ここは真っ白な世界。
私達に言わせればここは当たり前の日常を過ごす世界。
人間はここの世界を〝天国〟と言っているらしいけれど。
私は手元に開かれた本を静かに閉じる。
ため息をついて、顔を前方に向ける。
両側には真っ白な柱。
その柱の天辺には蒼色の炎が輝く様についている。
私はその柱の真ん中に挟まれた大きな円盤に腰を掛けている。
勿論、円盤の色も真っ白だけれど。
二柱の先には何もない。
ここは終わりも無ければ、始まりも無い世界。
果てはなくて、無限がいつまでも続いている世界。
「読書は終わりですか?」
静かな空気に耳慣れた声。
右の柱から赤い鎧を纏った女性が私に近づいて来る。
「うん、今回の物語も世界が定めた通りだったよ」
「ですが、まだ始まったばかりです。物語の初めは世界に定められた通りに進むのは仕方ありません」
丁寧のお辞儀をしながら彼女はそう言った。
「今回も……期待しない方が良いのかな?」
苦笑いしながら目の前の女性に顔を向ける。
すると彼女は本を握る私の両手に自身の右手を重ねてきた。
「前回の物語はあまり変わりませんでした。ただ、散る必要のない命が散った。我々の危機を回避出来るとすれば、今回の物語に賭けるしかありません」
力強く、私の両手に右手を重ねてくる。
「もし、もし今回ダメだったら? そしたら私達はどうなるの?」
「ご安心ください、ホーラ様。その時は、このウリエルがアナタ様の盾となります」
そうウリエルは優しく微笑んでくれた。
でも、こういう微笑みはもう見たくない。
前回の物語が終わった時、こんな笑みを残して私の大切な天使達は命を散らしていった。
あの悲しい思いの塊達によって。
赤くて肩までかかる長い髪をなびかせるウリエル。
「盾になるのは、ウリエルだけではない」
今度は左の柱から耳慣れた声。
そこには背中に大きな黒い大剣を背負った、黒い鎧を纏った男。
彼の周りには黒い翼がよく散っている。
そのせいで、鴉と言う生き物とよく連想してしまう。
/続く