震災によって変わったもの、失ったもの、そして救いからこぼれ落ちたもの、今のコロナ禍にも繋がるテーマをもったそんな作品です。映画「護られなかった者たちへ」


震災のときに避難所で身寄りのない老女、青年、少女が出会います。この3人は、避難所近くの老女の家で身を寄せ合いながら暮らしていました。ただ身内ではないので、いずれ3人はそれぞれの人生を生き始めます。時を経て、監禁された男性が餓死するという事件が起きました。被害者は、絵に描いたようなお人好しで、生活保護の担当者をしていました。最初は、トラブルもなく信頼される担当者という評判でしたが…震災により急増した申請者、その中には不正受給を目論む人もいます。そんな多くの人を相手にするうちに逆恨みされるようなこともあり、容疑者が数多くいることが分かってきます。


震災と津波という絶対的な力によって奪われた家族、家、街。その中でも必死に生きようとするものの生活を維持することが難しい人も出てきます。しかし、セーフティーネットであるはずの生活保護には厳しい基準があり、網からもれて護られない人が出てきます。これは、今のコロナ禍でも問題になっていることにしっかり向き合って描かれています。職員の方は真面目に仕事をしていて、申請者も本当に困っているから救いを求めて相談にきている。それでも、助けきれない人が出てくる。個人的には、途中で語られる日本の貧困問題は国連から勧告を受けるレベルであることに衝撃を受けました。


大きな視点では正しいことでも、個人の視点からは納得のいかないものになる。この心の動きみたいなものを佐藤健さん、阿部寛さん、清原果耶さんの演技力でしっかりと描き出されています。立場は、違うもののそれぞれ震災で傷付き、失った人々で、そのやるせなさみたいなものがしっかり描き出されています。


それぞれの正しさに従って行動した結果が、最悪の結末を導いてしまう。そんなやるせなさと社会の不条理みたいなものを感じる、考えさせられる作品です。

膵臓の病気で余命が短いという設定で、どこまでも純粋な物語に別な色を添えるそんな作品です。映画「君の膵臓を食べたい」


この物語は、膵臓の病気で余命短い女のコとその事実を唯一知ってる教室で常に1人な男のコの短い交流の物語です。男のコが成長し、大人になって学校で図書の整理をしているシーンから始まります。その中で高校時代に同じ図書委員だった女のコのことを思い出し、そのころの短くも濃い経験が語られます。この女のコは、死の影を全く感じさせない明るさがあります。男のコは、高校生とは思えない落ち着きがあります。この2人だからこそ作り出せる雰囲気で物語は進んでいきます。


瑞々しいはずの高校生同士の恋愛に絶対的な死がどこか暗い雰囲気を落とし続けます。この物語の厚みを増しているのが、『供病文庫』という女のコの病気と向き合う日々の日記があります。明るい笑顔の内面がそこには綴られています。そして、たくさん散りばめられた伏線が無理なく、でも怒涛のように回収されていくことで、感情の揺さぶりが一気にきます。


女のコを演じる浜辺美波さんの明るさ、男のコを演じる北村匠海さんの落ち着きが、感情移入をしていくのを助けてくれます。このときはすごく演技が上手いという程ではないと思いますが、とても合った雰囲気だなと感じました。


いくつかの舞台装置を最大限に活かすことで、こんなにステキな物語になるんだと驚きと感動を感じさせてくれるそんな作品です。

すごく穏やかででも、情熱的でこんな恋愛してみたいなという思いになるほっこりとした作品です。映画「花束みたいな恋をした」


物語は、あるカップルがイヤホンを分け合って、音楽を一緒に聴いている様をみて、注意しようとする2人のシーンから始まります。この2人は、過去に運命的に出逢っていて、そこから始まる1つの恋愛の始まりから終わりまでの物語です。


お互い特徴的な2人の恋愛が、ごく自然に描かれていきます。ちょっとした伏線によって、時の流れや感情の変化が自然に描かれていきます。主役の2人を演じている菅田将暉と有村架純の自然過ぎる演技が日常感を際立たせます。お互いこの恋愛を大事に思ってるからこその行動が、それぞれの視点や考え方の違いがすれ違いをうむもどかしさがたまらなくヤキモキしてしまいます。自然に恋愛模様を描いていくので、過去の経験と結びつけやすく、それぞれの行動について感じることも聞く人によって全然違う感想が返ってくるのも面白いところです。


終始穏やかに恋愛模様と時の流れを描いていくステキな作品です。

夢と現実の2つの世界を行き来して、徐々に困惑していく主人公のとまどいと、それぞれの決意を感じる作品「パラレルワールドラブストーリー」

物語は、夢の中で主人公の親友に恋人を紹介されることから始まります。現実では、紹介された親友の恋人は、自分の同棲相手です。二人は、何れも脳科学の研究者で倫理的に問題があるかもしれない研究をしています。現実では突然の海外赴任となる親友。この夢と現実の世界を行き来していく中で、2つの世界が分けられなくなっていきます。

物語は、なかなか非現実的な内容ですが、これを細やかな設定と役者の演技力がリアリティを与えていきます。

パラレルワールドによる戸惑いだけではなく、それぞれの人間模様、恋愛感情、思惑が交錯して、物語に彩りを与えていくそんな作品です。
過去と現在、創作と現実、主観と客観、日常と非日常…これらをシームレスにつなげることで、独特な世界観を作り上げてる作品です映画「鳩の撃退法」

物語は田舎でデリヘルの運転手を勤めるお人好しの自称小説家津田を取り巻くいくつかの不思議な出来事に関連して進んでいきます。そこから急に場面が変わり、これまでの話が津田の書いた小説の中の出来事だと分かります。でも、津田は過去に事実をそのまま小説に書いて問題になったことがあり…徐々に現実と創作の境目が曖昧になっていきます。

主演の藤原竜也を始め、少しクセのある役者が揃いそこかしこに違和感を感じる演出になっています。この違和感が境界線の曖昧さを際立たせます。その違和感が謎を解く鍵を覆い隠していって、より謎が深まります。落ち着いて見ると単純な話なんですがこの違和感が落ち着くことを許してくれません。

もう少しフィクション感というか現実離れしててもいいのかなと思った部分はありました。あまりやり過ぎると御都合主義的になってだめですけど。なんとなくオチが弱い気がしました。やりすぎないとこがいいとこではありますが。

そもそもタイトルから違和感のある作品ですが、違和感と曖昧さの中で、エンターテインメントを感じられる作品でした。