第一章 復讐者 5 | Beyond Despair

Beyond Despair

― 絶望の底に落ちた少女の先に待つ運命 ―

「ねーマモッチ、さっきからそこで何してるん?」

パソコンの画面をじっと見つめる俺に、坂口がそんな言葉をかけてきた。

「見て分かんねーのかよ、アスナちゃんの踊りを鑑賞してんだよ」

「それは分かるけども、同じやつ二十分も見てて飽きないん?」

飽きない、と俺は坂口に怒鳴りパソコンの画面に視線を戻す。

ちなみにアスナちゃんとは、最近登場したばかりの二次元キャラクターである。

バーチャル世界の歌姫で、人気上昇中!

「オレはアスナちゃんのその踊り、もう千回見たからさすがに飽きてしまた」

「ハッ!しょせんはその程度か坂口(さかぐち)(わたる)! 」

俺はパソコンの画面から坂口の方へ視線を向けた。

部室の隅、カーテンで半分仕切られた所に、太い腹を晒す男。

何を言おう、コイツが坂口弥である。

「マモッチは何回アスナちゃんの踊り見たん?」

目を細めながら坂口はそんな事を聞いてきやがった。

「既に、三千は越している!」

俺はデカい声で言いながらドヤ顔を坂口に見せつける。

坂口は目を大きく見開いた。

まるで信じられない、とでも言いたそうな顔をしている。

「どうした坂口!お前も、アスナちゃんを愛しているのならこれくらいは出来るだろう!」

人差し指をビシビシと振る。

しかし坂口の表情はさっきと変わっていない。

と、そう思った時だった。

 右肩に、誰かの手が乗っている!

「げ・・・!」

反射的にそんな声を出していた。

なるほど、坂口が目を見開いたのもうなずける。

俺のアスナちゃんの踊り鑑賞数に驚いた訳じゃない。

そう……、きっと……

俺の後ろに居る、化け物に驚いているのだ。

右肩に乗っている手がだんだん重くなっているような気がする。

指が……食い込んできている、のですが。

「い、痛いぞ……ツンデレ会長」

その言葉を発した瞬間、俺は床に倒れた。

いや、正確には倒された、凄い勢いで。

「また勝手に活動してたのね、神崎護さん」

震えた声で俺をなぎ倒した女は言った。

俺は恐る恐る声の主の顔に視線を向ける。

目の前には黒いロン毛の髪型をした女。

容姿は中身および性格さえ気にしなければ、うちの学校ではかなりの美人である。

「前にも言いましたよね?生徒会に許可なく部活を作るのは禁止だと」

冷たい目で俺を睨みつけるこの女は、わが校の生徒会長。

火野川愛花、十七歳にして全ての魔術を習得している優等生野郎である。


/続く