以前紹介したコミック「リバーエンド・カフェ」は震災後の石巻を舞台にしたストーリーで、作中を見ているとリアルな描写があちこちで見られる。特に場所が明記されている訳ではないが、分かる者にはピンとくるしコマ内から得られる情報で推理するのもまた楽しいのではないかと(今はGoogleのストビューがあるのでありがたい)。
作者のたなか亜希夫氏は大川小学校→大川中学校→石巻高校を卒業しており、故郷や東日本大震災には格別な思いがあると思う。作品からもそうしたものが感じられるが、風景の細かい描写もその1つなのだろう。

↑#4「鬼綱」

↑サキが災害公営住宅を出て日和山にある「けやき坂高校」へ向かう道。地元の人から「急坂」と言われている難所らしい。実際に歩くとかなりの勾配である。
↑#10 「カンナ」
↑上記のシーンはマスターとサキたちが「蛇沼」へ向かう所だが、新北上大橋と三角地帯の前を走って沼へ向かっている。


↑三角地帯を過ぎると大川小学校の震災遺構がある。現在はフェンスが設置されたためコミックとは印象が異なっている。
↑まんがロードにある「さるとびエッちゃん」のモニュメントは目印になるので捜索は容易だと思う。コミックの背景にあるビルは解体されて新しい建物が建っているが、今回市内を歩いていても震災の被害を思わせる痕跡は殆ど見かけなかった。
↑ここは当初特定に悩んだが後方の中継アンテナ?がNTTのものではないかと推測したらビンゴでした。サキが公営住宅を出て中瀬のカフェへ向かっているシーンと思われ。
↑サキがレコード会社のプロジェクトマネージャー立花カオリと初めて対面した場所。サキは右後方の公営住宅に住んでいる設定らしい。ここを起点に考えるとサキの行動範囲が絞り込まれてくる。
↑#82「卒業」
↑サキのプロデュースを担当するはずだった篠原鉄男の死を立花カオリから伝えられたのも川のほとりだった。ここからは対岸に石ノ森漫画館が見える。左の施設はいしのまき元気いちば。
↑サキが公営住宅を引き払い、駅へ向かうシーンも当初特定に悩んだが、背景の某居酒屋を検索したらヒットした。自分は意外に石巻市内を訪ねたことがなく、石巻駅に来たのは初めてだった気がする。
↑2年振りに帰郷したサキは中瀬のカフェに向かうがその途中にはハリストス教会がある。震災で被害を受けたが修復され現在は公開されているようだ。
↑ちなみにリバーエンド・カフェは架空のお店だがあったとしたらこの付近になるだろうか。中洲の突端は未だに工事中で、ゆっくり景色を眺めたりできる状態ではないが整備が終わればそれも可能ではないかと思う。この場所にコミックのカフェを再現したら面白いと思うが残念ながら「リバーエンド・カフェ」の知名度はどちらかというと「???」と言わざるを得ないかもしれない。実際に石巻市でこの作品を町起こしに利用した形跡はなかった気がする。コミックも入手困難だと思うが興味のある人は密林で通販するか電子書籍で一読されてはどうでしょう。
※今回は時間の都合で掲載した場所しか巡ることができなかったが、コミックを深く読み込んで行けばまだまだ作中に登場した場所が実際にあると思う(サキが初ライブを行った「ラ・ストラーダ」や通学していた「けやき坂高校」など)。コミックやアニメ、ドラマなどで取り上げられた場所は本来フィクションであるが、そんな場所を探して世界観に浸る「聖地巡礼」もまた楽しいと今回の旅で再認識した。