しかし、店のおいちゃん、おばちゃんたちもまた幸福なのだ。家族以外のたくさんの息子・娘に囲まれ、その柔和さによって商いを続け、まさに地の塩として味わわれてきた。このキリストの教えを知らなくても、おばちゃんらは自分のうちに確かな塩を持っている。(p235)

 

 「安くて旨くて腹いっぱい」のB級グルメの恩恵を一番受けるのが、食べ盛り世代。大学では、「慶大=ラーメン二郎」、「早大=メルシー」、「亜細亜大=珍珍亭」など、近くにあるラーメン店が現役生・OBによって語られて、人気店になった例は少なくない。
 

 この本は、いわばその「高校版」。『名門高校人脈』(光文社新書)を著した著者による「高校別B級グルメ案内本」と言える。全国88の高校の近辺にある、「生徒がよく行く店」「OBの思い出の店」をレポート。詳細に紹介した店の他、囲み記事で短く紹介した店も。学生好みの店という事で、ボリューム系の店や濃厚な味付けの店が多く、ラーメン店や中華屋は50軒以上紹介されている。


 この本の課題としては、首都圏以外のエリアは飛び飛びになっている事。これは著者も「はじめに」で断っているが、首都圏以外は他の取材の合間に訪れたとの事。また、それぞれの高校の味を紹介する人の世代がばらばらなので、早実では移転前の早稲田の店舗が紹介されていたりする。私の出身校である県立船橋高校の項では「ラーメンかいざん」が登場していたが、逆に私が通っていた頃はまだ店がなかったから実感がなかったりします。女子校の話は5校(女子学院、桐朋女子、フェリス、宇都宮女子、神戸女学院)だけですが。「買い食い禁止」が多いから仕方ないか。


 登場する店のほとんどは個人店で、高校生との密な交流や学割サービス、ボリューム感やパワフルな味付けが本書の主題になっている。それだけに、代替わりせずに閉店する店も少なくなく、閉店した思い出のお店も囲み記事で紹介していたりするが、出版後に閉店した店もあります。


 近年、「町中華」が話題ですが、どの町にも普通に存在している「町中華」を、しらみ潰しに行くのは大変。この本に登場したお店は、少なくとも近隣の高校生に愛され、名物メニューがあったりするので、この本に出てきた店を追いかけてみるのも面白いかな、と思っています。


 以下、本書で紹介された店のうち、ラーメンが提供されている店です。文中でラーメンについて語られていない店もありますが。また、県立会津高校の項では、同校OBのラーメン評論家、大崎裕史さんと会って話した時の話が出てきます。

【東京都】
麻布@広尾:新香飯店
駒場東邦@池尻大橋:苗場
早稲田@早稲田:メルシー
早実@早稲田:西北亭
明大中野@東中野:十番・大盛軒
中大附属@小金井:ラーメンショップ椿・たちばな家・次男坊
青山学院@渋谷:精陽軒
法政大学高@吉祥寺:みんみん
都立新宿@新宿:石の家
都立青山@青山一丁目:元祖札幌や
都立大泉@大泉学園:たつみ本店・だんだん
都立白鴎@新御徒町:とりそば若松
都立上野@上野:オトメ
都立武蔵@武蔵境:東大楼・丸幸
筑波大駒場@駒場東大前:中華井上

【神奈川県】
横浜翠嵐@横浜:龍味・大雄
県立湘南@藤沢:古久家・ハルピン
慶應義塾@日吉:らすた・中華麺飯太楼
法政二高@武蔵小杉:天下一・ラーメン丸仙

【埼玉県】
県立浦和@北浦和:仙龍・娘々・丸福
県立大宮@大宮:上海楼
県立川越@本川越:頑者・餃子菜館大八

【千葉県】
東葛飾@柏:都来
県立船橋@東船橋:ラーメンかいざん
私立市川@本八幡:中華料理若松

【栃木県】
宇都宮女子@宇都宮:オギノラーメン

【茨城県】
水戸第一@水戸:中華園珍満・あじ平・中華そばすずき

【群馬県】
県立前橋@前橋:桂林

【宮城県】
仙台第一@連坊:ラーメンハウスれんぼー
仙台第二@広瀬通:北京餃子

【岩手県】
盛岡第一@盛岡:白龍

【福島県】
県立安積@郡山:ますや本店
県立会津@会津若松:マルキ食堂・一風亭

【新潟県】
県立新潟@新潟:らーめん亭にしやま

【長野県】
野沢北@佐久:頓珍館
県立上田@上田:日昌亭
県立長野@長野:みそ家

【愛知県】
県立旭丘@大曾根:高橋飯店

【福岡県】
県立福岡@千代県庁口:博多ラーメンはかたや
県立明善@久留米:沖食堂
久留米大附設@久留米:光華楼

【宮崎県】
宮崎大宮@宮崎:栄養軒