そもそもE233系とは、
東日本旅客鉃道が首都圏に残る201系や205系、211系などの国鉄車を置き換えるために製造した第三世代の通勤型電車である。
103系や113系など、昭和中期に登場した国鉄車の置き換えがひと段落済んだことや、JR東日本の経営に余裕が出てきたことから、209系やE231系での「重量半分・価格半分・寿命半分」という方針に改良を加え、「故障に強い車両・人にやさしい車両・情報案内や車両性能の向上・車体強度の向上」をコンセプトとしている。具体的には機器や配線の二重化、行先表示のフルカラーLED化、座席クッションの改良などである。車両のデザインは209系やE257系なども担当した「GKインダストリアルデザイン」が行った。結果としてこの方針は大成功し、他社車両や後の新形式に受け継がれることになる。
総製造車両数は3302両(2022年4月1日時点)で、0番代のグリーン車製造で最終的な両数は3416両となる見込み。この両数は単独形式で両数1位である103系(3447両)にはわずかに届かないが、関西や山陽地区など全国的に使用された103系に比べ、在籍車両の全てが首都圏に配置されたE233系は、異常な巨大勢力であることに違いない。
一方で15両が事故で既に解体されている。
おおまかな番代区分は9つに及び、それぞれの路線特性に合わせ、10年の間に誕生した新技術を次々取り入れたことから、同じ形式の中にも多くの違いが見られる。製造社が新津車両製作所・東急車輛・川崎重工・J-Trec横浜事業所と多いことも、E233系の混沌さをより増している。
以降はそんな首都圏の主役、E233系について深掘りしていく。
0番代 中央線快速など
1000番代 京浜東北・根岸線
2000番代 常磐線各駅停車、東京メトロ千代田線など
3000番代 東海道本線、上野東京ライン、湘南新宿ラインなど
5000番代 京葉線、外房線など
6000番代 横浜線、根岸線
7000番代 埼京線、川越線、りんかい線、JR・相鉄直通線
8000番代 南武線
8500番代 南武線
小田急4000形 小田急電鉄、JR常磐線各駅停車など
相鉄11000系 相模鉄道
相鉄12000系 JR・相鉄直通線、埼京線
都営10-300形 都営新宿線、京王電鉄
~E233系の共通仕様~
<車両機器面>
•VVVF:2レベルIGBT-VVVF ◎全てのモハE233形に搭載
通勤型⇒三菱・東洋SC85形
VVVF本体の裏側にあるフィルタリアクトル(FL)の形状で三菱製か東洋製かを見分けられる
↓三菱製 ↓東洋製
近郊型⇒日立SC90・98形
•行先表示器:フルカラーLED
◎前面幕は“種別&行先”と“種別&路線名”(0番代は種別単体)を交互に表示する
◎側面幕は停車時では次の停車駅を、始発駅では全ての停車駅を表示する
◎全番代を通してコイト電工製(横切れ・強い)と森尾電機製(縦切れ・弱い)が混在している
前面幕⇒0番代と8500番代は運番と種別行先表示が一体。その他は運番が正面左下に移動
↑0番代・8500番代 ↑その他
側面幕⇒0番代から5000番代までは始発駅停車中の停車駅案内が「停車駅は●●、…■■に停まります。」と文法が誤っているが、スクロールに時間がかかることから親切設計ではないかと個人的には思っている。6000番代以降は「停車駅は~です。」と直されている。
•前照灯:HID
※徐々にLED化が進んでいる。0番代・1000番代は交換完了し、2000番代・3000番代・6000番代で更新中
↑左:HID…トタT71編成以外の全ての編成が新製時に搭載
右上:森尾16灯…1000番代と8500番代の全編成と、0番代・2000番代の一部編成が搭載
右下:コイト花形…3000番代小山所属の全編成と、0番代・6000番代の一部編成が搭載
•クーラー:AU726形
※三菱製・トランスポーテック製が編成内に混在。最近はFRP加工のタイプもある
↑三菱製A形…ファンが丸形、側面リブが3本 ↑トランスポーテック製B形…ファンが六角形、側面リブが2本
※いずれもE231系500番代のものだが形式は同じ
•集電装置:PS33形シングルアームパンタグラフ
◎モハE233-●●●0号車と●600号車は予備パンタを搭載している
•主電動機:MT75形
•補助電源装置(SIV):IGBT素子
0番代,1000番代,3000番代,5000番代,8000番代,8500番代⇒東芝SC86形
2000番代,6000番代,7000番代⇒東洋SC91形
•情報制御装置:TIMS(10Mbps)
•台車:ボルスタレス台車(左:動力台車DT71形 右:不随台車TR255形)
※近郊型の3000番代はヨーダンパが付いている
•コンプレッサー
◎0番代・5000番代・8000番代・8500番代はクハE233,クハE232,サハE233-500に搭載
◎1000番代・2000番代・6000番代・7000番代はモハE232に搭載
◎3000番代はモハE232とサハE233に搭載
•ホーム検知装置
◎左は新製時から搭載しているタイプ
◎右は0番代・8500番代の追設タイプ
※0番代のトタT71編成は新製時から搭載しているが、機器本体の形は追設タイプと類似している
•線路モニタリング装置
◎軌道材料を検査する機械と軌道変位を検査する機械が搭載されている
◎各所属センターにつき対応車両が2編成、そのうち搭載している編成が1編成在籍
<車内面>
•扉:白色化粧板・角窓・3/4閉機能
◎ドアエンジンは0番代,1000番代,8000番代,8500番代がスクリュー軸駆動式、その他がリニアエンジン式
◎0番代,3000番代は半自動開閉機能を有し、これに加え8500番代の3つが半自動ドアボタンを搭載している
•つり革:三角形(基本進行方向向き)
•窓:UVカット加工・ブラインド無し
•車内情報表示器:全ての扉上に搭載
0番代:15インチ液晶ディスプレイ(2画面)
その他通勤型:17インチ液晶ディスプレイ(2画面)
3000番代:3色LED2段スクロール式
•座席:片持ち式・バケットシートタイプ
◎ロングシートは通常区画が2+3+2の7人掛け、車端部が3人掛け、先頭に一番近い区画が4人掛け
◎座席が固いことで知られる“走ルンです”グループとは異なり、座席の快適性は大幅に改善されている
•車内照明:蛍光灯/LED
◎0番代から5000番代までは蛍光灯で落成 7000番代,6000番代,8000番代はLEDで落成
◎0番代,1000番代,3000番代,5000番代でLEDへの交換が進行中
上が蛍光灯,下がLED照明の比較画像。外の明るさの影響で余計際立っているように見えるが、実際明るさの差はかなり大きい