「ねーマモッチ、さっきからそこで何してるん?」
パソコンの画面をじっと見つめる俺に、坂口がそんな言葉をかけてきた。
「見て分かんねーのかよ、アスナちゃんの踊りを鑑賞してんだよ」
「それは分かるけども、同じやつ二十分も見てて飽きないん?」
飽きない、と俺は坂口に怒鳴りパソコンの画面に視線を戻す。
ちなみにアスナちゃんとは、最近登場したばかりの二次元キャラクターである。
バーチャル世界の歌姫で、人気上昇中!
「オレはアスナちゃんのその踊り、もう千回見たからさすがに飽きてしまた」
「ハッ!しょせんはその程度か坂口弥! 」
俺はパソコンの画面から坂口の方へ視線を向けた。
部室の隅、カーテンで半分仕切られた所に、太い腹を晒す男。
何を言おう、コイツが坂口弥である。
「マモッチは何回アスナちゃんの踊り見たん?」
目を細めながら坂口はそんな事を聞いてきやがった。
「既に、三千は越している!」
俺はデカい声で言いながらドヤ顔を坂口に見せつける。
坂口は目を大きく見開いた。
まるで信じられない、とでも言いたそうな顔をしている。
「どうした坂口!お前も、アスナちゃんを愛しているのならこれくらいは出来るだろう!」
人差し指をビシビシと振る。
しかし坂口の表情はさっきと変わっていない。
と、そう思った時だった。
右肩に、誰かの手が乗っている!
「げ・・・!」
反射的にそんな声を出していた。
なるほど、坂口が目を見開いたのもうなずける。
俺のアスナちゃんの踊り鑑賞数に驚いた訳じゃない。
そう……、きっと……
俺の後ろに居る、化け物に驚いているのだ。
右肩に乗っている手がだんだん重くなっているような気がする。
指が……食い込んできている、のですが。
「い、痛いぞ……ツンデレ会長」
その言葉を発した瞬間、俺は床に倒れた。
いや、正確には倒された、凄い勢いで。
「また勝手に活動してたのね、神崎護さん」
震えた声で俺をなぎ倒した女は言った。
俺は恐る恐る声の主の顔に視線を向ける。
目の前には黒いロン毛の髪型をした女。
容姿は中身および性格さえ気にしなければ、うちの学校ではかなりの美人である。
「前にも言いましたよね?生徒会に許可なく部活を作るのは禁止だと」
冷たい目で俺を睨みつけるこの女は、わが校の生徒会長。
火野川愛花、十七歳にして全ての魔術を習得している優等生野郎である。
/続く