先週の記事の続きです。続きの記事はこちら


【簡単なあらすじ】
一時は0.51ドルという最安値をつけたものの、それから数年後には最高200ドル近くまで上がる未来が待っているという大化けバイオ銘柄JAZZ。

 

前回は、フェーズ3まで進んでいた新薬の承認ニュースが来ることから大爆上げが期待された2010年を振り返ってみたが、新薬承認はまさかの勘違い、実は新薬は『違法ドラッグとして使われる懸念がある』という理由で棄却されていたのであった…。

 

しかし、既存薬の売り上げが好調だったおかげで、新薬が失敗したにもかかわらず、株価はそれなりに伸びている感じで2010年を終えていた(年初8.24ドル→年末19.68ドル)。

 

ここから、JAZZの快進撃が始まる!…はずだ!!(2週連続2回目)

 

 

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前回の最後にも述べたのですが、実はJAZZはこの先画期的な新薬を生み出すことは特になく、他の製薬会社を合併吸収することで成長していくことになります。

 

本命株・NYMXは、現在弱小製薬会社ですが、画期的な前立腺肥大・がん薬を開発中で、個人的にはこの薬の力で爆発成長を期待しています。

 

JAZZも何らかの素晴らしい薬の大成功で大きくなったのだと勝手に思って参考にしてみたという経緯だったわけですが、実は新薬開発というサイエンスではなく、M&Aといったビジネスで大きくなった企業だったようで(もちろん企業を買収できるほどに成長できたのは良い薬を持っていたからということではありますが)、NYMXの値動き予想としてはあまり役に立ちそうもありません。

正直、JAZZにはちょっとガッカリです…(もちろん、どちらが正しいというわけではありませんが)。

 

(逆に言うと、株価3ケタのように本当にビッグに成長するには、新薬一発だけでは不十分で、薬の売上を踏まえて他社を吸収合併していく良いビジネスセンスが必要なのかもしれませんね。『薬は凄いけど経営陣は大丈夫か?』とよくMessage Boardで言われているNYMXは、その点心配です)

 

とはいえせっかくここまで振り返ってきたので、あとここからさらに株価10倍に成長していくはずのJAZZ、どのようなニュース・経緯で成長していくのか、2016年現在まで振り返っていこうと思います。

 

 


さて2011年上半期です。新薬は昨年10月上旬に棄却されたのに、既存ナルコレプシー薬・Xyremの売り上げが素晴らしかったということで、11月頭に決算発表後、昨年最後の2か月で10ドルから20ドルへと約2倍になっていました。


しかし、その後半年間、この2011年上半期には、ニュースは取り立てて何もなかったようです。せっかくなので、日本の大きな転換点、2011.3.11にどれだけの影響を受けたのかを見てみようと思います。

 

 


さあ、東洋の大国の大災害による、アイルランドに本社を置く製薬企業への影響やいかに?!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…まぁ、まぁ、分かっていましたが、特に震災の影響は何もなく、3月11日は至って平常運転でした。


(そう言えば気付きませんでしたが、このシリーズ最初の記事で出てきた、一気に8ドルから1ドル台へと駆け下りていったJAZZにとって最悪の時期、あれは実はリーマンショック直撃のタイミング(2008年後半)で、必ずしも死んでいたのはJAZZだけではなかった時期だったのかもしれないですね(それでもわずか3か月ぐらいで8分の1程になる落ち込みは相当だと思いますが)。)


しかし、2011年に入って順調に右肩上がりを続けていると思われていた所で、4月27日に、突然最安値が一気に25ドル以下になるスパイクが入っています。幸い終値はそれなりに戻していたようですが、何かあったのでしょうか?

