訪問診療の緩和ケア医がくれたポスター
(連絡先電話番号は伏せています)

5月29日に訪問医が来始めてから、母は少し快活になった。医師が血液検査をした結果を見ると、白血球に関する異常値(好中球が高い、リンパ球が低い)と、Dダイマーという血栓が出来やすい項目が高いという結果が出た。それでも末期がん患者としては比較的良好な結果のようであった。しかし咳と呼吸困難は続いており、頻尿のために夜中も2〜3時間おきに目覚めてトイレに行かなくてはならない。医師は尿意を抑える薬と、エンシュアと言う栄養ドリンク、更に強い咳止めを処方した。これらを受け取りに近くの処方せん薬局に母と一緒に歩いていったが、約200mの歩行で母は力尽きた。


強い咳止めは、(コデインリン酸塩酸1%「メタル」)と言う薬だった。母曰く、この薬は口にいれるとピリッとした痛さを感じたそうだ。それでも残念ながら母の咳は止まらなかった。この頃の母の日記には、朝起きた時の痰、喉の渇きと咳、体のだるさや呼吸困難についての不安が書かれている。


1週間後にまた訪問医が我が家を訪れた。薬の効き目や現在の体調など、医師は母の話だけでなく、お世話している私の話まで丹念に聞いてくれた。医師は咳止めが効かなかったと言う話を聞いて、処方薬を変更した。それはナルサスというオピオイドだった。


このナルサスを飲みだした所、不思議にも母の咳はほぼ止まり、母は少し元気を取り戻したのだ!


ナルサスはモルヒネに似た効果を与えるオピオイドだ。私は心の中では泣いていた。酒もタバコもやらなかった母が、オピオイドに頼らないと生きていけなくなるとは⋯


しかし、母は今もまだ自分の癌の深刻さを分かっていない(あるいは分かりたくない?)ようだった。オピオイドで体調が一見良くなったように見えた母は

「お母さんは手遅れでなくて良かった。やっぱり1番頼りになるのは娘だね。」

と言い、私が作った夕飯をちゃんと食べてくれた。私は涙ぐんだ。