著者:宮城谷昌光
発行:日本経済新聞出版 2023年
宮城谷昌光の本が好きで、春秋戦国時代の小説をいろいろ読んだ。あまりその後の時代のものは読む気がしなかったが、昔吉川英治の「三国志」を読んだなと思い出し手にとってみた。
本書は諸葛亮の若いころからの生涯を淡々と綴っている。劉備玄徳に三顧の礼で迎えられたのは、劉備47歳、諸葛亮27歳のときあった。諸葛亮の方が年上かと思っていたので、こんなに若かったのかと驚いた。また、諸葛亮は関羽、張飛と協力して魏に挑むという印象を強く持っていたが、本書では3人のかかわりがほとんど見えない。諸葛亮は益州で文官として活動する一方、本書にはほとんど描かれないが関羽や張飛は荊州で活躍している。これが実際だったのだろうか。また、天才的軍師としての印象の強い諸葛亮であるが、馬謖を起用して北伐に失敗し、その後の北伐でもめぼしい成果をあげているようには読み取れなかった。
本書を読んで、漢を再興するという点での数々の戦いの中のいくつかにおける成功を大きく取り上げた既存の諸葛亮像とは一線を画した、蜀一国の統治に腐心する等身大の諸葛亮を見ることができた。