音楽が好きで、バンドをやっている人なら知っているかもしれません。
ベーシスト、アンソニー・ジャクソン。
ベースという楽器は、音楽に重みや深みを与える存在です。料理で言えば、まさに「出汁」。派手さはなくても、全体を支える大事な要素です。
そんな「孤高のベーシスト」との出会いは、矢野顕子さんのコンサートでした。
ギタリストがソロを取っている最中、ジャクソンは「もっと!もっと!」と全身を使って、エモーショナルなジェスチャーで煽っていました。とても真剣で、まるで音楽そのものと向き合っているような姿に圧倒されました。
「この人、本気で音楽と対話してる」と強く感じた瞬間でした。
その後、ミシェル・カミロのトリオでブルーノート福岡にも出演。
この時のリズム隊も、矢野さんの時と同じメンバーで、ドラムはクリフ・アーモンドでした。
アンソニー・ジャクソンのベースは、通常のベースよりも弦が2本多く、低音域が拡張されています。CDで聴くと少しわかりづらいのですが、初めて聴いたときは「なんだ、今の音は!?」と耳を奪われました。
今まで聴いたことのないようなグルーヴやフレーズ。それが気になって、気がつけば何度も繰り返し聴いてしまう……。中毒性があります。
とくに印象的だったのが、矢野顕子さんのアルバム『GO GIRL』に収録されている「Moon Over San Diego」。
歌が終わり、演奏が続くラストの部分で、突如として低音が多弁にうねり出す——あの瞬間には、本当にしびれました。一度聴くと、もう癖になります。
ちなみに、彼はライブのたびに毎回弦を張り替えるという、徹底したこだわりを持つプレイヤーでもあります。
矢野さんのコンサートで購入した書籍に掲載されていたインタビューでは、ラフマニノフやバディ・リッチの話も出てきました。
クラシックからジャズまで、音楽の幅がとにかく広い。
まだ聴いたことがない方は、ぜひ一度、耳を傾けてみてください。
きっと「ベース」という楽器の概念が、少し変わると思います。