先週の記事の続きです。続きの記事はこちら

 

【簡単なあらすじ】
2007年に上場したばかりのJAZZ製薬。上場後まだ10年も経っていないが、最近(5月末)、他の製薬企業を15億ドルで買収するにまで規模の大きくなった(もっとも、これ以前にも既に何件かの買収を経ていますが)、急成長大化け銘柄である。

 

短期間でこれだけ成長したということは、さぞ右肩上がりを続けたのだろうと思いきや、なんと、上場後2年経過した2009年には、まさかの最安値0.52ドルを付けるという屈辱的な状況も経験し、最早倒産待ったなしとも言える憂き目にも遭っていたのだった…。


その後同年6月には、新薬・JZP-6のフェーズIII試験でポジティブな結果を出したことから1日で株価が3倍になったりもしたものの、2009年が終わった時点での株価は8ドル程度と、上場初日に記録した17.73ドルの半分未満の価値しかないという冴えない状況であった。

 

ここから、JAZZの快進撃が始まる!…はずだ!!

 


----------
全く値動きのなかった退屈な2009年12月を終え、続いて2010年1月からです。

 

前回、JZP-6が承認されたのはこの年の10月だと書いたのですが、実は新薬の承認の前には「ファイリング」と呼ばれている申請ステップがあり、製薬会社にとってはこの申請が受理されること自体も結構なイベントになっているようです(NYMXのMessage Boardでは、パートナーシップ獲得と、ファイリングの受理の2つのニュースが来て欲しい、近い内に来るはずだ、と心待ちにされています)。


そしてJZP-6に対するこのファイリングは、2月18日に受理されたとのことです。

 

申請承認: JAZZのプレスリリースより

(http://investor.jazzpharma.com/phoenix.zhtml?c=210227&p=irol-newsArticle&ID=1392820)

 

その前日までの値動きは以下の通りです。
(前回同様、ローソク足で右軸が株価、棒グラフで左軸が出来高です)

 


1月13日あたりから、にわかに盛り上がっている感じです。何かと思ったら、この日の午後2時に公開会議が開かれたとのことで、朝から出来高も増え、株価も上昇気配で、Message Boardには「サンキュージャッズ」というポストがあふれ返っていました。


もちろんチャートを見れば明らかな通り、会議の内容はポジティブなものだったようで(JZP-6が例え今年いっぱい承認されなくても問題ないような財務状況だったようです)、しばらく株価も盛り上がりましたが、それも長続きはせず、段々とまた尻すぼみです。


2月18日の市場が閉まった後で、JAZZから『ファイリングが受理された』というアナウンスがあったようですが、果たして市場の反応は?


 

 

 


おぉ~、伸びてる?と思いきや、よく見ると緑バー(陽線)でそれなりのアップをしているのはアナウンスより数日前の2月16日のことであり、発表翌日の2月19日は陰線で、むしろ前日比値下がりしているぐらいです。


正直、仮に16日ぐらいのアップでも「え?そんなもん?」という気がするぐらいなのですが、とにかくこのニュースでは全然盛り上がらなかったようです(Message Boardの反応も全然そっけない感じでした)。


ファイリングが受理されれば、もの凄く新薬承認に近付くことを意味するだろうから株価も爆上げかと思っていたんですが、意外とそんなことはなさそうですね…。NYMXのファイリングを期待している身としては、何だかやや残念です…。

 

とはいえ、承認へと一歩前進したのは間違いないからか、上下波打ちながらも徐々に株価は上昇気配を見せているように思います。3月末にかけて最後下落トレンドではあったものの、続きはどうなるのでしょうか…?!

 

 

 

 


うーん、冴えない!!

 

5月6日木曜日に、結構な大下がりを見せています。

Message Boardを見ても特にこの日にニュースはなかったようなのですが、印象的だった書き込みとして、『頑張れ。耐えるんだ』というタイトルのポストで、『市場全体が下がっているだけだ。今売ったら、賢い投資家にお買い得価格で株を明け渡しちゃうことになる。絶対に手離してはいけない。感情的になってはいけない!』という応援メッセージが目に付きました。


さぁ、彼の指摘は正しいのでしょうか??

