「クワイ河に虹をかけた男」

クワイ河に虹をかけた男」から登場人物やエピソードのうち印象的な場面を紹介します。その3回目です。惜しくも編集から漏れたシーンもあります。

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「あなたは私が手を握り合いたいたったひとりの日本人です」


トレバー・デイキンさんから送られた言葉に同行した日本人も感激した様子である。


しかし、デイキンさんが握手したいのは永瀬さんであって、裏を返せば日本人や日本政府は関係ないと言える。


日本人や建設現場に対してはどうだったのだろうか。


デイキンさんにインタビューを試みた。


「それは3年半にも及ぶ屈辱と飢餓の日々でした。なぜそんな目に遭わなければならないのか、まったく理解できませんでした。ただひとつ、日本人の考え方でわかったのは、捕虜なることは恥だということでした。我々の文化にはない考え方でした。」


「日本は捕虜をもっと人間的に扱うことができたはずです。戦闘中であれば、お互いに平等です。しかし、ひとたび敗れれば、それ以上踏みつけられるべきではありません。」


「捕虜になってからは、我々にはろくに薬も与えられませんでした。国際赤十字から送られた薬です。戦争が終わってみると、なんとそれは倉庫の中からいっぱい見つかったのです。悲しい光景でした。薬さえあれば、数えきれないほどの仲間の命を救うことができたはずです。」


「食糧も同じことでした。国際赤十字から送られた食糧です。なぜなんだ?と言うしかありません。」


(つづく)