2月28日(土)
2009年は、ビリヤードと共に幕を開けたと言える。年始に幼馴染の先輩がボクをビリヤードに誘ってくれて、ビリヤードをしたいというのではなく、久しぶりにその先輩とあそべるという名目で行ってみた。初回は、キューの構え方はもちろん、力の伝わり方や転がる角度など、一切まるでわからなくて、悔しん坊のボクはひたすら苦汁を嘗める結果となった。ちっとも上手くできずに、もうやりたくないとさえ思った。
それでも次週、もしよかったらという感じで先輩がもう一度誘ってくれた。本来ならば、前回の苦い経験から「別のあそびしよう」と言ってしまっていただろうが、年明けの心機一転の空気が手伝ってか「前回の一回だけで判断するのはよくない」と優等生思考が働き、その誘いに乗らせていただいた。すると、二回目は、今思えばまぐれにまぐれが重なってなのだが、前回とは比べものにならないくらいよく球が穴に落ちていく。そこでやっと「たのしいなぁ、うまくなりたいなぁ」と思った。
それから今となっては、ほぼ毎週末、夜な夜なその先輩と何時間も黙々とビリヤードに興じている。周りでは、完全に夜行性の若手がキャアキャアやかましくはしゃいでいたり、カップルがうらやましすぎるほどたのしそうにビリヤード入門教室を開講したりするなか、ボクたちふたりは部活さながらの真剣さで、ただひたすらこつこつ撞いている。
はじめてから5回くらいは、つまり1月いっぱいはほとんど全敗だった。軽くハンディキャップをもらっても平気で負け続けていた。それが、2月になるころには、少しずつ勝てる回数が増えてきた。技や戦略、のようなものも身につきはじめた。そうなるともう夢中だ。ひどいときには寝ても覚めてもビリヤードのことばかり考えていた。
「一回だけで物事を判断してはいけない」と先ほど述べた。簡単に言ったが、今までの自分はどうしてもそれができていなかった。やってみてできそうもないと判断したらすぐにあきらめる、そしてその判断も早かった。そんな悪しき傾向にあった。だけど今回の、ちょっと我慢してビリヤードの取捨の判断を遅らせてみて、結果「手厚く保護」となった出来事はちょっとした事件だった。だから、この度の一歩は、自分の中で本当に大きな一歩となったかもしれないのだ。このようなことは、これまでも、そしてこれからもたくさんあると思う。これまでのことはもう仕方がないとして、これからは、この経験を忘れずに、そんな場面に遭遇したらちょっと我慢してみようと思った。それができれば、自分は結局、ほとんどのものをたのしんでいそうだという風に思う。そうなるとたのしいことだらけで困りそうだ。
ところで今日は土曜日、週末だ。金曜日の夜に珍しく先輩から誘いがなかったことから、そろそろ誘いの連絡がくるように思う。「今日の夜あたり行かないか」と。もちろん行く。そして今日こそもっと勝つ。でも今日は夕方あたりからなにかと用事がある。逆算して動いておかなくては。
やっぱり連絡がきた。