海に面した崖の上の道。遠くに港の建物が白く光っている。

そんな道に沿って立てられている旗が、風にたなびいている。

 

マシーン

わずか一点のトラブルでも全体が機能しなくなるものだ。

トラブルが起きていない箇所は正常でも、動けなければ正常とは言えなくなるだろう。

つまり正常という概念は、単体で成り立つものではない。

 

高揚

高揚感が無くなれば、そこには疲労感しか残らない。

かなたの水平線を見失えば、疲労感は必ず人を喰い潰すだろう。

 

水の流れ

流れが早ければ水中にあるものが撹拌されて濁り、淀んで流れが無ければ水中にあるものが腐敗する。

 

すきま風

ごく僅かであっても、やたらと存在感を示すもののうちの一つ。

 

天使

知人の家の近所に、たびたび人の家の中を覗く少年がいたそうだ。知人がこんなことを言っていた。

「あの子は人の家の中を覗き、家族が笑っていると一緒に笑っていたそうだ。自分も皆と一緒だと思っていたんだろうな」。

知的にハンディを背負っていたその少年は施設に入ったそうなのだが、その後のことはわからない。

 

目的地

ウィンカーを上げるたびに、目的地に近づいてゆく。

 

寒い夜の雨

光の筋が無数に降り落ちてくる。

空がぼんやり明るいのは、月や星によるものではなく、市街地の光の反射によるものだ。

ふと思い出す、あの交差点。立ち止まり、うなだれた影を見つめていた女性。

 

間抜け

一連の連続した流れの中に、飛躍などによって欠落した箇所があると、その先は怪しげなものになる。

あまりにも簡潔な言葉だが、こういう言葉を誰が生み出したのかと思ってしまう。

 

近くの竹林の中で、賑やかに呼び交わしている。

自分の姿形を知らなくても。

 

 

 

 

 

Maurizio Pollini / Frédéric Chopin - Etude Op.25 No.12 in C minor

 - "The Ocean" - VINYL