『続いては、シシコ座流星群についてのニュースです』
ピッとリモコンのボタンを押して、テレビの電源を切る。
暗くなった液晶にはにぃさんこと俺の顔とねこたんの顔が写されている。その表情は明るくにこやかだった。
「やっ……た」
「やった……のよ」
俺等は互いの顔を見合わせてニッと頬を吊りあげ、
「「やったーー!!」」
と、両手を上げて叫んだ。
「やったよ、やったよ! 班長クラスに昇格だってさ!」
「うんうん! ついに下っ端リーダー各になれたんだね!!」
俺達二人は、今回の作戦成功をきっかけに、第5班のリーダーに任命されたのだ。なんでも、手に入れたメガストンは、カガリ様の言った通り、すさまじい能力を持っていたらしい。
そのおかげで、開発中の企画が次の段階へ進んだとかどうとか。
そして、今、二人は第5班の前で挨拶をした。
「という訳で、我々第5班は、これよりエントツ山頂上である実験の立会を行う!」
「アクア団などの邪魔ものが来ないように見張るのよ!」
「なお、この計画の途中段階で、別班がアクア団に遭遇している。各自、手持ちポケモンの状態を万全にして、10分後に現地集合! 以上解散!!」
我々マグマ団は、どんなことがあろうとも、現地集合、現地解散なのだ。
ということで、俺達二人も集合時間に遅れないようにエントツ山へ向かった。
☆
「リーダーマツブサ、準備が出来ました」
「御苦労、ホムラ」
第5班が到着した時には、すでに実験の準備は終わっており、かつて我々が使用した装置の名残を改良したものに隕石がはめ込まれていた。
かつては、その隕石エネルギーをつかい、火山を噴火させようとしていたのだが、今回は違うのだろうか?
「第5班到着いたしました!!」
「うむ、御苦労。そこで、みているが良い。我々の技術力を」
マツブサ様が、ボタンを押そうとした瞬間、後ろから聞き覚えのある大きな声が聞こえた。
「ちょっと待った!!」
「むむ、アオギリ、か」
「アオギリって、アクア団のリーダー!!」
俺は、慌てて振り返ると、そこには体格の良い筋肉質の男が立っていた。首からさげられるクサリのネックレスがイカす、アクア団リーダーのアオギリだ。
「その隕石、我々アクア団がいただこう」
「第5班!! アクア団を取り押さえろ!!」
5班のメンバーに、アクア団を取り押さえるように命令する。その命令を聞いたメンバーは、各自ボールを持ち、アクア団に向かう。
「リーダーマツブサ、今の内に!」
「させるか!」
アオギリが前に出ようとするのを、俺等二人は遮る。
「お久しぶりです、アオギリさん。手加減はしません。ドガース!!」
「チッ、後で貴様の連絡先を削除する!! サメハダー!!」
「お言葉ですが、こちらはすでに削除済みです。ドガース、毒ガス攻撃!!」
「チッ、小僧が!! サメハダー、滝登り!!」
ドガースの毒ガスごと流すようにサメハダーが滝登る。
と、その横を通り過ぎる影が見えた。
「……あ!」
戦闘中の俺達をしり目にマツブサ様に向かうその影、石の洞窟で出会った少年、オメガだ。
「ねこたん! 止めて!!」
「あいあいさー!! クロバット!!」
ねこたんがクロバットを繰り出し、オメガを足止めしようとするが、オメガの目はまっすぐマツブサを捉えており、クロバットを見ていない。
なのに、オメガはボールからキルリアを繰り出し、サイコキネシスでクロバットを縛りつけた。
「命令も出してないのに、繰り出した瞬間に!?」
「邪魔だ」
気迫が以前とは違う。一体何がったんだ。
「マグマ団!! ぜぇぇったい許さない!!」
「ふん、小増か。カイナの造船所以来だな」
「クスノキさんか奪った部品を返せ!!」
「あぁ、アレか。アレは、ダメだ。我々の作戦には必要不可欠だ。ホムラ、そいつを取り押さえろ」
「うひょ。了解」
ホムラ様が腰のボールを投げる。対するオメガもポケモンを繰り出し対抗する。
「いけっ、マタドガス!!」
「アゲハント、銀色の風!!」
銀色の風に吹かれたマタドガスは力なく倒れた。
強すぎるというか、怒りと勢いに任せて突っ走っている感じだ。
「マグマ団!」
「良くここまで来たな。よかろう。今日もためになる話しをしてやろう」
マツブサ様がオメガに向けて言う。何を話しているのか、聞ける状況ではないが、そちらに意識を向けてしまう。
「隕石はある条件下でその特性を変化させる。例えば、メガストン。例えば、キーストン。そして、ここの火山エネルギーと隕石のエネルギーを混ぜることにより――おっと、おしゃべりはこの辺にしようか」
「クスノキさんから奪った部品を返せ!!」
「クスノキ、か。彼には以前より、そうだな、マグマ団を結成する以前より知っているからな。言わば古くからの友だ。友のために部品を使えたのなら、やつも本望だろう」
「だまれ!! いけっ、ジュプトル!!」
オメガはジュプトルを繰り出した。
バカめ。我々マグマ団に対して、くさタイプなど。
「バクーダ。噴煙」
いわんこっちゃない。
バクーダの噴煙でジュプトルは倒れる。
「くっ」
「敗者はそこで見ていろ。超古代のポケモンに力を与える石が出来上がる様を!!」
言いながら、マツブサ様は機械のボタンを押した。
その瞬間、その機械が煙を吹き始める。どうやら、様子がおかしい。
「む、むむ、なんだ、ホムラ」
「うひょ!? マツブサ様、伏せてください!!」
まさか、爆発する!? 火山の真上で爆発なんて起こしたら、大噴火するぞ!!
「アオギリさん、アクア団の水ポケモンで、あの機械を冷却してください!!」
「マグマ団の指図など受けない!! と、言いたいが、それどころじゃないな。野郎ども!! サメハダー! 冷凍ビーム!!」
「「「キバニア、凍える風!!」」」
アクア団が必死に機材を冷却している間に、マツブサ様のホムラ様は機材から隕石を取り出した。
隕石の色は変色し、本来の色とはまったく異なっていた。
しかし、
「こんなものに、価値は無い。少年。コレをくれてやる好きにするが良い」
マツブサ様はその隕石をオメガに渡し、すたこらと下山して行った。
我々第5班はドガースで煙幕を張り、その援護をし、自身もその場から逃げるように立ち去った。
☆
「ミスター。本当にこれでよろしいんですか?」
『良い。これで正義だ』
「ですが、メガシンカの可能性を取りあげるのは、果たして本当に」
『人間は忘れている。ポケモンはなぜメガシンカをするのか。メガシンカとは何なのか。お前はあそこには立ち入れないのだから、そこへ集めれば良い』
「はい……」
『ただ、お前にはチャンスを上げよう。キーストンとそのメガストンを持って行くと良い。きっとお前の力になってくれるだろう』
「はっ、ありがたき幸せです」
ぶつんと通信の切れる音を確認し、背の低い男は暗い部屋の中に多くあるキーストンの中から一つを取り、ポケットにしまう。
そして、円形のテーブルに置かれるメガストンを手にして、それをパートナーに持たせる。
「ミスター、あなたは……」
マイク越しでしか聞いた事の無い男声。おそらくボイスチェンジャーが使用されているだろう声。
顔も見たことないし、本当の声も聞いたことが無い。目的もわからない。
ただ、メガシンカの出来る人間から、キーストンとメガストンを奪うように言われている。
「あなたは、一体」
キーストンを握りしめて、背の低い男は森の中を出た。