僕にとって最後の旅行は後半に差し掛かった。
そろりそろりと、終わりが近づいてくる。
とはいえ別段急ぐこともない。

僕は旅行する時にあまり計画を立てない主義だ。
元々下調べはするんが、最初の1日で気になったところには行ってしまう。

だから2日目は、ただぼんやりを街を歩き、地元の路地なんか入ったりして、その街に馴染んだ飯を口に入れる。これが案外楽しい。

ペリーロード、黒船記念館、ペリー像。
この街は至る所にペリーがいる。彼のお陰で栄えたのだから当たり前なのか。

いやそうでなくともここは美しい街で、海は沖縄などとはまた違った深みのある色合い、そこかしこにある木々花々は潮風にも負けず強かで、顔に当たる潮風さえも僅かに海の香りがする素敵な風であった。


その帰り際、小洒落たイタリアンがあったので昼食をとった。不思議な事にこの街は和食も洋食も店が沢山出ているがどこも街並みに馴染んでいる。

店内では勝気な女性とその夫と思われる男性が、2人で店をまわしていた。注文してから来るまでに多少時間がかかったものの出てきた料理(カルボナーラ)は今まで食べたなかで明らかに一番の出来栄えであった。それはもう一口食べて感嘆の声が出るほどに。

店主と思しきおばさんは大雑把で、でも一度来た人の事をちゃんと覚えている人なようだった。
いつかあの子がもしこのお店に入ったら、店主は僕を思い出してくれるかも知り得ない。

店を出て、帰路に入る。
潮風は昨日よりずっと穏やかで、音も立たない。

僕には心残りはもうない。
だのに、どうしてこれ程までに一歩が重たい。
どうして心細い。どうして。

どうして涙がこぼれるのか。

僕は分かんなかった。
ただ目を伏せて何も言わず駅まで歩いた。
行きよりずっと、駅は遠かった。

もう駅である。
僕はぽつり、ありがとうございました、と。
そう呟いて電車に乗った。