古内一絵さんの小説。マカンマランシリーズの主人公シャールさんが、キーマンとして登場する。
主人公は高校の水泳部の主将龍一。廃部寸前の水泳部の存続を目指し奮闘していく中で、自分のことだけでなく他人にも目を向けるようになり成長していく物語。
こう説明してしまうとよくある青春物のようだが、登場人物たちにはそれぞれ背負っているものがある。
大切な人の死、貧困、孤独、偏見、いじめ。
また、もう一人の主人公である孤独な少女襟香はいじめにあっているが、いじめの問題以上に人に言えない大きな悩みを持ち、内面に激しい葛藤を抱えている。
日本は、どちらかといえば、個性より「みんなと同じかどうか」というところに意識がいきやすい人種だ。
みんなと同じにすれば、仲間はずれにされる心配は減るかもしれない。でも、自分の本当の気持ちからはどんどんズレていく。
そして、そういう行動は、きっと病み(闇)を引き寄せる。
他人がこれが標準だと突きつけてきても、
私はそうではない。
と、正直に言うことは、とても勇気がいる。
でも、そういう自分を受け入れてくれる存在が少数でもいてくれたら、その一歩をきっと踏み出しやすい。
とはいえ現実は、この小説に出てくるようなユニークな水泳部員たちや、シャールさんのように自分に正直に生きていて励ましてくれる存在はいないことがほとんどだ。
でも、それがたとえ小説の登場人物だとしても、彼らに背中を押されることはあるんじゃないだろうか。
古内さんの小説を読むと、いつもそんな気持ちになる。
世の中の平均である必要はない。
自分が幸せだと思える選択をしようと。