難治性 潰瘍性大腸炎
八尾ちなみです
歴代最長在職日数となった、安倍首相。
今までの責務を全うし、本当にお疲れ様でした。
安倍政権に対する賛否両論はありますが、今日は同じ潰瘍性大腸炎大腸炎の患者として話をさせてください。
第一次安倍政権と同じく、今回も持病の悪化で退陣となりました。
前回の時、
ただの下痢ぐらいで
お腹が痛いからって総理やめるのか
という声も上がり、私達潰瘍性大腸炎の患者達は怒りに震えた経験があります。
今回も予想通り
また途中で投げ出すのか
大事な時に体調を壊す癖がある
などと、心無い声が聞こえております。
そこで、具体的にどんな症状になっていくのか、ご存じない方にも知っていただきたく、詳しく説明させていただきます。
ただし、同じ病気でも症状は様々です。
あくまでも、私が今まで経験してきたことを元にお伝えしますことをご理解ください。
まず、腹痛から始まります。
食事中、あるいは食事後に痛みを感じ、トイレの回数が増えます。
下痢が増えていき、排便痛が増していきます。
日頃、ただ歩いている時、電車に乗っている時、信号待ちをしている時、レジでお会計をしている時、車に乗っている時、誰かと会話している時、急に腹痛が起こり、トイレに走るようになります。
ちなみに、整腸剤や下痢止めで改善するほど、この病気は簡単ではありません。
更に進行して血便が出るようになり始めると、生活全体に支障が出てきます。
まず、腹痛は、お腹の中で雑巾をギューッと絞られるような、ギリギリギリギリ差し込むような痛みに襲われます。
トイレに走る回数も増え、排便時は生汗が出て頭がクラクラするほどの激痛です。
それが、1日に10回、20回となります。
もう、普通に仕事が出来ない状態になっていきます。
トイレに間に合わない程、突然の激痛が1日に何度も何度も何度も何度も来るため、それだけで、体力も奪われ、精神的にも疲弊していきます。
もちろん貧血にもなり、常に倦怠感。
歩くだけ、立っているだけでも息切れしていきます。
また、発熱も出てきますし、とにかく具合が悪い状態が続きます。
食欲は減退し、口から何かを入れることが恐怖になります。
だんだん固形物が食べられなくなり、流動食や栄養ドリンク中心で生きていくようになります。
朝は痛みで目覚めトイレに走り、夜も痛みで起こされトイレに走り、眠れないのです。
それでも、社会人である以上、責任ある仕事を放り出すわけにはいかない。
だから、食べられなくても、発熱や貧血、トイレにお腹が砕け散るような激痛で1日に数十回走ろうと、我慢に我慢を重ねるのです。
結局、血便どころか、血しか出なくなります。
毎回、便器が真っ赤に染まっていきます。
それを見る度に、恐怖との戦いです。
もうここまでになると、大腸の中はただれて血だらけで、びらんが広がり、赤々としています。
膿んで、白くなっていたりもします。
そして、自分を責めるのです。
こうなるまでに、なんとかならなかったのか。
何が原因だったのか。
もう今から自力でなんとか出来ないか。
なんでこんな状態にまでなってしまったのか。
そうやって、追い込めば追い込むほど、またストレスが増大し、症状は悪化します。
そして、すでに人間らしい状態でいられなくなっているにも関わらず、今もし入院した場合は、誰に、どんな仕事を、いつから、どう引き継いだら良いかを、真剣に考え始めます。
もう一度、確認のために申し上げます。
1日に数十回、お腹が砕け散るような激痛に突発的に襲われてトイレに走り、時には間に合わないこともあります。
常に貧血で全身がだるく、歩くのも、立っているのもままならない。
また、関節痛や吐き気、発熱など、全身にあらゆる症状が出ます。
それでも、仕事を放り出せないと我慢しつづける。
潰瘍性大腸炎大腸炎の患者の中で、このような経験をしてきて、結局志半ばで緊急入院となってしまった方がたくさんいるのではないでしょうか。
私がそうです。
ブライダル司会者として、どれだけ体調が悪くても披露宴に穴を開けるわけにはいかない。
食べていなくても、立っているのがやっとでも、マイクを持つとなんとかするんです。
それがプロですから。
また、緊急入院した直後にも関わらず、どうしても出演しなければいけない舞台があり、主治医からのドクターストップを跳ね除けてタクシーでホールに向かったこともあります。
オペラのストーリーテーラーの役割で、私がいなければ話が成立しないのです。
いつ大腸が破裂してもおかしくない。
そうなったら、確実に大腸全摘。
今安静にしなければ、どうなるかわかってるんですか。
病院としても、責任取れないですよ。
それでも私は舞台を選び、ステージに立ちました。
あの時の恐怖体験は、一生忘れない。
自分の体を守ることよりも、仕事を選びました。
そんなことを繰り返し、10回以上入院してきました。
安倍さんが不調を感じ始めたのは、6月頃とおっしゃっていました。
この病気は、悪化し始めると驚く速さで進行していきます。
一気に体調不良になり、後戻りできなくなります。
本来は、違和感を感じた段階で予定を減らし、安静にしていくことで改善しますが、ほとんどの人がそんなことは出来ない責任ある仕事を持っています。
今年は、前代未聞のコロナという問題を解決するため、非日常の緊張感が続いていたことでしょう。
突然の辞任と言われていますが、私はそろそろもう限界だろうと思っていましたし、潰瘍性大腸炎の患者であれば、誰しもそんな予感はしていたと思います。
6月、7月、8月と、公務に励みながら、ずっと痛みに耐え続けてこられたと推察いたします。
「そんなに悪いようには見えなかった」のではなく、見せなかったのです。
立場上、気力でなんとかしていたのだと思います。
在職日数が歴代最長となったのは、この期間、影で、日本のトップクラスの医療技術を誇る病院やドクター達が、あらゆる方法で安倍さんをサポートしていたのでしょう。
その力をもってしても、改善出来なかった。
それが難病というものです。
薬を飲めば、点滴すれば、検査をすれば、注射を打てば良くなる。
そんなことなら、難病なんて言わないのです。
今の医学では治らない、完治できない、だから難病なのです。
今回の退陣について、厳しい発言をしている方にお伝えしたい。
あなたが、上記のような状態になったと想像してみてください。
それでも、自分なら辞任なんてしない!と言いきれるでしょうか。
もし、あなたの想像力で、私達潰瘍性大腸炎の患者の痛みや苦しみ、歯痒さ、もどかしさ、情けなさ、無念さを感じとれるとしたら、もう心無い発言は終わりにしていただけたら嬉しいです。
安倍さん、本当にお疲れ様でした。
おそらく、引き継ぎが終われば入院され、絶食しながら治療に励まれると思います。
どうか安静になさってください。
同じ病気の患者として、心から回復を願っております。
日本国民のため、全身全霊を捧げていただき、ありがとうございました。
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一人でも多くの方に、潰瘍性大腸炎のことを知っていただければ幸いです。