 

…Message Boardを調べてみると、以下のニュース記事が紹介されていました。

 

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JAZZが一瞬クラッシュ、逆指値注文の発動につながったか
(http://seekingalpha.com/article/265834-jazz-pharmaceuticals-another-healthcare-sector-flash-crash-stop-limits-triggered)

 

(記事概要)
この日33.59ドルの始値をつけたJAZZは、午前10時までは通常通りだったが、その後約2分間、23.50ドルをマークし激しい底をつけた。

 

(画像:ニュース記事より)

 

この、5分以内の29%近い下落は、2010年6月10日に作成されたサーキットブレーカールール(=2010年5月の、コンピューターが意図的に作り上げた巨大な売りで、Dowが一瞬だけ900ポイントの大きな下げを記録するがその後すぐ回復、多くの投資家の逆指値注文を誤発動させて阿鼻叫喚…という事件を踏まえて、『5分以内で10%以上の値動きがあった場合、取引の一時停止措置を取る』と定めたルールのようです。もちろんS&P500やRussel1000に含まれる、ある程度の規模の株のみが対象のようですが)で定められた値動きを超えており、本日の取引の内いくらかはキャンセルされるかもしれない。


…が、これまでの所、SECからの公式アナウンスはない。
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しかし、Message Boardではこの記事を貼ってくれたポストに対して、『サンクス。でも、この記事はなぜこんなことが起きたかの説明になってないじゃないか』という反応で、『誰がやったのか?』『“あいつら”がやったんだよ』『あいつらって誰だよ』みたいな感じで混乱しており、逆指値注文が意図せず発動してしまった人もいたようで、『JAZZの株は不正に操作されてるんじゃないか?』と不信感を抱く人もチラホラいたようです。


結局この値動きが今でも記録されているということは、特にキャンセルはなかったようですね。当時のJAZZはまだまだ中位株だったので、この程度の値動きは相手にされなかったのかもしれません。


そして、この事件が起こったからかどうかはわかりませんが、その後株価は…

 

 


…しばらく若干下がり気配です。しかし、これは単にこれまで順調に上がり続けてきたことを受けてのただの調整かもしれません。実際2か月もすればまた同じ水準に戻っていますしね。

 

 

 

さて続いて2011年下半期です。

 

 

 

7/28に決算報告があり、これまた結構良かったのか翌日それなりの上がりを見せています。しかし、それも長続きはせず、しばらく上下動しながら横ばいです。


そして9月19日に、JAZZ初の合体、Azur製薬と合併することが発表されました(もちろん、合併後の企業名はJazzのままです)。


JAZZ公式プレスリリースより:Jazz製薬とAzur製薬は、合併し、Jazz製薬となることに合意しました
(http://investor.jazzpharma.com/phoenix.zhtml?c=210227&p=irol-newsPageArticle&ID=1608122)

 

この合併により、Jazzの株主が80%弱の、Azurの株主が20%強の資本を持つことになったようです。


企業が買収された時は、一般的に、買収された企業は言うまでもなく株価大ジャンプで、一方買収した企業側は財務の不安から株価が若干下がることが多いようですが、この9/19にアナウンスされた合併ではどのような値動きになるのでしょうか?

 

 


…まぁ、まぁ、大して株価には影響なかったのかな、という感じでしょうか。


その後10月18日に、この合併ニュース翌日よりもさらに出来高が大きくなってそれなりに株価も下がっているようですが、何があったのでしょうか…?

 

どうやらこの日JAZZは、1週間前にFDAから、「副作用について報告するルールに違反があった」という警告レターを受け取ったことを明らかにしたそうです。

 

FDAからの警告レター
(http://www.fda.gov/ICECI/EnforcementActions/WarningLetters/ucm275565.htm)

 

そんなに大きく株価は下がらなかったものの、ここからしばらくまた40ドル割れが続いています。


Message Boardでは、『驚かないよ。JAZZは結構ヤバイことをしてきた歴史があるからね。Xyremの承認前に、FDAに死亡事故を報告しなかったこともあるから。JAZZは悪いことは隠蔽する体質の会社なんだ』という書込みもありました。

 

