この物語を書くにあたって、様々なラーメン店を取材し、今まで見えなかったことがハッキリと見えてきた。独自の味作りをすることがいかに大変であるかということ。そしてその味で10年、20年もの間人気店であり続ける事は至極限られた店しかなし得ていないこと。(集英社ジャンプリミックス版,p455,「私の『一杯の魂』その後」)
ラーメン漫画を大きく分けると、「フィクション」と「ノンフィクション」に分けられます。この漫画は、2002年から2004年にかけて、集英社「ビジネスジャンプ」に掲載された「ノンフィクション」のラーメン漫画です。
全3巻で、原作者はラーメン評論家の故・武内伸氏だが、作画者は、1巻が本庄敬さん、2・3巻が大泉孝之介さんになっていて、当然のことながら1巻と2巻の間で画風が変化している。変更の理由は不明だが、1話完結のスタイルなので、特に違和感はない。
各巻の中の話数は「○杯目」という形で表記している。全3巻の内容は以下の通り。
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一杯の魂-ラーメン人物伝-1
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第1巻<行列のご当人ラーメン編>
「ご当地ラーメン」に対して、職人の個性が光るラーメンを、ラー博や武内さんが「ご当人ラーメン」と呼び、2000年代前半に人気の6軒を紹介しています。
・1杯目:麺屋武蔵
武蔵の創業者、山田雄さんが新宿に店舗を構えるまでの出来事をまとめているが、武蔵のキーパーソン、佐藤吉治さんが登場しているのが珍しい。
・2杯目:柳麺ちゃぶ屋
もの作りに憧れる森住さんがラーメンの世界に踏み込み、新三河島から音羽に移転して自家製麺を始める所までを書いています。
・3杯目:ぜんや
独学で立ち上げた「ぜんや」が行列店になるまで。新横浜ラーメン博物館主催で行われた「登竜門」の様子は、武内さんが審査に加わっていた事もあり、細かく描かれています。
・4杯目:中村屋
独学で開店させた中村さんが苦心の後に味を安定させ、ZUND-BARを開店させたところまでが書かれています。
・5杯目:なんつっ亭
自らの道を決められなかった古谷さんが、修業でその道を定め、突き進んでいく様がまとめられています。
・6杯目~7杯目:支那そばや
この漫画で唯一の前後編。前編では佐野さんの若き日からラー博出店まで。後半ではラー博で出会った武内さんとの交流が描かれています。最後に描かれた「武内伸5000杯記念ラーメン」は、実際にはラー博で公開イベントとして3000円のラーメンとして予約販売されたものと思われます。
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一杯の魂-ラーメン人物伝-2
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第2巻<伝説のご当地ラーメン編>
ここでは「ご当地ラーメン」を生み出したり、発展させてきた6軒を紹介。
・1杯目:東京荻窪・春木屋
若き日の武内さんが聞いた「春木屋理論」、常に美味しいと言われるラーメンとは何かを探した今村さんの奮闘記です。
・2杯目;東京池袋・大勝軒
「つけ麺」を考案した山岸一雄さんの半生がまとめられています。旧東池袋大勝軒が閉店する前の時代です。
・3杯目:飛騨高山・まさごそば
年越しそばに中華そばを食べる高山市。その文化を作った坂口時宗さんがその味を作り、「まさごそば」を構えるまでを紹介しています。
・4杯目:純連・すみれ
主婦からラーメン店主に、そして「客から逃げる店」という都市伝説を作った村中明子さん。息子二人に店を任せた後、新琴似に「らーめんの駅」を開店させた所までが描かれています。
・5杯目:とら食堂
白河ラーメンの人気店の二代目、竹井和之さんの苦悩と努力、そして隆盛への道。
・6杯目:井出商店
和歌山ラーメンの人気店を立ち上げた母親と、それを支えて継いだ二代目の物語。この頃の井出商店はデマによる批判がされていた時期で、それを払拭すべく武内さんが動いた話もまとめられています。
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一杯の魂-ラーメン人物伝-3
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第3巻<情熱のラーメンドリーム編>
大企業になったり、イベントを成功させるなど、「ラーメンドリーム」を叶えた5軒と、超有名な1社が登場します。
・1杯目:大砲ラーメン
久留米ラーメンの人気店の二代目、香月均さんの半生と、ラーメンで描いた「久留米ラーメンフェスタ」への道のり。
・2杯目:むつみ屋
人との繋がりを経て、波乱万丈を乗り越えていった竹さんの物語。中国「頂新」と提携した所でハッピーエンド。
・3杯目:天下一品
他にないこってりスープを生み出しながら、大胆不敵な店舗展開も進めた木村社長の一代記。
・4杯目:マメさん・丸豆岡田製麺
函館の製麺屋の二代目が、屋台店主との交流で出店。ラー博への出店後に地元に凱旋出店し、麺にもこだわり続ける岡田さん。
・5杯目:博多一風堂
博多から豚骨ラーメンの新世代を生み出した河原成美。「博多一風堂」が徐々に店舗を増やした頃までをまとめています。
・6杯目:日清食品
最後に、世界最大のラーメン企業「日清食品」。チキンラーメンを発明した安藤百福さんの半生を紹介。
冒頭の引用部は、単行本発売の翌年にコンビニで発売されたペーパーバックの「ジャンプリミックス」版にて、あとがきにかえて書かれた武内伸さんの文章から。
この連載に関して、やはり故人になられた北島秀一さんから聞いた事がありました。漫画が好きで漫画家を目指していた事もあった武内さんは、作画者に漫画の書き割りをラフで書いたネームの状態で渡していたとの事。この話の裏は取れていませんが、武内さんが本気でラーメンを愛して、そこに迫ろうとした事は、全3巻の各話の気迫からも感じ取ることができます。機会があったら読んでみてください。



