宇宙と興味は膨張をつづける。 | デュアンの夜更かし

デュアンの夜更かし

日記のようなことはあまり書かないつもり。

 3月16日(月)

 最近のマイブームは星だ。この度の星との出会いは、昨夏からはじまった深夜ジョギングの際、ふと見上げて目に飛び込んできた星空に柄にもなく胸が震えた瞬間だった。とは言え当時は天文関係についてほとんど無知無学であったため、星座を正しく捉えることなどできもせず、ひときわ輝く星々を、でたらめにつないで勝手に自分の星座をつくってはたのしみ、段差に蹴躓(けつまず)いていた。

 しかしそれにも限界を感じはじめた秋も深まる頃、せっかくだから少し勉強しようと大学の図書館から目ぼしい本を借り漁り、それからしばし机上の妄想天体観測に精を出した。それで頭では星座の位置関係や神話の登場人物の姿、見頃な時間帯等々は理解したつもりでも、いざ外に飛び出してみると、すぐに宇宙の迷子になっていた。机の上ではあれほど仲良くなれていたおうし座も、それを構成する星以外の星が周りに多すぎて、正しいおうし座とは出会えず終わる夜の連続だった。宇宙には、星座になれなかった星の方が圧倒的に多いと知ったのもちょうどその頃だ。

 そしてやがて冬になった。ボクの暮らす町はまちがっても都会とは言えない。すぐ近くには田んぼだってある。それでも、人々がふつうに生活を営み、たくさん店もあるここは人工的な灯りにあふれ、夜が明るい。だから、見える星もずいぶん限られてくる。それでも冬になると空気がきらきらと澄み、星はこれまでの季節よりもきれいにはっきりと見えるようになった。毎晩外に出るのがたのしみだった。毎晩外に出て見上げると、いつも真上にオリオン座が堂々と張り付いていた。全天で最も整った形(とボクは思っている)のこの星座、そこにはじめて巨人オリオンの姿を見ることができた日は、おもわず走るのをやめて、コースの半分以上を、見上げてぽかんと口を開けたままとぼとぼ歩いてしまった。その日を境におおいぬ座、こいぬ座、おうし座などなど、難易度の高くない星座を見つけては何ら変化のないそれらを延々と眺めていた。以前に比べると知識はついた。だけど、今、本当に正確な星をつないで星座を認められているのかと問われれば、実は少し怪しい。それでも自信たっぷりに探し出し、悦に入ることができているのはきっと、ひとつも間違いなく星を見つけることがいちばん大切なことではない、と思うことができたからだろう。少しでもお近づきになろうと勉強して星を見る姿勢こそが大切なことだと思う。

 結局今でも、勉強不足を棚に上げて、夜が明るいからと言い訳して宇宙で迷子になるとすぐに自分の星座を作りはじめる。当初の自分と何も変わっていない。でも少しちがうのは、もっと星について知りたいという興味がわいたこと、もっと星がきれいに見えるところに行ってみたいと好奇心が生まれたこと、自分の知らないことを知りたいと思えたこと。

 星は毎日毎日少しずつ位置を変えている。同じ時間に外に出ても、もうオリオンは真上にはいない。同じ時間、次にオリオンが真上に現れてくれる頃、自分はどんなふうに変わっているのだろう。

 なんだか書こうと思っていたこととずいぶんちがう内容になってしまった。