とにかく、名優揃いの映画です。
映画「半落ち」
この映画を書くことには、ためらいがあります。
若輩の感想は、薄っぺらくなりそうな気がする。
それほどまでに人というものに深く迫った作品です。
そして、それを描き出すに足る名優が揃っている作品です。
まず、「半落ち」とは犯罪の事実を認めているものの、細かい内容について話していない状態らしいです。
この作品でも、冒頭に主人公は妻を殺したと自首してきます。
しかし、妻を殺してから自首まで空白の2日間が存在します。
その間の行動が、大きな争点になってきます。
ここでポイントになるのが、犯人が警察官だったということです。
元は優秀な刑事であり、現在は人望の厚い指導員になっています。
もちろん、警察はこれを美談にしようとします。
警察官の殺人は世間に大きな波紋となっているからです。
その中で、警察は無理やりウソの自供を引き出します。
その結果、落ちたとみなされ立件されます。
もちろん、ウソなのでその部分は本当に落ちていない部分となります。
これが、ずっと半落ちのまま残ります。
なぜ言わないのか、そして何を言わせたいのか、これがこの作品深遠さになって行きます。
この作品の主題の一つには、介護問題があります。
主人公の奥さんはアルツハイマー病にかかっており、言動がおかしくなっていきます。
そのため、旦那に「殺してくれ」と願うようになってしまうのです。
そして、その願いをかなえてしまう。
これがこの作品の中に影を落とします。
関わっている人がそれぞれの立場から、その問題に向き合います。
ある人は同情し、ある人は軽蔑し、ある人は尊敬すら抱きます。
しかし、その行動が悪であることは誰よりも行った本人が理解しています。
目の前でおかしくなっていく大切な人・・・。
これにどのように接するかことができるのか、社会がある中でどこまでも続く問題だといえます。
犯人の男性は、この犯行の直後に自殺しようとします。
所謂、無理心中に近い状態だといえます。
でも、死にませんでした。
この心の動きがとても深い部分です。
重い罪の意識、様々な絶望、その中に残る希望。
陳腐な言葉かもしれませんが、希望があれば生きていける。
そのことを実感させられます。
これだけの作品を描き出すために、素晴らしい名優が揃っています。
若手の人気俳優はいませんが、ベテランの実力派が揃ったという感じです。
犯人は寺尾總、追求する刑事に柴田恭平、弁護士、記者、裁判官と名優が揃っています。
それぞれにも家族や同僚など大切な人がいて、名優が揃っています。
その中でも、被害者の姉であり犯人の義理の姉でもある人間の役である希木キリンさん。
奇抜な役を含め、特徴の濃い役が多い方なのですが、今回はとても普通。
でも、そこがとても素敵です。
普通な分、感情がより浮き彫りにされます。
そして、この義理の姉こそこの作品のキーです。
家族を殺した家族に向ける感情とはなにか。
よく知るからこそ、複雑なものになっています。
人を描き出す作品は様々ありますが、その中でもとても深く描いていると思います。
妻を殺すということを、ただの美談でなく描くこと。
それがこの作品の素晴らしさになっているのだと思います。