すると火野川は一度ため息をついた後、席を立ちそのままカウンターへと向かっていく。
恐らく、夕食を貰いに行ったのだろう。
隣には黙々と飯を食っている坂口。
こうなると坂口は俺から何か言っても何の反応もしなくなる。
それほどコイツは食事の時は集中して飯を食っているのだ。
だから太るんだよ、と心の中で突っ込んでしまう。
そう思っている時、一瞬先ほどの少女の顔が思い出された。
〝……何様だ……お前……〟
彼女の言葉が脳内で再度再生される。
てか俺、何であんな事言ったんだろ……。
今更そんな事を思ってしまう。
根拠は本当にないのだが。
でも、彼女の顔を見た瞬間にそう思った。
コイツは何をそんなに必死になって強がっているのか、って。
呆然とそんな事を考えながらフランスパンを食べ終える。
するとカウンターからおぼんを持って火野川が帰ってきた。
相変わらず火野川の夕食はバランスが取れている。
本人曰く、長生きするための秘訣なんだとか。
てか秘訣じゃねーよ……。
「何ジロジロ見てるのよ」
不機嫌そうな顔で火野川は俺の前の席に腰を降ろす。
おぼんの上には白米、味噌汁、焼き魚、あと野菜炒めなどなど。
バランスって言うか、ごく一般的な食事だ。
いわゆる定食である。
そういえば昨日もコイツこのメニューじゃなかったか?
「ヒノッチ、毎日定食で飽きないん?」
食事を終えた坂口が火野川にそう言った。
因みに坂口の夕飯は自賛のカツサンドだ。
何でもここの食堂のメニューは全て食い飽きたんだとか。
いつのまに全てのメニューをコンプリートしたのか……。
俺でもまだ全メニュー食った事ないのに。
「毎日じゃないわよ。たまにはパスタとかも食べてる」
「月に一回か二回だろ、それ」
火野川が定食系以外の食事を取るのは稀である。
よく火野川に隠れて坂口とその事で賭け事をしていたくらいだ。
因みに今のところ、互いに勝ったためしがない。
「どんだけ定食好きだよ、この定食会長……」
「定食会長言うな!」
「うほ、また新しいですなマモッチ。それよかよか」
「良くないだろ!」
坂口の言葉に火野川が突っ込む。
いやー、コイツも王子並みに良いリアクションをしてくれるよな~。
/続く