 

 

 

 

 

 

…うーん…。結局5月6日の終値よりも、しばらくの間下がり続けちゃっています。本当に冴えません、株価は8月半ばまでずっと1ケタです。

前回から何度も同じこと言ってますが、チャートなら一瞬でも、実際株を保有して待つとなると、本当に長い3か月でしょう。ずっとダラダラ行ったり来たりで、『もうダメなんじゃないか?』と思えてしまうのではないかと思います。


しかし、8月11日あたりから、俄然盛り上がり始めています。どうやら、8月20日に、外部専門家も交えてFDAによるパネルディスカッションが催されるとのことで、否が上にも期待感が高まっていたようです。

このような重要会議が日中にある時には、NASDAQではその株の取引を停止するとのことで、この日は丸一日JAZZの取引は停止されていたようです。

 

さぁ、有識者会議の結果はどうなる!?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

死亡ーーっっ!!なんと、FDAのみならず、会議に参加していたFBIのエージェントまでもが、新薬JZP-6に反対票を投じたとのことです!どうやら、ストリートドラッグ(違法薬物)として使われる可能性がある、という理由によるものだったようです。


この薬はGHBというドラッグとほぼ同じ成分が含まれており、GHBというのはレイプドラッグとして悪名高い存在であるとのことです(いわゆる『エクスタシー』と類縁の化合物のようです)。


これを受けて、Message Boardでは、1秒間に10回レイプ発言があるんじゃないかというぐらい、Rape drug的なポストにあふれ返っていました(やや大げさですが)。

 

しかし、参考にしたニュース記事によると、有識者達は、この薬の道を完全に閉ざしきったわけではないようです。線維筋痛に対して間違いなく効果は認められるものの、唯一、違法ドラッグとしての悪用が懸念事項である、という感じのようでした。


『薬によるメリットが、考えられるリスクに対して大きく上回るものと考えられるか?』という質問に対して、FBI女性エージェントと19人の有識者がノーに投票し、2名の有識者のみが、イエスと投票したようです(もちろん、JAZZは利益の方が遥かに大きいと主張していたようです)。

 

実はこの会議に先立って、この薬の誤用・悪用の懸念のニュースは流れていたようですが、参考にした記事では、『みんな、一緒に心をこめてこう言おう:FDAは常に有識者のアドバイスに従うわけではないんだ!と』と締めくくっています。

 

参考: FBIと19人の識者が、JAZZの新薬に反対票!
(http://blogs.wsj.com/health/2010/08/20/fbi-agent-19-others-vote-against-jazz-pharmas-drug-for-fibromyalgia/)

 


…が、さすがに、このFDAとFBIによる反対票はきついですね。個人的には、もしホルダーだったら、例え将来まだまだ上がることを完全に知っている今の立場からでさえも、さすがに一度売るわ、という決断を下すように思います。いくら何でもしばらく下がるでしょう、大きく下げたら満を持して買い戻すことで、実質タダで沢山の株ゲットだぜ、という作戦です。

 

さぁ、ここからの値動きやいかに?!

 

 

 

 

 

 

 

…あれぇーーっ!??何とこんなネガティブなニュースの後だというのに、凄まじい勢いで株価は回復、2週間もしないうちに同水準に復帰、9月末にはもう暴落前より高値をつけているぐらいです。

 

うーん、本当に思うようにはいきませんね…。さっきも言いましたが、自分ならJAZZを信じつつも、これはいい買い増しのタイミングだということで一度手離してさらに大きく下げた所で買い戻す機会を窺ったと思うので、週明け月曜日に一旦全株売却していたことでしょう。

しかしその後全く下がることはなく、あれよあれよと言う間に買い戻すタイミングを失ってしまい、いつものように涙目敗走…というシーンが、まるで現実のことかのごとく思い浮かぶようです。


多分、売ったのよりも高値で買い戻すのはあまりにもシャクなので、『どうせこんなレイプ薬は失敗に終わるわ、完全に承認が頓挫して大暴落する前に手離しておけという神様からのありがたいメッセージなんだ』とか自分に言い訳をして、結局買い戻すことはなく別の株に移動すると思います…。

そして毎日横目でチラッチラッとJAZZを見続け、数年後ほぼ25倍ぐらいの株価になっているのを、灰になって見守っていたことでしょう…。

 


さて、続きです。何といつの間にやら10月で、既に述べた通り実は10月11日に、JZP-6は見事にFDAの承認を勝ち取ります!
先ほどのパネル会議からわずか1か月半…意外なほど事態は速やかに動くものですね。まずは承認前日までの値動きです。

 

 


結局10ドルを割ったり超えたりとフラフラしていたようですが、承認ニュースでどう動く!

 

爆上げ来いっ!!

 

 

 

 

 

 

 

来ねぇーーっっ!

