第一章 復讐者 68 | Beyond Despair

Beyond Despair

― 絶望の底に落ちた少女の先に待つ運命 ―

そう確信した時だった。

炎上する車に、何か黒い影が見える。

人の様な形をしたその影の腕は鎌の様な形をしていた。

車の近くに倒れている女性がその影を見つけると、甲高い悲鳴を上げる。

「こないでッ! こっちにこないでッ!」

足が怪我して立ち上がれないのか、体を引きずりながら影から逃げようとする女性。

そんな彼女に黒い影はフラフラと、まるで踊るかの様に近づいて行く。

その動きが恐怖を湧き出させている様に感じた。

「イヤァ! いやぁぁぁ! 誰か助けてッ! お願いだからぁ!」

しかしそんな彼女を助ける人間が居るはずもない。

皆我が身大事とばかり、助けを求める女性を無視して避難シェルターへ向かって行く。

自身を置いて逃げる人々の背中を見ながら彼女は涙を流していた。

と、そんな時。

彼女は俺達へと顔を向けてきた。

口を動かしているが、声は聞こえない。

声を出す気力すら残って無いのだろう。

しかし、その口は「助けて」と言っている事には違いなかった。

どうすれば良いのか分からない。

俺みたいな人間が行った所であの女の人は助けられない。

だからと言って見捨てるのか?

「どうしたら……いいんだッ!」

俺がそんなふうに考えている間にも、黒い影は彼女の元に近づいて行く。

彼女は俺から顔をそらすと、そのまま泣きながら地面に顔を埋めた。

もう自分は助からない、そう確信したのだろうか。

「冗談じゃねーぞッ!」

俺はいつの間にか走り出していた。

避難シェルター方面ではなく、生きる事を諦めた彼女の元へ。

すると黒い影は俺の事に気づいたのか、狙いを女性から俺へと変える。

俺は足を止める。

――このまま行けば確実に殺される。

黒い影はフラフラと鎌の腕を振舞わしながら近づいてくる。

――昨日までは火野川や坂口達と笑っていたのに。

一歩、二歩、確実に近づいてくる。

――そんな当たり前な日常が続いていくと思ってたのに。

だんだんと黒い影の姿がハッキリと見えてくる。

――そんな日常で、今日も終わると思ってたのに。



/続く



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