今回は広島県東部の福山市から北に入った山野町という場所に出かけてみた。福山東インターを下りて国道182号線を8kmあまり北上、神辺町で県道21号線に曲がってさらに12km あまり進むと山野町に至る。以前は途中にある七曲りという狭い峠が難所になっていたが、現在は新七曲りトンネルが開通しているのであっという間に山の向こう側へ行くことができる。
山野町は小田川周辺の僅かな平地に集落が点在する地域で、両側は山が迫っている。ここは以前ヤフブロでも取り上げたが、実は自分が高校生の頃在籍していた山岳部の県大会で来た場所でもある。上写真手前のトンガリ屋根は保育所、後方は山野小学校と中学校である。駐在所や支所などもこの付近にまとまっているのでこの界隈が町の中心地になるのだろう。ここにある民俗資料館は当時の村役場をそのまま使っている。
県道21号線を遡って行くと福山電気(株)の山野発電所がある。最大落差180m、出力1998kwという小規模なものだが、発電開始は昭和6年(1931)7月とかなり古く、建屋も最近までは木造だったと思う。現在は中国電力に全て売電しているが、以前は地域や自社工場に電気を供給していたという。近くにはバス停もあったが、表示は「発電所前」だった。
ここから上流に数km進むと田原地区になり、ここも数件の民家やお寺などがまとまっている。写真の建物は日用品の看板を出してはいるものの果たして営業しているのか?という雰囲気だった。以前は簡易郵便局も兼ねていたのかも知れない。他にも酒屋などの看板を掲げている家も散見されたが、殆どが店を閉じているようだ。山岳部の大会で来た時は何処かの店で食料を調達した記憶があるのだが…。
田原地区は県道104号線との分岐点でもあるが、ここから104号線方向へ進むとコンクリートの古い橋が今も現役だった。親柱を調べるとプレート(石材?)がはめ込まれていたと思われる凹みがあるものの肝心な所が失われており、橋の名前や架橋された年代は分からずじまい。川の名前が分かれば仮に〇〇川橋と言えるのだが…。
先程の橋から数十m行った場所に「ヤマゴン出没地点」と刻まれた石柱がある。ヤマゴンとは昭和55年(1980)に目撃された未確認動物で、その外見はビッグフットやイエティを思わせる獣人だったという。事の発端は同年10月20日早朝、県道をトラックで走っていた柴田清司さん(当時39)がカッパを着たような人を見かけ、声をかけたところ毛むくじゃらで目玉がギョロリとした生き物が振り向いたという。しばらくにらみ合いになったが後ろから来た車のクラクションに驚いたのか川を横切って対岸の斜面をよじ登っていった。
実は1970~75年にかけて旧比婆郡西城町を中心に「ヒバゴン」という獣人の目撃が相次ぎ、その姿からヤマゴンはヒバゴンと同一の生物ではないかと言われている(※ヒバゴンは75年以降比婆郡周辺から何故か姿を消している)。その後ヤマゴンの足跡や糞と思われるものも発見されているが、その正体は今も不明のままである。
↑ヤマゴンの目撃を伝える当時の新聞。当初はヤマゴンという呼称がなかったため「山野町のヒバゴン」と言われていたようだ。ヒバゴンを実際に目撃した人たちはヤマゴンの目撃イラストを見て「これはヒバゴンに違いない」と思ったとか。
再び県道21号線に戻り、キャンプ場を目指していると小田川の中に古い橋脚がポツンと残っていた。今の県道は2車線幅の「聖橋」が掛けられているが、旧橋はそれに伴い撤去されたか災害で流出したのかも知れない。橋脚を近くで見ると下流側は四角に石が積まれているが上流側は丸くなっており、流れに対する抵抗軽減のためのお約束と言える。