FDAからの承認ってそんなものなのかぁ、とガッカリです。確かに、承認を得た所で即座に会社の業績がアップするわけではなく、上市された製品が大きな売上を上げて初めて会社に利益がもたらされるものだと思うので、それももっともなのかもしれませんが…。

↑実は、大きく勘違いしていました!後ほど触れます。


そう考えるとやはり、株価が爆上げするのは、即座に大量の資金が得られるパートナーシップの獲得が一番なのかもしれないですね。

 

…おや?しかしよく見ると、右軸がとうとう25ドルと、上場開始以来はじめて大きくなったぞ?!ついにここからJAZZのターンか、これは来るかっ!!

 

 

 

 


来てるぅーーっっ!!

11月に入っておもむろに上り始め、11月5日には30%程度の結構なジャンプをしています!この日に何があったのか、幸いニュースが残っていました。

 

JAZZのラリーは続く
(http://www.bizjournals.com/sanjose/news/2010/11/05/jazz-pharma-rally-continues.html)

 

記事によると、単純に前日に出された決算報告が素晴らしかったとのことです。


第3四半期の純利益が1320万ドル、1株当り0.32ドルで、昨年同期の170万ドルの損失と比較してもの凄い上がりようです。


総収益は4480万ドル、これも昨年同期比45%アップです。

 

さらにJAZZは2010年の売上予測を1.64~1.68億ドルへと引き上げたとのことです。この上方修正には、ナルコレプシー薬Xyremの売り上げが、昨年同期2500万ドルから3720万ドルへと上がったことが最大の牽引力となっていたようでした。

 

 

 

結局株価のアップは新薬ではなく既存薬の売上げアップによるものだったということで、改めてやはり、ほぼ新薬のみに期待しているNYMXの株価の爆上げは結構先になってしまうのかな、という気がしちゃいますね…。ここはやはり、大きく研究資金が得られる、パートナーシップの獲得に期待です!!

 

 

…と、記事を書き終えてから気付いたのですが、何と、10月11日のニュースは、『JZP-6が承認を勝ち取った』ではなく、全く正反対の、『FDAはJZP-6の新規医薬品承認を棄却した』というニュースでした!!

 

https://www.drugs.com/nda/jzp_6_101011.html

 

JAZZは急成長を遂げたという事実から、記事をよく読みもせず盲目的に承認されたとばかり思ってしまっていました…!例のごとく間違った情報を多分に含んでしまっていて申し訳ない限りです…。

 

しかし逆に、棄却されたのに、この日を境に株価は下がるどころかそれなりに上がっているのが驚きです。

 

また、これにめげずJAZZはこの薬の成分分子(先ほどの違法ドラッグの成分GHB)の、薬剤製法に関する特許を12月21日に取得したとアナウンスしたようですが、上記最後のチャートを見れば分かる通り、その日から年末最後まで、株価に動きは全くありませんでした。

 

以前からそういう印象を持っていましたが、特許取得は株価に全然影響がないことが多いようですね。

 

特許取得: JAZZのプレスリリースより

(http://investor.jazzpharma.com/phoenix.zhtml?c=210227&p=irol-newsArticle&ID=1509828)

 

結局JZP-6は現在まで承認には至っておらず、JAZZの主力製品は今でも、上で出てきたナルコレプシー薬のXyremであるようです。

 

ちなみにXyremの主成分もGHBなのですが(というか、上記特許はJZP-6ではなく、Xyremに関する特許です。上記特許の他に、Xyremには7つの特許があり、少なくとも2019年までは、どの特許も切れないようです)、主成分は一緒なのにJZP-6はどこがどう改良されて何が違うのかはイマイチはっきりしませんでした。一応ナルコレプシーと線維筋痛とで効能は違うわけですが、結局頓挫してしまった薬なので、まぁどうでもいいかな、という感じです…。

 

 


…というわけで、今回はわずか1年しか進みませんでしたが、またここからの続きは次回、来週以降に振り返ってみようと思います。

 

ここまで引っ張るような話でもないですが、やっぱり個人的には自分の本命株と重ねてしまうこともあり、色々振り返っていて結構面白いです。

…しかし、最後の最後に発覚した『新薬は棄却されていた』という事実から、実はJAZZは画期的な薬の開発ではなく吸収合併を繰り返すことで大きくなったのかな、という気がしてきましたが…。

 

今後の本格的な成長がどのようにして成し遂げられていったのか、楽しみです。

 


次回、『ジャズ、はじめての合体』、大して期待せずお待ち下さい…!