僕が見ている限り、
あの子は一度だけ恋をした。

相手は同じ小学校の男の子。
名前は…実名を出すのをあの子は拒むだろうから仮にTとしよう。

あの子は小学一年生の頃からだろうか、その頃から無意識にTを尊敬し、敬愛し、愛していた。

Tはあの子にとってあまりに完璧な男の子だった。彼はとても聡明で、言葉は鋭く、それでいて気品と優しさを纏っていた。

あの子にとってTは一番の親友であり、最愛の人でもあったのだった。

しかしながら困ったことに、幼いあの子はその気持ちの正体は分かっていたものの、その気持ちをどのように扱うべきなのか全く分からなかった。

前述したように、あの子は本当に大切なものや欲しいものを絶対に口にしない。だから誰にもその秘密は話さなかった。勿論、本人にも。
そうしなければいけない気がした。

会うだけで、声を聞くだけで心臓が動くのを感じた。一緒にゲームをするその日々がただ幸せに感じた。彼の笑顔が見れたならもうそれだけでいいと思っていたほどに。

あの時から、
呪いは始まっていたのかもしれない。

彼はあの子に色々なものを与えた。
好きなものや欲しいものがなかったあの子に、好きなスポーツとかゲームだとか、好きな食べ物とか、好きな場所さえも作ってくれた。

幸せだった。

付き合ってくれなんて発想さえ浮かばなかった。ただ隣に居たいから隣にいる。
笑って欲しいからお道化る。
それだけなのでした。

あれほど綺麗な感情を僕はまだ見たことがない。
そしてきっともう見ることは出来ないのです。

あぁ、そうだった。
それでもあの子は最後には告白してたっけ。

転校する前にね、
Tがあの子に「もう会えないのか」と尋ねたことがあって、するとあの子は、「また会えるかどうかは貴方次第よ」と言っていたね。

僕はあの子の中にいたからそれが告白だったこと分かっていたけれど、Tは微塵も気付かなかったな。

仕方ないさ、当時Tもあの子も小学3年生だ。
小学生らしくもっと正直に言えばよかったんだよ。あの子らしいとは思うけれども。大方すきって言葉じゃ不相応だと思ったんだろう。

綺麗で、どこまでも透明な恋だったね。
僕にとっては呪いだったけれども。
あぁいいんだ、もう怒ってないよ。

だから僕の話もさせてよ。