もともとはちきりん女史の釣りエントリーだったのが、何故か罪山罰太郎氏に遊爆しており、とても微妙だったので、ちょっとした反論など。
児童虐待を減らす為に
http://d.hatena.ne.jp/tsumiyama/20100802/p1
罪山氏指摘の対応バイアス(attribution error)については、それが成立する基本的条件や平行条件が明確じゃないので、政策論争としては片手落ちだろうと私は思うのだが、以下分かりやすく書こうと努力する。
いきなり「1. 混ぜるな危険! 個人(ミクロ)と社会(マクロ)」から「2. 虐待を誘発するもの」へ至るところで議論の誘導があるんですけれども、
[引用]「頼るもののないシングルマザーが、経済的にも追い詰められて虐待を引き起こしてしまう」
といった感じの主張がなされています。
俺が知る限り、多くの統計データがこの主張を裏付けています。
[引用]虐待家庭の状況で最も多いのは「経済的困難」。また「ひとり親世帯」でも虐待の発生率が有意に高くなっています。
ついでにいえば、シングルマザー世帯の年収は平均で214万円。日本では「ひとり親」と「経済的困難」はセットになりやすく、国際比較でも、ひとり親世帯の貧困率が主要先進国の中でトップだったりするのです。
これは当たり前の話で、統計データで言うならば:
虐待家庭の状況(Alignment)で最も多いのは「経済的困難」とのことで、
同様に:
原チャリ事故の加害者の状況で最も多いのは「経済的困難者」であり、
傷害事件の加害者の状況で最も多いのは「経済的困難者」であり、
自転車盗難や万引きなど軽犯罪・窃盗犯の犯行理由で最も多いのは「経済的困難者」であり、
要は、反社会的・犯罪的要件を引き起こした人物の状況で必ず関与するのは「経済的困難」なんです。
犯罪を犯すのは、概ねヤケを起こしてたり、八つ当たりしたい人なのであって、社会的地位が高く所得がある人は軽犯罪を犯しにくいという極当然の帰結となります。
一人親が虐待する理由が経済的困難だ、だから一人親の虐待を減らすために経済的困難を国家や社会は解消するべき、という議論をするのであれば、同様の状況で発生している犯罪との「発生率や重篤度の見比べ」が必要になってきます。
当然のように盗難を減らすために貧困を減らせとか、万引きを撲滅するために生活保護を与えろとか(どちらも加害者状況別にダントツ1位、ちなみに2位は飲酒)、政策論争的には「体調の悪い患者にはビタミンCを与えておくべき」というような、まあそりゃそうだし否定もしづらいけど意味は見出しにくかろうという話になるわけです。
「3. バカを甘やかすとつけあがる?」でも対応バイアスの話は出てきますが、これ、こ申し訳ないんだけど、の問題を広く語るときには対応バイアスは関係ないでしょう。どんな犯罪者だって、犯罪にいたるまでの状況や経過、心理というものはあり、情状酌量の余地があっても犯罪を犯したからには犯罪者であり、犯罪を犯さなくて済む心理的状況を社会的に作り上げるべきと言われても、「じゃあどうすればいいんだよ」という話になります。で、結果が上記の「貧困をなくそう」というのは議論として極めて低質で、釣り要素満載だと思います。一番防犯に役立つのは地域パトロール(警邏)だった、というオチでありまして。
大枠の貧困への対策は生活保護など政策的枠組みを用意するにしても、児童虐待などピンポイントの問題については、飲酒運転への徹底取締り同様に(もしどうしてもそのような虐待を減らさねばならない、という社会的コンセンサスができるならば、の条件付で)厚生労働省や警察庁の立ち入り権限を強化する方向で解決するほうがコスト的にも件数・事案的にも望ましいと考えます。
「4. 出会い系のシングルマザーたち」以降も、犯罪者の心理についてのお話が続いておりますが、これこそがミクロの話であって、マクロとしての経済的貧困の解決を主張するのと筋違いだと思います。繰り返しますが、窃盗も軽犯罪も一般人による暴力も少年の非行(学校内暴力)も児童虐待も、統計上は有意に貧困問題を含んでいます。
「5. ところで本当に金だけの問題なの?」については、今回の亡くなった2児の母に関しては報道されているとおり「父親などから生活扶助の申し出があった」等の要件もあり、また、置き去りにして転々とした先が友人宅であったということから考えても、本件事例に限って言うならば的外れと言えます。
「6. ディストピア」については、根拠がはっきりしないので何とも。罪山氏の考えすぎじゃないかと思うんですが、何か具体的なデータがあるんであれば参考値としても見てみたい気がします。
で、「7. 児童虐待って増えてるの?」については、世帯割で見ると横ばいだと思うんですけれども、ご説の通り介入事案が増えているため社会的な注目を浴びており、結果として虐待報道に触れる機会が増えて、なんとなく増大している印象がもたれている、という状況ではないかと考えられます。
具体的事案については、表層的には厚生労働省や警察庁など所轄の役割を拡大し、一方で社会的には子育ての孤立を防ぐために家庭に産み手が回帰するというようなコンセンサスが取れればまずは対応としては上出来なんじゃないかと思うんですが。個人的には、核家族問題の一種だとも思っているので、祖父祖母も含めた大家族と核家族の中間のような形態がうまくつくれるといいなと。
