「ホーラ、君は不安に思う必要は無い。ただじっと、その物語を見つめていれば良い」
そう言いながら彼もウリエル同様、私の両手に左手を重ねてくる。
「私は君をこの身が朽ちるまで守り通すと誓った。例え相手が誰であろうと」
無愛想な顔の彼に私はついつい微笑んでしまう。
「ありがとう、カイム」
そう言えば、カイムは笑った事があったかな、と急にそんな事を思ってしまった。
そう思えるのも、まだ心に余裕があるからなのか。
「あ、そういえばね、少しだけ物語が変わってたんだよ?」
ついつい忘れていたけれど。
私は手元の本をもう一度開く。
「え、どのように変わっていたのですか?」
ウリエルは少し驚いた顔していた。
カイムは……相変わらず変化なし。
「えーっとね、ここ!」
本に書かれた一行の文を私は指さした。
「赤毛犬とオタク君が初めて会話する所」
本来ならここはただ自己紹介するだけで終わりだった。
「〝何でそんなに強がってるんだ〟って所から。これ、私が読んでいる時に勝手に文が追加されたの」
「運命が変わった、と言う事なのでしょうか?」
「分からない、でもその後の展開は全部一緒なんだよね。変わったのは一部分だけでさ」
パタンと本を閉じる。
「あまり期待しない方が良い、ホーラ。その様な少しの変化、前回にもあった事だ」
「でも前回は最後の最後で変わったよね?」
前回の物語のラストは、たしか六人の少年少女兵が叶えたかった夢を思い浮かべながら深い眠りにつくって最後だった。
勿論、六人の少年少女兵が皆死んでしまった事には変わりないけれど。
でも、彼らはある小さな女の子の命を守り抜いたの。
本来なら、その小さな命も消えてしまうはずだったのに。
彼らは自らの命を捨ててまで、その小さな命を守り抜いた。
どうしてそうしたのか、私にはよく分からない。
その小さな命を守る事で、彼らは何を思ったのかも。
でもきっと、意味があったんだと思う。
/続く