…何だか、個人的には、ここからわずか2, 3年でまださらに5倍程度は上がることを知っているわけですが、それを知った上でも、「もうJAZZはいいかな」って気がしてきました。
何というかあまり応援したくならないといいますか、もちろんただマネーゲームに参加しているだけの自分のような投資家にはその企業の実態がどうなのかはあまり関係無いともいえるのですが、やっぱり、これだけレイプドラッグだの隠蔽だのと、イマイチぱっとしないニュースばかりだと、少なくとも一蓮托生で全力で投資する気にはちょっとならないかなぁ、という気がしてしまいます。
…まぁ、JAZZの方からしても「お前みたいなもんは別に要らんわ」と言われて終わりな感じでしょうが…。

 

 


とはいえ折角なので最後まで値動きは振り返っておきましょう。

2012年になりました。この年の最大のニュースは、4月26日木曜日の、EUSA製薬の買収です。

 

 

 


JAZZ公式プレスリリースより:Jazz製薬がEUSA製薬を買収することに対し、最終合意に至りました
(http://investor.jazzpharma.com/phoenix.zhtml?c=210227&p=irol-newsArticle&ID=1688148)

 

この買収に際し、JAZZは6.5億ドルプラス、目標達成報奨金として5千万ドルを支払うことになったようです。

(※報奨金: EUSAの主要製品、急性リンパ性白血病 (ALL) 薬・Erwinazeの米国国内での売り上げが、2013年の目標値に達した場合にのみ支払われる; 結論としては、2013年の第4四半期に目標売上は達成されたとのことで、この報奨金は支払われたようです。)

 

年明け以降株価はずっと横ばいでしたが、さぁ、4/26のEUSA買収の発表に伴い、翌日金曜日の株価はどうなる?!

 

 

 

…おぉ~っ、上がったようです。一般論を覆し、買収した側のJAZZの株価も結構大きくジャンプしました。

…しかし、それも長続きはせず、すぐにまた40ドル台前半に戻っています。

 

何だか、一向に大爆発は来ないですね。結局、このまま爆上げはなく、合併した会社の製品が予定通り上手くいって、自社の主製品Xyremの売り上げもそれなりに好調に進み、決算のたびにじわりじわりと値を上げていくタイプだったのかな、と何となく予想します。

 

 


今回の最後は2012年下半期です。この半年間、特に大きなニュースはありませんでした。

 

 

8/8に結構な出来高で値を下げているものの、Message Boardを見ても、『ヘッジファンドが売り払ったんじゃない?』程度の憶測のみでした。


9/17の上げは、Roxane研究所との、Xyremに関する特許の係争に勝利した、というニュースがあったようですが、プレスリリースでの報告もなく、あまり大々的に報道もされていなかったようなので、特許のことに限らず買収後下落傾向にあった株価の、何となくの調整の意味も込めた上げだったのかもしれません。

 

JAZZが特許裁判で勝訴
(http://blogs.barrons.com/stockstowatchtoday/2012/09/17/jazz-pharma-pops-on-ruling-in-patent-case/)


しかし結局、その後数か月は特に上がり続けることなくまた伸び悩んでいますが、それでも気付けばもう50ドル…。新薬承認で1日で株価が5倍10倍に!といった派手なジャンプがなかった分、何だかよく分からない内に上がっていたな、という感じですね。


チャートを見ての判断でこれなので、実際株を保有していたら本当に『徐々に上がっているけれど、売るタイミングが分からない…』ということになりそうですね。

もし自分が保有していたら、またマズいニュースが来ても嫌ですし、9/17に、節目の50ドルを大きく超えた所で、『もう手離してもいいかな』と思うような気もしますが(もちろんこれも、その後3か月以上冴えないことを知っているからこそ言えるだけの意見かもしれませんが)、実際ここから2年ぐらいでさらに4倍弱上がりますからね…。タイミング判断は本当に難しいです。

 


というわけで、長くなったのでまた次回へ続く感じです。ようやく完結しそうですが、次回は一気に3ケタを突破する訳で、結構半端じゃない上がりのある瞬間もあるかもしれませんね。

何が大ジャンプの一番の要因だったのか、乞うご期待です(しかし、今回みたいにじわじわアップする感じで結局何が成長の決め手だったのか不明のまま、という可能性もありますが…)。