児童虐待を減らす為に
http://d.hatena.ne.jp/tsumiyama/20100802/p1
罪山氏指摘の対応バイアス(attribution error)については、それが成立する基本的条件や平行条件が明確じゃないので、政策論争としては片手落ちだろうと私は思うのだが、以下分かりやすく書こうと努力する。
いきなり「1. 混ぜるな危険! 個人(ミクロ)と社会(マクロ)」から「2. 虐待を誘発するもの」へ至るところで議論の誘導があるんですけれども、
[引用]「頼るもののないシングルマザーが、経済的にも追い詰められて虐待を引き起こしてしまう」
といった感じの主張がなされています。
俺が知る限り、多くの統計データがこの主張を裏付けています。
[引用]虐待家庭の状況で最も多いのは「経済的困難」。また「ひとり親世帯」でも虐待の発生率が有意に高くなっています。
ついでにいえば、シングルマザー世帯の年収は平均で214万円。日本では「ひとり親」と「経済的困難」はセットになりやすく、国際比較でも、ひとり親世帯の貧困率が主要先進国の中でトップだったりするのです。
これは当たり前の話で、統計データで言うならば:
虐待家庭の状況(Alignment)で最も多いのは「経済的困難」とのことで、
同様に:
原チャリ事故の加害者の状況で最も多いのは「経済的困難者」であり、
傷害事件の加害者の状況で最も多いのは「経済的困難者」であり、
自転車盗難や万引きなど軽犯罪・窃盗犯の犯行理由で最も多いのは「経済的困難者」であり、
要は、反社会的・犯罪的要件を引き起こした人物の状況で必ず関与するのは「経済的困難」なんです。
犯罪を犯すのは、概ねヤケを起こしてたり、八つ当たりしたい人なのであって、社会的地位が高く所得がある人は軽犯罪を犯しにくいという極当然の帰結となります。
一人親が虐待する理由が経済的困難だ、だから一人親の虐待を減らすために経済的困難を国家や社会は解消するべき、という議論をするのであれば、同様の状況で発生している犯罪との「発生率や重篤度の見比べ」が必要になってきます。
当然のように盗難を減らすために貧困を減らせとか、万引きを撲滅するために生活保護を与えろとか(どちらも加害者状況別にダントツ1位、ちなみに2位は飲酒)、政策論争的には「体調の悪い患者にはビタミンCを与えておくべき」というような、まあそりゃそうだし否定もしづらいけど意味は見出しにくかろうという話になるわけです。
「3. バカを甘やかすとつけあがる?」でも対応バイアスの話は出てきますが、これ、こ申し訳ないんだけど、の問題を広く語るときには対応バイアスは関係ないでしょう。どんな犯罪者だって、犯罪にいたるまでの状況や経過、心理というものはあり、情状酌量の余地があっても犯罪を犯したからには犯罪者であり、犯罪を犯さなくて済む心理的状況を社会的に作り上げるべきと言われても、「じゃあどうすればいいんだよ」という話になります。で、結果が上記の「貧困をなくそう」というのは議論として極めて低質で、釣り要素満載だと思います。一番防犯に役立つのは地域パトロール(警邏)だった、というオチでありまして。
大枠の貧困への対策は生活保護など政策的枠組みを用意するにしても、児童虐待などピンポイントの問題については、飲酒運転への徹底取締り同様に(もしどうしてもそのような虐待を減らさねばならない、という社会的コンセンサスができるならば、の条件付で)厚生労働省や警察庁の立ち入り権限を強化する方向で解決するほうがコスト的にも件数・事案的にも望ましいと考えます。
「4. 出会い系のシングルマザーたち」以降も、犯罪者の心理についてのお話が続いておりますが、これこそがミクロの話であって、マクロとしての経済的貧困の解決を主張するのと筋違いだと思います。繰り返しますが、窃盗も軽犯罪も一般人による暴力も少年の非行(学校内暴力)も児童虐待も、統計上は有意に貧困問題を含んでいます。
「5. ところで本当に金だけの問題なの?」については、今回の亡くなった2児の母に関しては報道されているとおり「父親などから生活扶助の申し出があった」等の要件もあり、また、置き去りにして転々とした先が友人宅であったということから考えても、本件事例に限って言うならば的外れと言えます。
「6. ディストピア」については、根拠がはっきりしないので何とも。罪山氏の考えすぎじゃないかと思うんですが、何か具体的なデータがあるんであれば参考値としても見てみたい気がします。
で、「7. 児童虐待って増えてるの?」については、世帯割で見ると横ばいだと思うんですけれども、ご説の通り介入事案が増えているため社会的な注目を浴びており、結果として虐待報道に触れる機会が増えて、なんとなく増大している印象がもたれている、という状況ではないかと考えられます。
具体的事案については、表層的には厚生労働省や警察庁など所轄の役割を拡大し、一方で社会的には子育ての孤立を防ぐために家庭に産み手が回帰するというようなコンセンサスが取れればまずは対応としては上出来なんじゃないかと思うんですが。個人的には、核家族問題の一種だとも思っているので、祖父祖母も含めた大家族と核家族の中間のような形態がうまくつくれるといいなと。