。

 プロでなくとも日常を生きていれば、ときにはある瞬間に向けてテンションをうまく持っていかなくてはならない場面というのはある。「そういうモードになる」というのか「そういう自分を演じる」というのか、ニュアンスは人それぞれ微妙にちがうことだろうが、高めた自分を出す必要がある場面というものが。

 ボクはふだん特に何の緊張もなくのうのうと生きているからか、ときどき訪れる必要な場面において、その「テンションを持っていく」というのがすこし下手くそだ。緩和した毎日ばかりであるためか、突然の緊張の場面が来ると、そこに持っていくまでの助走がとにかく長いと思われる。そのためものすごくしんどいことが事前に手にとるように分かり、面倒くさがって「のうのうモード」のまま臨み、あえなく撃沈、というみっともない事例は過去にいくつかある。この場合の緊張と緩和は悪しきものであり、絶えず張りつめておく必要はないまでも、もうすこし、それこそハリのある生活にしていれば、いざというときに困ることも今よりはぐんと減る。そんな「高めた自分」を意識しながら生活する人の行きつく先が、いわゆる一流の人であり(もちろんきちんと能力が高いのは大前提)、彼らにはゆるゆるだと感じられるところは本当にない。何も日本規模や世界規模で一流の人に限らず、身の回りにいる、自分が「一流だなぁ」と感じる人とてそれは同じ。その人にとってはおそらく緩和している状態でも、それはきっとこちらから見れば十分にイケている。そんなこんなで、一流の人は生き様が一流。生き様がプロ。そんなふうに常にかっちょいいイキフンをビンビン発している人間に自分もなりたいかとなればそれは考えものだが、フラットの状態でも少々のことなら十分臨戦状態であるというのにはとても憧れる。

 今日ボクは「テンションを持っていく」ということをすこし意識してみた。移動中の時間を使って自分を高めてみた。そして着く頃にはなかなか武装の整った臨戦態勢の自分をつくりだすことができたとは思う。だけど、そういう自分が必要なときというのは、相手があることがほとんどで、相手によってペースを乱されることだってある。結果的に自分を高める苦労に見合うほどは上手くいかなかったというのが正直なところだが、テンションを高めて上手くピークをぶつけることの重要性を知った気がした。それはこれまであまり意識せずにきたこと。だいぶ骨の折れることだけれど、自分を臨戦状態に持っていく術はぜひとも心得ておきたい。